売れない旗竿地はどうやったら売れるのか?旗竿地が売れない5つの理由と売却方法

道路から細い出入り口が伸びた先にある土地である「旗竿地」は、不動産として売りづらいというイメージがあります。

旗竿地とは、一般的に土地評価額が低いとされています。

しかし旗竿地は、評価額が低いだけで本当に全く売れない不動産なのでしょうか。

今回は、そんな旗竿地が本当に売れない不動産なのかどうか、また「売れないイメージ」がある理由、なんとかして旗竿地を売却する方法、ひとりでもできる旗竿地評価額の算出方法などについて深堀りしていきます。

旗竿地が売れない5つの理由

不動産の中でも売れないイメージが強い旗竿地について、「売れない理由」を以下の通りまとめました。

旗竿地が売れない5つの理由

  • 取り壊しや建設に費用がかかる
  • 建て替え・リフォームができない場合がある
  • 日当たりや風通しが悪い
  • 実際に利用できる土地面積が少ない
  • 担保評価が低いため購入者の自己負担額が大きくなる

それぞれの「旗竿地の売れない理由」について、以下から詳しく段落ごとに解説します。

理由1:取り壊しや建設に費用がかかる

旗竿地とはその形状から、重機が入りづらい設計になっています。

入り口が狭いのでは、本体の土地部分に作業用の車は入ることができません。

このため仮に旗竿地の建物を解体したり改修しようとしても、工事の段階で不要になった廃材などを除去する作業は人力以外に頼れないことになります。

重機で廃材を除去できれば、人件費は抑えられます。

しかしながら、数多くの人力で工事中の家の中の廃材をすべて除去するとなると、同時進行中の作業を止めて、関わっている作業員全員で取り組まねばならず非効率です。

作業を一時中断しなければならないということは、工事日程も自ずと伸びることを示します。

他にも、粉塵被害、騒音被害、事故防止についての対策は、一般的な工事よりも大掛かりになるため、そちらにもコストがかかります。

また現行法では、1.8m以下の入り口を造ることはできません。

旗竿地とは、そのような法改正が起こる前に土地として利用されているケースが多いため、以下のような「してはいけないこと」も存在します。

ただし、売却前に建物を解体するのはNG

旗竿地を売却する前に、良かれと思って建造物を解体しようと思うかも知れません。

しかしながら、旗竿地売却前の建物解体はすべきではありません。

解体すべきでない理由は、旗竿地の解体は繊細な作業が求められるため坪あたりの単価が高く、それでも近隣住民の建物などを傷つけるような迷惑をかけることがあるためです。

そして旗竿地の解体にかかる費用は、一般的な家屋の2倍以上とされています。

さらに、旗竿地が「再建築不可物件」であった場合は、解体してしまうとその後に建造物を建てれなくなってしまいます。

つまり旗竿地が、単なる空き地としての価値しかなくなってしまうのです。

さらに土地に住宅建造物があれば住宅用地向け減税措置が受けられるところ、更地になった場合減税はなくなります。

土地の所有者で、これから売る側にとっても土地を更地にしてしまえば固定資産税の減税がなくなってしまいます。

これらの理由から、売却前の建物解体はNGとされています。

理由2:建て替え・リフォームができない場合がある

旗竿地の間口(接面道路に対する出入り口)の広さが、1.8mの場合は建て替えやリフォームができません。

旗竿地とは現行法以前に造られた場所である可能性が高いため、当時の建築基準法を満たすぎりぎりの幅で間口が造られていることが多いのです。

現行法では、2m以上の間口を持たなければその旗竿地は再建築不可となります。

もし仮に、間口が2mに満たない旗竿地を新たに購入してしまった場合、その土地に自分の家屋なども建設できません。

そこで間口を2m以上にする工事を施せば基準を満たすことにはなるものの、起こりがちな例として地形を変えたり、建てようとしていた建物の大きさを小さく変更することになるため、解体前の建物がその旗竿地にあった場合、同じ大きさの建造物はほぼ建てられません。

