田舎の土地にかかる固定資産税はどれぐらい?抑える方法はある?

親から相続した田舎の土地を所有しているものの、今まで使ったこともなく、今後も使う予定もないのに放置し続けているという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

使うあてのない土地であっても、所有している限り毎年「固定資産税」を支払う必要があります。

また、近年空き家問題が深刻化していますので、その田舎の土地に古家が建っている場合は、「特定空き家」に指定されて「固定資産税」が6倍になってしまう可能性もあります。

そこで今回は、田舎の土地にかかる「固定資産税」はどれぐらいか、「固定資産税」の軽減措置にはどのようなものがあるのか、「固定資産税」を抑えるにはどのような方法があるのか、田舎の土地を所有し続けるとどのようなリスクがあるのかなどについて詳しく解説します。

田舎の土地にかかる固定資産税はどれぐらい?

「固定資産税」とは、固定資産の所有者に課税される市町村税の一つで、東京都の23区だけは都が都税として課税しています。

固定資産には、土地や家屋などの不動産と事業用の償却資産(機械や機器類の中で減価償却されるもの)があります。

「固定資産税」の納税義務者は、毎年1月1日における固定資産の所有者、具体的には固定資産課税台帳に所有者として登録されている者です。

毎年4~6月ごろに、「固定資産税」の納税義務者宛に納税通知書と納付書が送付されてきますので、年4回の締め切り日までに納付するか、4~7月ごろに一括で納付します。

固定資産税の計算方法

「固定資産税」は、「課税標準額」(固定資産税評価額)に「標準税率」を掛けて算出され、次式で表すことができます。

固定資産税の算出公式

「固定資産税」=「課税標準額」×「標準税率」=「固定資産税評価額」×「標準税率」

「固定資産税」の「標準税率」は1.4%ですが、地方税法によって各市町村が条例でこれと異なる税率を定めることができるため、全国が同じ税率とは限りません。

「固定資産税」は居住者がいる場合だけ課税されるのではなく、空き地や空き家にも課税されますので、田舎の土地や家屋を所有している限り「固定資産税」がかかり続けます。

固定資産税評価額とは

「固定資産税評価額」とは、「固定資産税」を算出するための基準となる評価額のことで、各市町村が総務省の「固定資産評価基準」に基づいて、土地と家屋それぞれについて決定します。

「固定資産税評価額」は、「固定資産税」のほかに「都市計画税」「不動産取得税」「登録免許税」の計算にも用いられます。

不動産取引の需給関係の変化などにより資産価格が変動するため、3年ごとに「固定資産税評価額」の評価の見直し(「評価替え」といいます)を行います。

「固定資産税評価額」は、土地の場合は公示価格の70%程度、建物の場合は再建築価格(その建物を今もう一度建てるのにかかる費用)の50~70%程度になっています。

課税標準額とは

「固定資産税」の場合の「課税標準額」は、固定資産課税台帳に登録された不動産の価格(適正な時価)です。

「固定資産課税台帳」の不動産の価格は、「固定資産税評価額」をもとに算出されます。

固定資産税の軽減措置

所有している土地や建物が一定の条件を満たしている場合は、「固定資産税」の軽減措置を受けることができます。

軽減措置には、土地に関するものと建物に関するものがありますので、順に説明します。

住宅用地の特例

土地が住宅用の場合は「住宅用地の特例」という軽減措置が適用されるため、住宅1戸について200m2までの土地の「課税標準額」は1/6に減額され、200m2を超える部分の土地の「課税標準額」は1/3に減額されます。

また、「都市計画税」が課税される場合も、それぞれ200m2までの場合は「課税標準額」が1/3に、200m2を超える場合は「課税標準額」が2/3に減額されます。

不動産の種類固定資産税都市計画税
小規模住宅用地(200m2までの部分)「課税標準額」を1/6に減額「課税標準額」を1/3に減額
一般住宅用地(200m2を超える部分)「課税標準額」を1/3に減額「課税標準額」を2/3に減額

この「住宅用地の特例」は、建物を取り壊して更地にした場合には適用されなくなりますが、建て替えのために取り壊すなど一定の要件を満たす場合は、申告をすることによってこの特例措置が継続して適用されます。

新築住宅に対する軽減措置

2024年3月31日までに新築した住宅は、一定期間「固定資産税」が軽減されます。

「固定資産税」が軽減される期間は、住宅の種類によって異なり、一戸建ての場合は新築から3年間、マンションの場合は5年間が減税措置の期間になります。

さらに、新築した住宅が「認定長期優良住宅」に認定された場合は、新築住宅に対する軽減措置の期間が延長されます。

「認定長期優良住宅」とは、耐震性や耐久性などが優れていると国に認定された住宅のことです。

住宅の種類軽減期間軽減割合
一般住宅戸建て住宅3年1/2
マンション5年1/2
認定長期優良住宅戸建て住宅5年1/2
マンション7年1/2

ただし、居住部分の床面積が全体の1/2以上であり、居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であるものに限るというという条件を満たす必要があります。

