未登記建物の売却は難しい?売却するための4つの方法
建物を新築したり土地を購入したりした際には「不動産登記」をしなければなりません。
「不動産登記」とは、土地や建物の所在や面積、所有者の住所・氏名などを登記簿に記載して一般公開する制度で、これによって権利関係などの状況が誰にでもわかるようになり、不動産取引の安全と円滑化を図ることができるようになるという役割を果たします。
「不動産登記」の他にも、「商業登記」「船舶登記」などのいろいろな種類の登記があります。
「不動産登記法」には登記義務があることが明記されていますので、建物を新築した際は、まずその建物の「建物表題登記」を行わなければなりません。
「建物表題登記」が行われると「登記簿」が作成されますので、所有権に関する「所有権保存登記」を行うことができるようになります。
しかしながら、さまざまな理由によって「建物表題登記」や「所有権保存登記」が行われていない「未登記建物」が数多く存在しています。
つまり、相続した建物が「未登記建物」だったということもあり得ないことではありません。
そこで今回は、「未登記建物」の売却が難しい理由や売却する方法、「未登記建物」を登記する方法と費用などについて詳しく解説します。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 未登記建物の売却は難しい
- 2. 未登記建物の売却が難しい理由
- 2.1. 理由1:買主が未登記建物を購入する際に住宅ローンを組めない
- 2.2. 理由2:購入後に登記する場合は登記費用がかかる
- 2.3. 理由3:第三者に所有権を主張できない
- 2.4. 理由4:第三者に所有権を奪われる可能性がある
- 2.5. 理由5:未登記の状態は法律違反になる
- 3. 未登記建物を売却するにはどうしたらよいのか?売却するための4つの方法
- 3.1. 方法1:未登記の状態で売却する
- 3.2. 方法2:登記してから売却する
- 3.3. 方法3:未登記建物を解体してから売却する
- 3.4. 方法4:未登記のまま専門の買取業者に売却する
- 4. 未登記建物の登記方法とかかる費用
- 4.1. 表題登記
- 4.2. 所有権保存登記
- 4.2.1. 購入後に登記をする場合、所有権保存登記は売主の協力が必要
- 4.3. 相続登記
- 5. 未登記不動産の売却は、売主側で登記を行っておくのがベター。ただし、専門の買取業者なら未登記のまま売却することが可能!
未登記建物の売却は難しい
「未登記建物」を売却することは不可能ではありませんが、登記済の建物に比べるとかなり難しいということになります。
「未登記建物」の売却ができるのは、買主が「未登記建物」であっても購入しても良いという場合に限られます。
しかし、「未登記建物」には多くのリスクがありますので、よほどの理由がない限り「未登記建物」を購入しようという人は現れないでしょう。
未登記建物の売却が難しい理由
「未登記建物」には多くのリスクやデメリットがありますので、実際には買主を見つけて売却することは難しいのが実情です。
「未登記建物」の売却が難しい理由は、主に次の5つです。
別荘の所有にかかる税金の種類
- 理由1:買主が未登記建物を購入する際に住宅ローンを組めない
- 理由2:購入後に登記する場合は登記費用がかかる
- 理由3:第三者に所有権を主張できない
- 理由4:第三者に所有権を奪われる可能性がある
- 理由5:未登記の状態は法律違反になる
以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
理由1:買主が未登記建物を購入する際に住宅ローンを組めない
住宅ローンの対象が「未登記建物」の場合は、「登記簿」が存在しないことから抵当権の設定ができませんので、住宅ローンが組めなくなります。
金融機関で住宅ローンを組む場合は、金融機関は融資した金額が回収できなくなる場合に備えて、住宅ローンの対象となっている不動産に抵当権を設定します。
万一、融資金額を回収できないような事態になった場合は、抵当権を設定した不動産を売却して現金化し融資金額の回収に充てますので、住宅ローンの対象となる不動産は安定した資産価値を有するものでなければならないのです。
住宅ローンが組めないと現金での購入しかできなくなりますので、買主が制限されることになってしまいます。
