ゴミ屋敷が原因で損害賠償を請求されることはある?現状をどうにかするための手段も解説
空き家と並んで大きな問題となっているのがゴミ屋敷です。
その背景には、高齢化や孤立化があるといわれていますが、いつ自分の親や親族の住む家がゴミ屋敷になってしまうかもしれませんので、あらかじめゴミ屋敷にどのようなリスクがあるのかを知っておくことは非常に重要です。
そこで今回は、ゴミ屋敷が原因で損害賠償を請求される可能性はあるのか、その他にゴミ屋敷にはどのようなリスクがあるのか、そしてゴミ屋敷を何とかするにはどうすれば良いのか、などについて詳しく解説します。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. ゴミ屋敷が原因で損害賠償を請求される可能性はある
- 1.1. ケース1:火災が発生し、近隣住宅に燃え移った場合
- 1.2. ケース2:家が倒壊し近隣住宅に被害が及んだ場合
- 1.3. ケース3:害虫や悪臭などにより近隣住宅に被害が及んだ場合
- 1.4. ケース4:賃貸住宅をゴミ屋敷にした場合
- 2. しかし、実際に損害賠償の請求が発生するケースはほとんどない
- 2.1. 火災が原因の賠償責任は「重過失」があったかどうかがカギとなる
- 2.2. 害虫・悪臭による健康被害は、損害を受けた側が因果関係を証明する必要がある
- 2.3. 賃貸住宅では損害賠償の請求が簡単ではない
- 2.3.1. ただし、原状回復費用の支払いや契約解除を言い渡される場合がある
- 3. とはいえ、ゴミ屋敷を放置するリスクは大きい!損害賠償以外に発生する可能性があるリスクとは?
- 3.1. 【リスク1】病気になったり怪我をしたりする
- 3.2. 【リスク2】貴重品などの探し物が見つからなくなる
- 3.3. 【リスク3】遺品整理の際に困る
- 3.4. 【リスク4】相続の際に揉める原因となる
- 3.5. 【リスク5】行政処分の対象になる
- 4. ゴミ屋敷をどうにかしたい!手段やかかる費用
- 4.1. 【1】自力で片付ける
- 4.2. 【2】清掃業者に依頼して片付ける
- 4.3. 【3】専門の買取業者に売却する
- 5. 専門の買取業者がゴミ屋敷をそのまま買い取れる理由
- 6. 今後手放すことを考えているならトラブルが発生する前に手を打つのが賢明!
ゴミ屋敷が原因で損害賠償を請求される可能性はある
ゴミ屋敷が原因となって損害賠償を請求される可能性は十分に考えられます。
主な可能性として、次の4つのケースを挙げることができます。
ゴミ屋敷が原因で損害賠償請求されるケース
- ケース1:火災が発生し、近隣住宅に燃え移った場合
- ケース2:家が倒壊し近隣住宅に被害が及んだ場合
- ケース3:害虫や悪臭などにより近隣住宅に被害が及んだ場合
- ケース4:賃貸住宅をゴミ屋敷にした場合
以下、それぞれについて詳しく説明します。
ケース1:火災が発生し、近隣住宅に燃え移った場合
ゴミ屋敷は、家の中にいろんなゴミが溜まっていますので、ちょっとした不注意や不始末から火災が発生するおそれがあり、その火が近隣の住宅に燃え移った場合は、近隣の住民から損害賠償を請求される可能性があります。
たとえば、電源プラグがコンセントに差さったままになっているところにゴミが溜まり、湿気やほこりによってトラッキング火災が起こったり、住人のタバコの火が可燃ゴミに燃え移って火災になったりすることが考えられます。
ケース2:家が倒壊し近隣住宅に被害が及んだ場合
ゴミ屋敷の家屋が倒壊して近隣の住宅に被害が及んだ場合は、近隣の住民から損害賠償を請求される可能性があります。
また、壁やブロック塀の一部が倒壊して通行人がけがをしたような場合にも、その通行人から損害賠償を請求される可能性があります。
ケース3:害虫や悪臭などにより近隣住宅に被害が及んだ場合
ゴミ屋敷の生ゴミなどが腐敗して害虫が発生したり悪臭を放ったりして近隣の住宅に被害が及んだ場合は、近隣の住民から損害賠償を請求される可能性があります。
この場合は、いきなり損害賠償請求になることはないと思われますが、害虫や悪臭が発生しているのを放置したままにして、改善される見込みがないと思われる場合には、損害賠償請求に発展する恐れがあります。
ケース4:賃貸住宅をゴミ屋敷にした場合
賃貸住宅の入居人がゴミ屋敷にしてしまった場合は、民法の「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」に違反しますので、大家から損害賠償を請求される可能性があります。
「善管注意義務」とは、一般的に要求される程度の注意を払う義務のことをいい、これによれば、賃貸住宅の入居者は部屋を明け渡すまでの期間は部屋の状態をある程度は維持しなければならないということになります。
賃貸住宅のゴミ屋敷化はこの法律に違反していると考えられるため、損害賠償を請求される可能性があるのです。
しかし、実際に損害賠償の請求が発生するケースはほとんどない
ゴミ屋敷が原因となって損害賠償を請求される可能性がある4つのケースを紹介しましたが、実際には損害賠償請求がなされるケースはほとんどありません。
一体どういうことなのでしょうか?
