環境的瑕疵物件とは?主な種類やリスク、注意点などを解説
不動産取引において、物件の状態や立地に関する情報は、購入者にとって非常に重要な要素です。
物件が魅力的であっても、その周辺環境が悪ければ、住み心地や資産価値が損なわれる可能性があります。
こうした物件の問題を「瑕疵(かし)物件」と呼びます。瑕疵とは「欠陥」や「欠点」を意味し、物件に潜む見えない問題を指す言葉です。
瑕疵物件にはいくつかの種類がありますが、その中でも特に環境に起因する問題を抱える物件を「環境的瑕疵物件」と呼びます。
この記事では、環境的瑕疵物件とは何か、そのリスクや回避策、売却時の対応について詳しく解説していきます。もし環境的瑕疵を抱える物件を所有している、または購入を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 環境的瑕疵物件とは?
- 2. 環境的瑕疵の主な種類
- 2.1. 騒音による瑕疵
- 2.2. 悪臭による瑕疵
- 2.3. 大気汚染による瑕疵
- 2.4. 水質汚染による瑕疵
- 2.5. 自然災害リスクによる瑕疵
- 2.6. 電磁波による瑕疵
- 2.7. 景観の変化による瑕疵
- 2.8. 日照権の侵害による瑕疵
- 2.9. 繁華街や施設の影響による瑕疵
- 2.10. 隣接する施設による瑕疵(墓地・火葬場・刑務所など)
- 2.11. 周辺工場や倉庫の影響による瑕疵
- 2.12. 過去の災害や犯罪歴による心理的瑕疵
- 3. 環境的瑕疵物件のリスクと購入時の注意点
- 3.1. 資産価値の低下
- 3.2. 健康への影響
- 3.3. 日常生活への影響
- 4. 環境的瑕疵物件を避けるためのポイント
- 4.1. 周辺環境の調査
- 4.2. 公的機関のデータを活用する
- 4.3. 不動産業者に確認する
- 5. 環境的瑕疵物件に対する法律の対応
- 6. 購入前には周囲の状況などを実際に見て確認しよう!
環境的瑕疵物件とは?
まず、環境的瑕疵物件の定義から説明します。
環境的瑕疵とは、物件自体に直接の欠陥がないものの、その周辺環境に問題があるために物件の価値が下がる、または購入者に不利益が生じる要因を指します。
これには、騒音、悪臭、大気汚染、水質汚染、自然災害リスクなどが含まれます。
一見、建物や内装が問題ない物件であっても、周囲の環境が住み心地に大きな影響を与えることがあります。
例えば、近くに大きな幹線道路や工場がある場合、騒音や悪臭が日常的に発生し、これが生活の質を著しく下げてしまうこともあるのです。
環境的瑕疵は目に見える物理的な瑕疵とは異なり、見た目では判断しづらい点が厄介です。
購入者や売却を検討する際には、周辺の環境についてもしっかりと確認しておく必要があります。
環境的瑕疵の主な種類
環境的瑕疵にはさまざまな要因があり、それが物件にどのような影響を与えるのかはケースバイケースです。
ここでは、環境的瑕疵の主な例を挙げて説明します。
騒音による瑕疵
騒音問題は、環境的瑕疵の代表的な例です。
例えば、物件の近くに幹線道路、鉄道、飛行場などがあると、昼夜を問わず騒音が発生し、それが住み心地を損なう原因となります。
特に夜間における騒音は、睡眠の妨げとなり、ストレスを感じることも多くなります。
具体的な例として、主要道路沿いの物件を考えてみましょう。この場合、車両の通行音が24時間続くことが多く、窓を閉めても振動や低周波音が響くことがあります。
ある購入者は、「車の音が絶えず聞こえて、家にいてもリラックスできない」と感じ、購入を諦めたというケースもあります。
また、鉄道沿線の物件では、電車が通過するたびに家が揺れることがあります。
特に古い建物の場合、この揺れが大きく感じられることがあり、騒音や振動が原因で物件の価値が下がることがあるのです。
悪臭による瑕疵