理由2:購入後に登記する場合は登記費用がかかる
不動産の取引を行った際には、「所有権移転登記」を行う必要があります。
しかし、「未登記建物」には「登記簿」が存在しませんので、新たに「建物表題登記」をしたのちに「所有権保存登記」をしなければなりません。
「建物表題登記」は土地家屋調査士に依頼して行う必要があり、階層や床面積などによっても変わってきますが、一般的には8万円~15万円程度の費用がかかります。
登記済の建物であれば「所有権移転登記」だけで済みますが、「未登記建物」の場合は「建物表題登記」の費用が余計に掛かってしまうことになります。
理由3:第三者に所有権を主張できない
「未登記建物」は、第三者に対して所有権を主張することができません。
土地や建物などの不動産の所有権は、売買契約の締結や売買代金の支払い完了ではなく、登記簿の「権利部」に記載された所有者に対して認められます。
その理由は、必ずしもその不動産を占有している者が所有者とは限らないからです。
「未登記建物」の所有者が、「未登記建物」を売却しようとする際は、自分自身が所有する建物であることを証明しなくてはなりませんが、「未登記建物」の場合はその証明ができないということになります。
理由4:第三者に所有権を奪われる可能性がある
「未登記建物」は、第三者から勝手に登記されて所有権を奪われる可能性があります。
たとえば、「未登記建物」の売買契約や代金の支払いが完了していたとしても、第三者が自分自身の名義で登記してしまえば、その建物の所有者はその第三者になってしまいます。
建物の所有権は、「登記簿」の「権利部」に記載された所有者のみに認められるからです。
理由5:未登記の状態は法律違反になる
「不動産登記法」では、建物を新築した際は1ヶ月以内に「建物表題登記」をすることが定められていますので、そもそも「未登記建物」は法律違反です。
しかしながら、これまでに「未登記建物」であることを理由として過料が請求された事例はありませんので、「未登記建物」を所有していることによって直接的な不利益を被ることはないと考えられます。
未登記建物を売却するにはどうしたらよいのか?売却するための4つの方法
では、「未登記建物」を売却するにはどうすればいいのでしょうか?
売却するための方法は、主に次の4つです。
未登記物件売却の方法
- 方法1:未登記の状態で売却する
- 方法2:登記してから売却する
- 方法3:未登記建物を解体してから売却する
- 方法4:未登記のまま専門の買取業者に売却する
以下、それぞれについて詳しく説明しましょう。
方法1:未登記の状態で売却する
「未登記建物」であることを承知の上で購入するという買主が現れた場合に限り、「未登記建物」を未登記のままで売却することができます。
この場合は、未登記である旨を売買契約書の特約事項などに記載して売買契約を締結します。
ただし、現実問題として「未登記建物」を未登記のままで購入しようという人は現れないと考えられます。
方法2:登記してから売却する
これは、売主が必要な登記手続きを行って、正しい登記の状態にしてから売却する方法です。
売主が「建物表題登記」と「所有権保存登記」を行っておけば、通常の不動産と同様に売り出すことができますし、買主も売買代金決済時に「所有権移転登記」をすることができますので、まったく問題は生じません。
売主には登記手続きの費用がかかりますが、一般的な価格相場での売却が可能となります。
方法3:未登記建物を解体してから売却する
「未登記建物」が、築古物件などで資産価値がない場合や居住することができないような状態の場合は、「未登記建物」を解体して土地として売却する方法もあります。
建物がなくなったことを証明する手続きとして「家屋滅失届」を自治体に提出する必要があります。
この場合、解体費用がかかること、建物がなくなることによって土地の固定資産税が解体前の6倍になってしまうことが注意点として挙げられます。
方法4:未登記のまま専門の買取業者に売却する
「未登記建物」を未登記のままで、専門の買取業者に売却する方法もあります。
専門の買取業者は、「未登記建物」であることを前提として買い取りますので、売却金額は一般的な売却相場より安くなってしまいますが、売主にはほとんど手間がかからずに短期間でスピーディーに売却することができます。
未登記建物の登記方法とかかる費用
「未登記建物」を登記するためには、「建物表題登記」を行ったのちに「所有権保存登記」を行う必要があります。