その理由について、以下で詳しく説明します。
火災が原因の賠償責任は「重過失」があったかどうかがカギとなる
ゴミ屋敷から出火して近隣住宅に延焼した場合の賠償責任は、ゴミ屋敷側に「重過失」があったかどうかが大きなポイントになります。
火災の場合の「重過失」とは、「明らかに火災になることが分かっていたのに改めなかった」場合に認められるもので、たとえば次のような事実があった場合です。
明らかに火災になることが分かっていたのに改めなかったとされる事例
- てんぷら油をガスコンロにかけて火をつけたまま台所を離れて火災になった
- 石油ストーブの火がついたまま給油し、こぼれた灯油に石油ストーブの火が引火した
- 寝たばこの危険性を認識していながら喫煙を続けて火災になった
一方で、過失はあるものの「ほとんど故意に近い著しい注意欠如」が認められない場合は「重過失」とは判定されません。
つまり、「重過失」があったと認められるためのハードルはかなり高いということです。
このようなことから、各自で火災保険に加入して自衛しているというのが現実なのです。
害虫・悪臭による健康被害は、損害を受けた側が因果関係を証明する必要がある
害虫や悪臭による健康被害によって損害賠償を請求する場合は、財産以外への損害に当たり、「健康を害したかどうか」が争点となります。
この場合、損害を受けた側が因果関係を立証する必要があります。
たとえば、臭いについては専門家によって数値化することが可能であり、証拠となり得ますが、公害レベルの強烈な臭いでなければ認められないといわれています。
賃貸住宅では損害賠償の請求が簡単ではない
入居者が賃貸住宅をゴミ屋敷にした場合、入居者に対して損害賠償請求をすることは可能ですが、容易ではないというのが実情です。
話し合いによる示談交渉で損害賠償を請求したとしても、話を聞いてももらえない可能性があります。
示談で解決しなかった場合は、裁判を起こすことも考えられますが、裁判が長期化する傾向があり弁護士費用がかさんでしまう可能性が高くなります。
ただし、原状回復費用の支払いや契約解除を言い渡される場合がある
しかしながら、賃貸住宅への入居者には「原状回復義務」があります。
これは、国土交通省住宅局の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもまとめられており、これに基づいて「原状回復費用」を請求することはできます。
このガイドラインによれば、「経年劣化や通常損耗の費用は貸主の負担」で、「入居者がわざと傷つけたり不注意で汚したりした場合の費用は入居者の負担」となります。
ゴミ屋敷の場合には、「ゴミ屋敷を片付けてきれいにする費用」から「経年劣化や通常損耗を修復する費用」を差し引いた金額が、実際に請求できる金額になります。
とはいえ、ゴミ屋敷を放置するリスクは大きい!損害賠償以外に発生する可能性があるリスクとは?