軽減措置を受けるための手続きは、新築した翌年の1月31日までに住宅の所在地を管轄する市区町村に「固定資産税減額申告書」と必要な書類を提出して申告します。

建て替えや改修した住宅に対する軽減措置

2024年3月31日までに、対象となる建て替えやリフォームを行った場合は、翌年の「固定資産税」が軽減されます。

対象となるリフォームの種類とその概要は次の通りです。

翌年の固定資産税が軽減される対象となるリフォームの種類

  • 耐震リフォーム:1982年1月1日以前に建築された住宅に対して「現行の耐震基準に適合する耐震改修工事」を行った場合
  • バリアフリーリフォーム:新築後10年以上を経過した住宅に対して「一定のバリアフリー改修工事」を行った場合
  • 省エネリフォーム:2014年4月1日以前に建築された住宅に対して「窓の断熱改修工事を含む一定の省エネ改修工事」を行った場合
  • 長期優良住宅化リフォーム:1982年1月1日以前に建築された住宅に対して「現行の耐震基準に適合する耐震改修工事」または「窓の断熱改修工事を含む一定の省エネ改修工事」を行って「増改築による長期優良住宅」に認定された場合
リフォームの種類軽減期間軽減割合軽減対象
耐震リフォーム翌年度1年1/2120㎡までの部分
バリアフリーリフォーム翌年度1年1/3100㎡までの部分
省エネリフォーム翌年度11/3120㎡までの部分
長期優良住宅化リフォーム翌年度1年2/3120㎡までの部分

軽減措置を受けるためには、リフォーム工事終了後3か月以内に住宅の所在地を管轄する市区町村に「固定資産税減額申告書」と必要な書類を提出して申告します。

免税点未満であれば非課税に

税の中には、ある一定額未満の「課税標準額」に対しては課税しないものがあり、この一定額のことを「免税点」といいます。

「固定資産税」にも「免税点」があり、同一市町村内の同一人が所有する土地・家屋・償却資産のそれぞれの「課税標準額」の合計が下記の「免税点」未満の場合は、「固定資産税」が非課税となります。

課税標準額の免税点

  • 土地:30万円
  • 家屋:20万円
  • 償却資産:150万円

別の市区町村に所有している土地や建物の「課税標準額」が免税点未満の場合は、それぞれの「固定資産税」は非課税となります。

なお、「固定資産税」が免税点未満の土地や家屋は、「都市計画税」も非課税となります。

田舎の方が固定資産税が高いのはなぜなのか

田舎の土地は、売却などが難しいにも関わらず「固定資産税」が都会よりも高くなります。

その理由として、次の2点が挙げられます。

理由1:固定資産税が自治体の主な財源になっているから

一つ目の理由は、「固定資産税」や「都市計画税」が自治体の主要な財源になっているため安易に下げられないという実態があります。

給与所得者や事業所が少なく財政規模が小さい自治体や地価が安い自治体、面積が広い自治体などは、特に「固定資産税」や「都市計画税」への依存度が高くなっています。

理由2:不動産の取引数が少ないから

もう一つの理由としては、田舎の不動産取引が少ないために「固定資産税」や「都市計画税」が高くなってしまうということがあります。

「固定資産税」の基準となる「固定資産税評価額」は「固定資産税路線価」をもとにしていますが、不動産取引の数が少なくなると、評価する土地の範囲を広げることになり「固定資産税評価額」が高くなってしまうのです。

田舎の土地の固定資産税を抑える方法は?

田舎の土地の「固定資産税」は、所有する限りかかり続けますので、「固定資産税」を抑えるには手放すことが最善策です。

手放す方法としては、以下のようなものがあります。

【1】売却する

田舎の土地を手放す方法として、売却する方法があります。

不動産会社に依頼して第三者に売却する方法と専門の買取業者に売却する方法がありますので、それぞれについて説明します。

いずれの場合も、売却によって「売却益」が生じる場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行って、譲渡所得に応じた税金を納める必要があります。

一般仲介で売却する

一般的な売却方法は、不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらうものです。

売り出し価格を決めるためにも査定をしますが、不動産会社には得意な地域や物件などがありますので、複数の不動産会社に査定を依頼して高く売却してくれる不動産会社を選ぶことがポイントになります。

もし、田舎の土地に古家が建っている場合は、建物に対する「契約適合責任」を負うことになりますので、雨漏りやシロアリ被害が発生している場合は修繕をしたうえで売り出す必要があります。

もし、住むことができない状態の古家の場合は、「契約適合責任」を免責とすることを契約書に明記しておく必要があります。

専門の買取業者に売却する

一般的な仲介売却の他に、専門の買取業者に売却する方法もあります。

田舎の土地の状態に関係なく現状のままで、1週間~1ヶ月程度の短期間で買い取ってくれます。

また、古家が建っている場合は、通常の不動産売買では売主は「契約不適合責任」を負うことになりますが、買取業者はリフォームを行うことを前提として購入するため、特約によって「契約不適合責任」が免責されるのが一般的です。