以下では、「未登記建物」の登記方法と登記費用について説明します。
表題登記
「表題登記」とは、新築の建物やまだ登記されていない土地や建物を新規で行う登記のことで、これによって「登記簿」が作成されます
建物の場合の「表題登記」を「建物表題登記」といい、建物の所在地や家屋番号、種類、構造、床面積などの物理的な詳細情報を「登記簿」の「表題部」に登録します。
「建物表題登記」をするために必要な主な書類は、次の通りです。
「建物表題登記」をするために必要な書類
- 登記申請書
- 建築確認通知書
- 検査済証、工事請負契約書
- 施工業者の工事完了引渡証明書、資格証明書、印鑑証明書
- 建築代金の領収書
- 所有者の住民票
- 所有者の登記委任状
「建物表題登記」の手続きは、一般的に土地家屋調査士に依頼して必要書類の準備・作成・申請の代行をしてもらいますので、目安として8~15万円程度の費用がかかります。
所有権保存登記
「所有権保存登記」とは、所有権の登記が行われていない建物に対して初めて行う登記のことです。
その建物の権利関係について、「登記簿」の「権利部」の「甲区」に登録します。
「所有権保存登記」には「登録免許税」がかかりますが、「所有権保存登記」の場合の「課税標準」は市町村役場で管理している「固定資産課税台帳の価格」となりますので、「登録免許税」は次の計算式で求めることができます。
「登録免許税」を求める公式
「登録免許税額」=「課税標準」×「税率」=「固定資産課税台帳の価格」×「税率」
「税率」は建物の取得理由によって異なり、「所有権保存登記」の場合は「1000分の4」です。
「所有権保存登記」をすると「登記識別情報」が交付されます。
「登記識別情報」は、以前は「登記済証」「登記済権利証」「権利証」などと言われていました。
また、「所有権保存登記」を行うと抵当権を設定することができるようになりますので、金融機関から融資を受けて住宅ローンを組むことが可能となります。
「所有権保存登記」の手続きは、一般的に司法書士に依頼して行い、必要な費用は2~3万円程度が目安となります。
購入後に登記をする場合、所有権保存登記は売主の協力が必要
「未登記建物」の買主が登記をする場合には、売主の協力が必要となります。
なぜならば、「不動産登記法」で「所有権保存登記」ができる者が規定されているため、買主が購入後すぐに自分自身の名義で「所有権保存登記」をすることができないからです。
そのため、購入後に売主に協力してもらって必要書類を準備することが必要となり、書類が揃えば買主名義で「所有権保存登記」をすることができます。
相続登記
相続によって「未登記建物」を取得した場合には、「建物表題登記」をしたのちに「所有権保存登記」を行います。
「建物表題登記」をするために必要な次の書類を準備して、「未登記建物」が所在する地域の法務局へ提出します。
「建物表題登記」をするために必要な書類
- 登記申請書
- 建物図面・各階平面図
- 建築確認通知書
- 検査済証
- 施工業者の工事完了引渡証明書、資格証明書、印鑑証明書
- 被相続人の住民票
- 相続に関する書類(戸籍謄本、遺産分割協議書など)
「建物表題登記」をすると「登記簿」が作成されますので、「所有権保存登記」をすることができるようになります。
「所有権保存登記」には、以下の書類が必要となります。
「所有権保存登記」をするために必要な書類
- 登記申請書
- 所有者の住民票
- 住宅用家屋証明書
また、次の計算式で計算される「登録免許税」がかかり、「税率」は「1000分の4」となります。
「登録免許税」を求める公式
「登録免許税額」=「課税標準」×「税率」=「固定資産課税台帳の価格」×「税率」
未登記不動産の売却は、売主側で登記を行っておくのがベター。ただし、専門の買取業者なら未登記のまま売却することが可能!
この記事では、「未登記建物」の売却が難しい理由や「未登記建物」を売却する方法、「未登記建物」を登記する方法などについて紹介しました。
「未登記建物」の売却は、買主側に大きなリスクがありますので、売主側で「建物表題登記」と「所有権保存登記」を行ってから売却することをおすすめします。
ただし、専門の買取業者に売却する場合は、「未登記建物」のままで売却することが可能です。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。