これまでの説明で、ゴミ屋敷が原因で損害賠償を請求される可能性はあるものの、実際に損害賠償の請求が発生するケースはほとんどないということが分かりました。
しかし、ゴミ屋敷を放置しておくことによるリスクはこれ以外にもあります。
ゴミ屋敷に発生する可能性があるリスクとして、いくつか挙げることができますので、以下で概要を説明します。
【リスク1】病気になったり怪我をしたりする
ゴミ屋敷の中の腐敗したゴミから発生した有害ガスやカビ、害虫、細菌類によって、ぜんそく、感染症、アレルギーなどの病気になることも考えられます。
また、いろんなゴミで足の踏み場がなくなっていることがあり、そのゴミにつまずいて転倒して怪我をするリスクがあります。
さらに、ゴミ屋敷とうつ病は深い関係性があり、お互いの状態を悪化させることが知られています。
【リスク2】貴重品などの探し物が見つからなくなる
ゴミ屋敷の中はいろんなゴミが溜まっていますので、実印や権利証・通帳などの貴重品がゴミに埋もれてしまって見つからなくなるリスクがあります。
【リスク3】遺品整理の際に困る
実家がゴミ屋敷になってしまうと、親が亡くなったときの遺品整理の際に困ります。
積み上げられたゴミの山の中から遺品を探し出さなければならないからです。
【リスク4】相続の際に揉める原因となる
ゴミ屋敷を相続することになった際に、他の相続人との間で揉め事が発生するリスクがあります。
ゴミ屋敷の相続を避けるために全員が相続放棄した場合もゴミ屋敷の管理義務が残ることがありますので、その場合も誰が管理するのかで揉める可能性があります。
【リスク5】行政処分の対象になる
放置されたままのゴミ屋敷は、自治体による行政代執行の対象となり、強制的なゴミの撤去が行われて費用を請求されるリスクがあります。
ゴミ屋敷をどうにかしたい!手段やかかる費用
実家がゴミ屋敷になっていたり、ゴミ屋敷を相続してしまったりした場合は、ゴミ屋敷から被るリスクを回避するためにも、何とか早急に対処しなければなりません。
ここでは、考えられる次の3ケースについて、その対処方法や費用について説明します。
ゴミ屋敷をどうにかする方法
- 【1】自力で片付ける
- 【2】清掃業者に依頼して片付ける
- 【3】専門の買取業者に売却する
この3ケースの中で、【1】と【2】は今後も自分で保有して活用するために片付ける手段であり、【3】は売却して手放してしまうという手段です。
【1】自力で片付ける
自力で片付けるという方法があり、この場合は自分の時間が取れるときに自分のペースで片付けられるということがメリットです。
しかし、逆に時間や労力がかかるということが大きなデメリットとなり、特に1人で処理できないような大きくて重たいゴミがある場合は、誰かに助けを頼む必要があります。
このケースでは、片付け費用はかかりませんが、片付けによって出たごみの処理費用がかかります。
自治体のゴミ出しルールに基づいて、粗大ゴミ用のシールを購入する必要がありますし、粗大ゴミを指定場所まで運搬しなくてはならない場合は、運搬費用がかかったり運搬用トラックのレンタル費用がかかったりします。
【2】清掃業者に依頼して片付ける
専門の清掃業者に依頼すれば、ゴミ屋敷の大きさやゴミの量にもよりますが1日で片付けが終わります。
しかも、不用品や廃棄品もすべて持ち帰ってくれますので、自分で粗大ゴミを捨てたりする必要がありません。
費用は、ゴミの量や家の大きさなどによって異なりますが、一般的な相場は数万~100万円程度となります。
また、事前に複数の業者から見積もりを取って、費用だけではなく対応面などについてもよく確認したうえで、依頼する業者を選定する必要があるでしょう。
【3】専門の買取業者に売却する
ゴミ屋敷の建物自体が劣化していて居住することができない場合や、立地条件が悪くて利用価値がないと判断できる場合は、専門の買取業者に売却することができます。
事前に片づけをしたりする必要はありませんので、費用は全くかかりません。
反対に、売却費用が入ってくることになりますので、この点はむしろメリットということができます。
買取価格は、ゴミ屋敷の立地条件や家の状態などによっても異なり、業者間でも差が出ますので、複数の専門の買取業者に見積もりを取って比較検討して業者を決めることをおすすめします。
専門の買取業者がゴミ屋敷をそのまま買い取れる理由
専門の買取業者は、ゴミ屋敷を買い取って清掃やリフォームをして再販するという事業を行っています。
ゴミ屋敷ばかりではなく、その他の訳あり物件を専門に買い取って、リフォームなどを施して再販するノウハウを持っているので、ゴミ屋敷であってもそのままで買い取ることができるのです。
ただし、当然再販する際には相場価格がありますので、その価格からリフォーム代などの必要経費と利益を差し引いた金額での買い取りとなります。
今後手放すことを考えているならトラブルが発生する前に手を打つのが賢明!
この記事では、ゴミ屋敷が原因となって損害買収を請求される可能性があるものの実際には損害賠償請求には至らないことが多いこと、損害賠償以外のリスク、ゴミ屋敷を何とかする方法などについて解説しました。
ゴミ屋敷を片付けて自分で住む、あるいは賃貸住宅として活用するなどのはっきりした利用予定がある以外の場合は、いずれ手放すことになるのではないかと思われます。
このように、今後手放すことを考えているのであれば、トラブルが発生する前に専門の買取業者に売却した方が賢明です。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。