現行より大きい家が建てられず、地形変更工事まで必要とあっては、旗竿地とは売れづらい不動産となってしまうのです。

理由3:日当たりや風通しが悪い

旗竿地の成り立つ理由のひとつとして、大きく広い土地の分割の結果であるというものが挙げられます。

この場合、旗竿地は周囲を他の所有者の土地に囲まれがちです。

つまり旗竿地の所有者視点では、周囲を他の建造物に取り囲まれた状態となり、自分の土地は日当たりや風通しが悪くなる可能性が高いのです。

建て替えやリフォームにより多少は環境を改善できるものの、旗竿地の建て替えやリフォームには通常以上のコストがかかります。

そのため土地購入者は、好き好んででないと旗竿地を買わないのです。

理由4:実際に利用できる土地面積が少ない

旗竿地における実質的な土地部分とは、竿部分を含めない旗部分だけとなります。

そのため、数値上の土地面積に比べて、実質利用できる土地面積はかなり少なくなります。

実質面積が少ないため、旗竿地における土地評価額は近隣に比べて確実に安くなりがちです。

購入者がその旗竿地に対し、相当の思い入れや住環境の良さなどを見いだせなければ、そのまま売られる可能性は少ないといえます。

理由5:担保評価が低いため購入者の自己負担額が大きくなる

旗竿地の銀行からの担保評価は低くなりがちです。

それは旗竿地の竿部分、間口からの通路が宅地として機能しないためです。

このため、仮に旗竿地を買いたいと申し出る場合、自分で資金を多く持った状態でなければまず旗竿地自体を買うこともできないことすらあります。

また融資の際も、間口が1.8m以下の旗竿地に建てられた建造物とは築年が古いことの証明でもあるため、資産としての評価対象にもならず、土地のみが融資額の対象となります。

そのため住宅ローンを利用する前提の購入者の場合、自己資金を多く用意せねばならないような担保評価が低い土地である旗竿地の購入は見送りがちになります。

売れる旗竿地もある!売れる旗竿地と売れない旗竿地の特徴とは?

売れないというイメージが先行しがちな旗竿地ではあるものの、必ずしも売れない旗竿地ばかりではありません。

以下からは、売れる旗竿地と売れない旗竿地の特徴を解説します。

売れる旗竿地の特徴

旗竿地が売れやすいかどうかは、購入者の希望をかなえやすいかどうかに左右されます。

つまり旗竿地の代表的なデメリットである、現行の建築基準法の内容に適合していない状態を脱せばよいのです。

例えば旗竿地の特徴である狭い間口について、現行の建築基準法に適合する2mの幅を満たしていれば通常の整形地と同じ印象を購入者に与えることができます。

日当たりが悪いこともメリットに変えられることがあります。

それは、古書や美術品収集家などが、収蔵品保管のために家屋を求める場合などが該当します。

その場合、日当たりが悪いことは購入者にとってメリットになります。

あるいは、旗竿地に建造された建物に特徴がある場合です。

旗竿地の建物が古い日本家屋であるような場合は、古民家ブームで家を購入しようとしている顧客にとって魅力的です。

その場合、間口が1.8m未満というデメリットもものともしません。

売れない旗竿地の特徴

旗竿地が売れない時にみられる特徴は、あらゆるコストが通常の不動産以上にかかったり評価額が少ないといったこと以外にも以下の通り存在します。

売れない旗竿地の特徴

  • 土地周辺の環境が悪い(郊外である、周りにも空き地が多い、墓地がある、高圧線鉄塔がある、高層建築物があるなど)
  • 土地の境界が曖昧である(隣人とのトラブルに発展する可能性、不動産会社が仲介をためらう可能性がある)
  • 道路に接していない「無道路地」である
  • 道路より土地の高度が低い(水害被害が大きくなりがちなため)
  • 要素地区域・形質変更時要届出区域であり、健康被害の可能性がある(土壌に汚染がある、地中に障害物がある、など)
  • 担当不動産会社による広告活動が適切に行われていない(経費節減の対象とされてしまう)
  • 不動産ポータルサイトへの掲出がない

売れない旗竿地を売却する方法については、以降の段落から解説します。

【ケース別】売れない旗竿地の売却方法

売れないイメージが先行しがちな旗竿地でも、工夫することで売却するための方法を見出すことができます。

今回は、以下ケースごとに詳しく売却方法を解説します。

想定されるケース

  • 間口が接する道路の幅が4m未満のケース
  • 竿部分の幅が2m未満のケース
  • 私道に接しているケース
  • どの手を尽くしても売れないケース

ケース1:間口が接する道路の幅が4m未満のケース

旗竿地で、間口が接する道路の幅が4m未満のケースにおいては、土地の再建築を施すことで売れる物件となる可能性が高まります。

本件においての土地再建築では、セットバックを行います。

セットバックとは以下の意味を持ちます。

敷地を道路など境界面から後退させること(接道義務規定を満たすため、土地の面した道路の中心線から2mを確保する必要がある。さらに道路の反対側が川・崖・線路であるときは、道路の反対側の境界線から4mを確保した上で敷地を後退)

自治体はセットバックに関わる費用負担を行ったり、補助金制度を提示していることがあります。

このため、セットバックを行う際は担当の自治体で確認してください。

事前にセットバックを行うことで、物件の価値が上がり売りやすくなるためです。

セットバックに際して覚えておくべき注意点は、以下の通りです。

セットバックの注意点

  • セットバックを施した土地は、私的な利用ができない(塀や門、駐車場の設置など)

