共有持分の固定資産税は誰が払うの?支払い割合や注意点について

不動産を複数の者で所有している「共有名義の不動産」において、それぞれの所有者が保有している所有権の割合のことを「共有持分」といい、それぞれの所有者のことを「共有者」といいます。

不動産には固定資産税がかかりますので、「共有名義の不動産」の場合も「共有者」が固定資産税を納付しなければなりません。

このときに問題になるのは、誰が「共有名義の不動産」の固定資産税を支払うのかということですが、常識的には「共有者」が「共有持分」の割合に応じて負担すると考えられます。

「共有者」が数名程度でお互いに顔見知りであれば、すぐに相談をして合意をして対応することができますが、相続などにより「共有持分」が細分化されて「共有者」が増え、相談することはもちろん合意形成などはとてもできないという事態に陥ることも考えられます。

このように「共有名義の不動産」の固定資産税については、大きな問題に発展するかもしれないリスクをはらんでいます。

今回は、「共有名義の不動産」の固定資産税は誰が支払うのか、支払い割合はどのようになるのか、などについて詳しく解説します。

目次

共有名義の不動産の固定資産税は誰が払うの?

固定資産税とは、土地や家屋、事業用の償却資産などの固定資産を所有している人に対して課税される地方税(市町村税)で、税額はその固定資産の評価額をもとに決定された課税標準額に税率(標準税率1.4%)を掛けて算出されます。

東京都の23区は、都が都税として課税しています。

一般的な固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日に固定資産を所有している人、具体的には固定資産課税台帳に所有者として登録されている人になります。

毎年4~6月ごろに納税義務者宛に納税通知書と納付書が送付されてきますので、年4回の締め切り日までに納付するか、4~7月ごろに一括で納付します。

自分の持分割合が少なくても連帯納付者になる

では、自分が「共有名義の不動産」の「共有持分」を有する「共有者」である場合はどうなるのでしょうか。

「共有名義の不動産」の納税義務者は、毎年1月1日に「共有持分」を有する「共有者」全員であり、「共有持分」を有する「共有者」全員が連帯して固定資産税全額を納める義務を負っています。

つまり、「共有持分」の割合の大小に関係なく「共有者」全員が「連帯納付者」であり、「共有名義の不動産」の固定資産税の全額を納税する義務があるということになります。

もし、「共有者」の中の誰かが固定資産税の全額を納付すれば、他の「共有者」の納税義務はなくなりますが、逆に誰も固定資産税の全額を納付しない場合は、自治体はいずれの「共有者」に対しても固定資産税の全額を請求することができます。

なお、課税者である自治体は、固定資産税を「共有者」の中でどのように分担すべきかについては関知していませんので、「共有者」同士で話し合って決める必要があります。

代表者から持分割合に応じて固定資産税が請求される

実際には、「共有名義の不動産」の固定資産税は、「共有者」の中から選定された「代表者」がまとめて納付します。

4~6月ごろに自治体から「代表者」宛に納税通知書と納付書が送られてきますので、年4回に分けて分割で納付するか、または4~7月に一括で納付します。

「代表者」は、あくまで「共有名義の不動産」の固定資産税を代表して納付するわけですから、他の「共有者」に対して、「共有持分」の割合に応じてそれぞれの「共有者」が負担すべき固定資産税を請求することができます。

この他の「共有者」に負担すべき固定資産税を請求する権利を「求償権」といいます。

請求するタイミングや方法は、「代表者」と他の「共有者」が話し合って個別に決めることができます。

代表者はどのように決まる?

では、この「共有名義の不動産」の「代表者」はどのようにして決まるのでしょうか?