悪臭もまた、環境的瑕疵として大きな問題です。
工場や廃棄物処理施設、下水処理場が近くにある場合、特定の季節や風向きによって悪臭が発生することがあります。
このような悪臭は、住環境に悪影響を及ぼし、特に住民が窓を開けられない、洗濯物を外に干せないなどの日常生活に大きな支障をきたす原因となります。
例えば、ある地域では、夏場に風向きが変わると、近隣の工場からの排気が住宅街に漂ってくるという問題がありました。
この地域の物件を所有していた人々は、悪臭のせいで売却が思うように進まず、結果的に物件の価格を大幅に下げるしかなかったという事例もあります。
大気汚染による瑕疵
工場地帯や交通量の多い道路の近くでは、大気汚染が発生することがあります。
排ガスや工場からの煙、有害物質が空気中に漂っていると、健康への影響が懸念され、特に小さな子供や高齢者、呼吸器系に問題を抱える人にとっては大きなリスクとなります。
例えば、ある住宅地では近くに大きな工場があり、その工場から排出される煙や粉塵が原因で、住宅の外壁が黒ずんでしまうという問題がありました。
住民たちは健康への不安から物件の売却を希望しましたが、大気汚染の問題を避けたいという購入者が多く、売却は難航しました。
水質汚染による瑕疵
水質汚染も、環境的瑕疵の一つです。工場や産業廃棄物処理施設が近くにある場合、土壌や地下水が汚染されることがあります。
特に飲み水として利用する井戸水や河川が汚染されている場合、居住者の健康に深刻な影響を与えることがあります。
例えば、ある地域では、工場からの排水が地下水を汚染し、住民の井戸水に有害物質が混入したという事例があります。
この問題が発覚した後、その地域の物件の価値は急激に下がり、多くの住民が売却を試みましたが、買い手が見つかることはほとんどありませんでした。
自然災害リスクによる瑕疵
洪水や土砂災害、地震のリスクが高い地域にある物件も、環境的瑕疵として分類されます。
自然災害のリスクが高い地域では、物件の安全性が低く、特に保険料が高くなることや、万が一災害が発生した場合の修復費用などが大きな懸念材料となります。
例えば、河川の氾濫が頻発する地域にある物件は、洪水のリスクが高く、そのため物件の価値が下がりがちです。
また、こうした地域にある物件は、購入者がリスクを避けようとするため、売却までに時間がかかることがよくあります。
電磁波による瑕疵
電磁波は、高圧線、携帯電話の基地局、送電塔などから発生します。
近年では、これらが人体に与える影響が懸念されており、特に高圧線の近くに位置する物件は、健康リスクへの不安から購入者に敬遠されがちです。
景観の変化による瑕疵
美しい景観や自然環境が魅力の地域では、周囲の開発や建物の建設による景観の悪化が大きな問題になります。
特に、海や山などの自然が売りのエリアで、近隣に高層ビルや工場が建設されることで、住環境が損なわれ、物件の価値が下がることがあります。
日照権の侵害による瑕疵
日照権の侵害は、近隣の建物や構造物によって日光が遮られ、日当たりが悪くなることで発生します。
特に、住宅地で近隣にマンションや高層ビルが建設されると、これまで十分に確保されていた日照が奪われ、生活の質が低下します。
繁華街や施設の影響による瑕疵
繁華街、パチンコ店、クラブ、カラオケ店など、夜間も営業する施設が近くにある場合、その物件は環境的瑕疵を抱える可能性があります。
これらの施設は、深夜の騒音、ゴミの放置、酔っ払いによるトラブルなど、治安面での不安や生活環境の悪化を引き起こすことがあります。
隣接する施設による瑕疵(墓地・火葬場・刑務所など)
物件の隣接地に墓地や火葬場、刑務所などの施設がある場合、心理的な抵抗やイメージの悪さから、購入者が避ける傾向があります。
特に日本では、死に関わる施設や刑務所などの存在は、物件の価値に大きな影響を与えやすいです。
周辺工場や倉庫の影響による瑕疵