【2】譲渡する

田舎の土地を手放す方法として、知人や親族などに譲渡するという方法があります。

知人や親族などの中に田舎の土地を使いたいという人がいれば、相手にも喜んでもらえますし、自分自身も手放すことができます。

ただしこの場合、田舎の土地を受け取った側には贈与税が課税されることになりますが、譲渡した側の自分自身には税金はかかりません。

【3】寄付する

田舎の土地を手放す方法として、寄付する方法もあります。

寄付の相手に無償で田舎の土地を渡す方法ですが、寄付の相手には、自治体・法人(営利法人や公益法人など)・個人が考えられます。

自治体に寄付する場合は、自治体側に具体的な使用目的があり、かつ自治体が設定した条件を満足している場合であれば寄付を受け入れてくれますが、実際に寄付を受け入れている例は少ないようです。

自治体としては、土地は個人に所有してもらって固定資産税を納めてもらった方が良いからです。

法人の場合も、具体的に使用する目的がある場合は寄付を受け入れてくれる可能性もあります。

営利法人が寄付を受けると「みなし譲渡所得」として課税対象となりますが、公益法人の場合は所定の手続きをすることによって非課税となります。

個人の場合に最も現実的な方法は、隣地の所有者に寄付することで、これは隣り合った土地であれば有効に活用することができると考えられるからです。

寄付を受けた個人は、贈与を受けたことになるため贈与税がかかりますので、この点について了解が得られれば、寄付を受け取ってもらえる可能性は高いと考えられます。

手間や費用をかけずに田舎の土地を手放すなら、専門の買取業者に依頼するのがおすすめ

この記事では、手放す方法として「売却する」「譲渡する」「寄付する」の3つを紹介しましたが、「専門の買取業者に売却する」ことをおすすめします。

専門の買取業者に売却する場合は、買取価格が一般的な相場よりは安くなってしまいますが、手間をかけずに短期間で確実に売れるという点が大きな魅力です。

さらに、売却にあたって、不用品の処分や掃除などの手間がかからず、契約不適合責任が免責になることも大きなメリットです。

田舎の土地を所有し続けるリスク

使う予定のない田舎の土地を所有し続けると様々なリスクが生じます。

その中で代表的なリスクを挙げると、次の3つになります。

田舎の土地を所有し続けるリスク

  • リスク1:固定資産税の支払いが発生し続ける
  • リスク2:維持管理費がかかる
  • リスク3:特定空き家に指定される場合がある

以下、順に詳しく説明していきます。

リスク1:固定資産税の支払いが発生し続ける

田舎の土地を所有し続けると、「固定資産税」の支払いが発生し続けることになります。

「固定資産税」は、「固定資産税評価額」に税率(標準税率は1.4%)を掛けた金額ですが、立地によっては「都市計画税」(税率最大0.3%)がかかることがあります。

リスク2:維持管理費がかかる

田舎の土地を所有し続けると維持管理費や清掃費などがかかり続けることになります。

土地だけであれば、それほどの維持管理費はかからないと思われますが、古家が建っている場合は、建物や住宅設備の修繕費などが必要となることが考えられますので、より負担が増えることになります。

リスク3:特定空き家に指定される場合がある

田舎の土地に古家が建っていて、それを全く使わないまま放置し続けて、次の4つの状態のいずれかに該当するようになると「特定空き家」に指定される可能性があります。

特定空き家に該当する条件

  • 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 著しく景観を損なっている状態
  • 周辺の生活環境保全のため放置することが不適切である状態

近年空き家問題が大きな社会問題となっていることから、自治体も非常に厳しい対応を行うようになってきており、「特定空き家」に指定されると「助言・指導」が行われ、改善されない場合は「勧告」が行われて、「住宅用地の特例」が適用されなくなります。

その結果、翌年以降の「固定資産税」は大幅に増加して6倍になってしまいます。

その後も改善せずに放置し続けると「命令」が行われて50万円以下の罰金が科され、最終的には自治体が「行政代執行」を行って、その費用を請求されることになります。

所有している限り田舎の土地の固定資産税は発生し続ける!固定資産税を抑えたいなら手放すことを選択肢に入れよう!

「固定資産税」は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課税されますので、田舎の土地を所有している限り毎年支払わなくてはなりません。

さらに、近年空き家問題が深刻化していますので、その土地に古家が建っている場合は「特定空き家」に指定されないように適切な維持管理を行う必要があり、これにも一定の費用がかかります。

このように所有している限り発生し続ける「固定資産税」などを抑えたいのであれば、田舎の土地を手放すことを選択肢に入れて検討すべきでしょう。

そして、田舎の土地を手放すための具体的な方法としては、専門の買取業者への売却がおすすめです。

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