原則としては、自治体が「共有名義の不動産」の「代表者」を選定します。

しかし、「代表者」を「共有者」間で相談して決めることもでき、この場合は自治体に「代表者」を選定した旨のの届出をしなければなりません。

以下、順に詳しく説明します。

市町村の決め方にしたがって決める

まず、「共有者」から「代表者」の選定についての届出がない場合は、それぞれの自治体の条例に基づいて「共有名義の不動産」の「代表者」を決めます。

選定基準は自治体によって異なりますが、一般的には次の項目に優先順位をつけて選定しており、選定した「代表者」に納税通知書を送付します。

代表者の優先順位

  • その「共有名義の不動産」に住んでいる人(使用している人)
  • その自治体に住んでいる人
  • 「共有持分」の割合が大きい人
  • 登記簿の所有権に関する事項に記載されている順位が早い人

このときに自治体としては、固定資産税が確実に納付されるように判断するため、その「共有名義の不動産」に住んでいる人または使用している人やその自治体に住んでいる人などが「代表者」として選定される傾向にあります。

共有者間で相談して決める

自治体の決め方にはよらず、「共有者」間で相談して「共有名義の不動産」の「代表者」を決めることができます。

この場合は、「共有者」全員の同意を得たうえで、「代表者」を選任したことを自治体に届出します。

また、「代表者」を交代する場合も届出が必要で、「共有者」全員の同意を得たうえで、もとの「代表者」と新たな「代表者」が署名・捺印をして自治体に届出をします。

届出のための書類の名称は自治体によって異なる場合があります。

代表者が死亡した場合は相続人間で相談して決める

「共有名義の不動産」の「代表者」が死亡した場合は、自治体から「相続人代表者指定届」が送付されてきますので、新しい「代表者」を決めて届出をします。

亡くなった「代表者」の相続人が「代表者」を引き継ぐ場合もありますが、他の「共有者」が新しく「代表者」になる場合もあります。

届出のための書類の名称は自治体によって異なる場合があります。

届出がない場合は、自治体の基準によって自治体が新しい「代表者」を選定します。

代表者が持分を売却した場合は自治体に届け出る

「代表者」が自分の「共有持分」を売却した場合は、翌年度の固定資産税から「代表者」が変わることになりますので、新しい「代表者」を選定して届出をします。

「共有持分」を売却した年の固定資産税の納付は売主である元の「代表者」が行い、買主との間で日割り清算を行います。

届出のための書類の名称は自治体によって異なる場合があります。

届出がない場合は、自治体の選定基準によって自治体が新しい「代表者」を選定します。

代表者が納付しない場合は他の共有者に請求される

「共有名義の不動産」の納税義務者は「共有持分」を持つ「共有者」全員ですので、もし「代表者」が期日までに納付しない場合は、自治体は督促をし、それでも支払いがない場合は他の「共有者」に請求をすることができます。

これは、「共有名義の不動産」の「共有者」全員に「連帯納付義務」があるからですが、自治体が他の「共有者」の誰に請求をするのかは、自治体の判断によって決めることができます。

もし、「代表者」の代わりに固定資産税の納付の請求を受けた「共有者」が、他の「共有者」に相談などをして納付すれば問題はありませんが、滞納が続くと最悪の場合は財産の差し押さえ等の強制執行を受ける可能性があります。

共有名義の不動産の固定資産税に関する注意点

「共有名義の不動産」の固定資産税については、いくつかの注意すべき点がありますので、代表的な5つについて以下で説明します。

注意点1:相続登記が完了していなくても納税義務が発生する

「共有者」が亡くなって「共有持分」の相続が発生した際に、まだ「相続登記」が完了していないときでも、「共有者」の法定相続人全員に固定資産税の納税義務が発生します。

「相続登記」とは、相続した土地や建物などの不動産の登記簿の名義を変更することで、相続があっても自動的には変更されませんので、法務局に申請して変更する必要があります。

固定資産税は、毎年1月1日時点の登記簿上の所有者に対して課税されますので、このときまでに「相続登記」が完了していなければ、法定相続人に該当すると納税義務が発生してしまうのです。

注意点2:共有者の相続人にも連帯納付義務が発生する

「共有者」が亡くなって「共有持分」の相続が発生して相続が完了すると、その相続人全員に固定資産税の「連帯納付義務」が発生します。

「共有名義の不動産」の固定資産税は、「共有持分」を有する「共有者」全員が連帯して固定資産税の全額を納める義務を負っていますから、相続人は「共有持分」を相続することによって「共有者」になり、その義務も相続したことになるのです。