ケース2:竿部分の幅が2m未満のケース

現行法の基準である、竿部分の幅が2mを満たさない場合は、この2mを広げる方法を取ります。

具体的には、竿部分が隣接している両隣の土地の所有者との交渉を行うことになります。

交渉においては、幅員2mの確保のため、その分の「土地購入・借地」という結果を得なければなりません。

あるいは、隣人との関係が良好である場合は土地隣接部分の等価交換という方法もあります。

等価交換においては、特例が存在し、隣地所有者は所得税などの納税繰り延べが受けられます。

また当方側にとっては土地購入費用をカットできるというメリットがあるのです。

等価交換を目指したいものの、隣人と関係を築けていない場合は不動産会社に仲介してもらう方法があります。

ケース3:私道に接しているケース

旗竿地の間口が、たった一人の所有者が持つ私道に接している場合は、所有者の意志に左右されて利用すらできなくなることもありえます。

そういった場合の解決策は、私道を共有する交渉を行うことです。

あるいはすでに私道の所有権をいずれかの隣人と共有している場合は、旗竿地を売却する際にその権利も譲渡することで解決します。

ケース4:どの手を尽くしても売れないケース

どうしても旗竿地が売れない見込みの場合は、売却という考えから離れる手段もあります。

つまり寄付や譲渡を行うことです。

あるいは、不動産業者の探し方を変えることです。

旗竿地のような、一筋縄ではいかない不動産の売買に長けた不動産会社が存在します。

その場合も、複数業者に検討をつけておき、各社に見積もりを要求すべきです。

「売れない旗竿地」を売却したいなら不動産業者や仲介業者ではなく、専門の買取業者がおすすめ!

売れないイメージが強い旗竿地ながら、旗竿地のような不整形地専門の買取業者は存在します。

そのため、すでに交渉した不動産会社や仲介業者とはまた別に、売れない不動産専門の業者を探しましょう。

旗竿地専門の買取業者へは、インターネットを介してアプローチすることも可能です。

例えば一括査定サイトであれば、最大3社以上に対して同時に査定を申し込むことができます。

このように、旗竿地を売却したい場合も、通常の不動産と同様に複数社に対して見積もりを要求することがポイントとなります。

旗竿地の評価額を自分で簡単に計算する手順

旗竿地の評価額は、自分でも計算することが可能です。

ポイントは、竿の部分が土地としての価値がないため、竿部分を差し引いて計算することです。

以下からは、旗竿地の評価額計算手順を3種紹介します。

手順1:整形地と仮定して評価額を算出する

旗竿地の評価額算出方法として、まず旗竿地を通常の整形地であると仮定して計算してください。

整形地としての計算方法は、以下の通りです。

整形地と仮定した時の評価額算出方法

相続税路線価 × 地積 × 奥行価格補正率 = 評価額

※相続税路線価:道路に面する土地の1平方メートルあたりの価額
※地積:土地の面積
※奥行価格補正率:正面の道路からの長さ/短さによってかかる補正率

番外編:旗竿地のデメリット部分を割り引く計算方法

また、後から旗竿地としてのデメリット値を割り引く計算方法もあります。

こちらで算出された評価額から、旗竿地のデメリット部分を小数点乗算、もしくは引き算します。

例えば、以下のような方法と計算式が考えられます。

【番外編】旗竿地のデメリット部分を割り引く計算方法

  • 道路から旗までの奥行き部分を差し引く方法:路線価 × 奥行価格補正率 × 面積 = 評価額
  • 間口と奥行き全体を差し引く方法:路線価 × 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 × 面積 = 評価額
  • 不整形地として差し引く方法:路線価 × 不整形地補正率(国税庁「不整形地補正率表」を活用) × 面積 = 評価額

手順2:隣地の評価額を算出する

手順1で算出した整形地のうち、評価対象としたい本来の旗竿地以外の部分を「かげ地」といいます。

かげ地とはつまり、隣地のことです。

この隣地の評価額を、手順1と同様に算出します。

隣地の評価額の算出方法

相続税路線価 × 地積 × 奥行価格補正率 = 評価額

手順3:隣地の評価額を差し引く

最後に、手順1で算出した整形地としての評価額から、手順2で算出した隣地評価額を差し引きます。

この時、整形地全体および隣地の奥行価格補正率が1.00未満の場合は、隣地の奥行価格補正率を整形地と同値として計算します。

一方、隣地の奥行価格補正率のみが1.00未満である場合は、隣地の奥行価格補正率は1.00として計算することになるという決まりがあるので注意してください。

旗竿地が売れないのには理由がある!スムーズに売却したいなら専門の買取業者に依頼しよう!

今回は、旗竿地になぜ売れないイメージがあるのか、また実際に旗竿地の評価が低い理由について解説しました。

一方、評価が低くなりがちな旗竿地ではあるものの、売却方法もいくつか存在します。

さらに、どうしても売れない旗竿地を売却したい場合は、専門的な不動産業者を頼ることが最速の手段となるでしょう。

今回解説したように、旗竿地の評価額は個人でも計算可能です。

見積もりを各社に依頼する際、自分で土地の評価額が算出できれば、交渉を有利に進められる可能性が高くなるため、厄介な旗竿地の処分に困った場合はぜひ記事を参考にしてみてください。

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