なお、当然ながら「相続放棄」をすれば「共有者」ではなくなりますので「連帯納付義務」はありません。

注意点3:相続により共有者が増えて連絡不能になる場合がある

元々の「共有者」が亡くなって「共有持分」が相続されていくと、「共有名義の不動産」が細分化されて「共有者」がどんどん増えていくことになります。

なかには遠方に居住している者が「共有者」となったり、音信不通の「共有者」が出てきたりして、「代表者」が他の「共有者」に固定資産税の各負担分を請求することさえ難しいという事態になることも考えられます。

注意点4:共有している不動産を単独で使用している場合、他の共有者に固定資産税と引き換えに家賃を請求される可能性がある

「共有名義の不動産」の固定資産税を支払った「共有者」が、その「共有名義の不動産」を単独で使用している場合は、他の「共有者」に固定資産税を請求するとそれと引き換えに家賃を請求される可能性があります。

つまり、「共有名義の不動産」を単独で使用しているということは、他の「共有者」の「共有持分」も使用しているということになりますので、他の「共有者」の立場で考えるとその使用料として家賃をもらっても当然だと考えるからです。

単独で使用している「共有者」が固定資産税をすべて負担していれば、他の「共有者」は家賃と相殺と考えて家賃を請求することまではしませんが、固定資産税を請求されるのであれば代わりに家賃を請求するということになるのです。

注意点5:固定資産税を肩代わりしてもらっていた場合、みなし贈与となる可能性がある

「みなし贈与」とは、「共有名義の不動産」の「共有者」が本来負担するべき「共有持分」の割合と異なる割合で固定資産税を負担した場合に、その差額について「贈与」とみなされて、少ない負担をした者に「贈与税」が課せられるというものです。

つまり、「共有者」が親子などの近い親族である場合に、子が負担すべき固定資産税を親が肩代わりして負担していると、親が負担した固定資産税が「みなし贈与」になる可能性があるということです。

「みなし贈与」になることを避けるためには、親子間での固定資産税のやり取りを利子を付けた「貸借」として扱う方法や年間110万円までの贈与税の非課税の範囲内で固定資産税のやり取りを行う方法があります。

共有名義の不動産の固定資産税の支払いを避けたいなら売却する方法もある!

「共有名義の不動産」の固定資産税の支払いを避ける方法として、「共有持分」の売却があります。

「共有名義の不動産」の「共有者」になっている場合、「共有名義の不動産」全体を売却するためには、「共有者」全員の合意が必要となりますので、なかなか実現することは困難です。

しかしながら、自分の「共有持分」だけであれば、自分1人だけの判断で売却することができます。

この場合、他の「共有者」の許可は必要なく、売却した旨の連絡をする必要もありません。

「共有持分」を売却すれば、売却代金が入ってきますし、「共有名義の不動産」の「共有持分」の所有者でもなくなりますから、固定資産税を支払う必要もなくなります。

専門の買取業者に依頼すれば共有持分のみをスムーズに売却できる

「共有名義の不動産」の「共有持分」の売却先としては、専門の買取業者がおすすめです。

一般の個人や不動産業者が「共有持分」を買い取ることはほとんどないと考えて良いでしょう。

ただし、買取金額は『「不動産全体の評価額」×「共有持分」の割合」』よりも低い金額になると考えておきましょう。

共有名義の不動産の固定資産税には連帯納付義務がある!持分が少なくても支払いが発生する可能性が高い!

この記事では、「共有名義の不動産」の固定資産税は誰が支払うのか、支払い割合はどのようになるのか、「共有持分」の「代表者」はどのように決まるのか、そして「共有持分」の固定資産税に関する注意点などについて詳しく解説しました。

「共有名義の不動産」の固定資産税に関する重要なポイントとしては、『「共有者」全員に「連帯納付義務」がある』ということと『「共有持分」が少なくても支払いが発生する可能性が高い』ということです。

このような「共有名義の不動産」の固定資産税に関する煩わしさやトラブルを避けるためには、専門の買取業者に売却することがベストな選択と言えるでしょう。

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