周囲に工場や大型倉庫がある場合、その物件には様々な環境的リスクが生じます。
特に、大型トラックの通行による騒音、振動、交通渋滞、さらには工場の稼働音や作業中に発生する粉塵などが住環境に悪影響を及ぼすことがあります。
過去の災害や犯罪歴による心理的瑕疵
物件の過去に火災や水害があった場合、その記録が買い手に伝わることで、心理的に不安を与えることがあります。
さらに、近隣で重大な犯罪が発生した場所や、かつて暴力団事務所があった地域にある物件は、購入者から避けられがちです。
環境的瑕疵物件のリスクと購入時の注意点
環境的瑕疵物件には、いくつかのリスクが伴います。
これらのリスクを理解し、購入前に慎重に検討することが重要です。以下に、主なリスクと、購入時に注意すべきポイントを紹介します。
資産価値の低下
環境的瑕疵物件は、一般的に資産価値が低くなる傾向があります。
物件そのものに問題がなくても、周辺環境が悪いことで将来的に売却が難しくなる可能性があるからです。
特に、騒音や悪臭、大気汚染などが長期的に改善される見込みがない場合、物件の資産価値はさらに低下するでしょう。
例えば、ある地域では鉄道の拡張工事が行われ、その沿線にある物件は騒音の影響で資産価値が大きく下がりました。
この地域の住民たちは、工事後に物件を売却しようとしましたが、価格の大幅な引き下げを余儀なくされた事例があります。
健康への影響
大気汚染や水質汚染などの環境的瑕疵は、住民の健康に直接的な影響を与える可能性があります。
特に小さな子供や高齢者、病気を持つ人々にとっては、これらの健康リスクが増大するため、物件選びの際には慎重に検討する必要があります。
例えば、大気汚染が深刻な地域では、ぜんそくや呼吸器疾患のリスクが高まることがあります。
こうしたリスクを避けるために、購入者がその地域の物件を敬遠することが多くなり、結果的に物件の売却が難しくなることがあります。
日常生活への影響
環境的瑕疵がある物件では、日常生活においてもさまざまな不便やストレスが生じることがあります。
例えば、常に騒音が響く環境や、悪臭が漂う場所では、快適な生活を送ることが難しくなります。
また、これらの問題は心理的なストレスを引き起こす原因にもなり得ます。
ある家族は、主要道路沿いの物件を購入しましたが、夜間に続く騒音に悩まされ、結局数年後に物件を売却することにしました。
このような環境的問題は、生活の質を大きく低下させ、購入者にとって非常に重要な要素となります。
環境的瑕疵物件を避けるためのポイント
物件を購入する際には、環境的瑕疵を避けるためにいくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
以下に、事前に確認すべき事項を紹介します。
周辺環境の調査
物件を購入する前に、必ず周辺環境を自分の目で確認することが重要です。
物件の立地だけでなく、昼間や夜間、さらには平日と休日の様子も確認しましょう。
例えば、昼間は静かでも、夜になると幹線道路の交通量が増え、騒音がひどくなる地域もあります。
朝や夜の状況を確認しておくことで、日常生活に影響を与える可能性を減らすことができます。
公的機関のデータを活用する
自治体や環境省などの公的機関では、騒音や大気汚染、水質汚染に関するデータが公開されています。
これらのデータを確認することで、物件の周辺環境がどのような状況にあるのかを客観的に把握することができます。
また、災害リスクの高い地域についてもハザードマップを利用し、事前に確認しておくことが重要です。
不動産業者に確認する
不動産業者には、物件に関する瑕疵や問題点を説明する義務があります。
物件を購入する際には、業者に対して過去の住民からの苦情や、周辺で計画されている開発プロジェクトなど、将来的なリスクがないかどうかを確認することが大切です。
特に周辺の環境に関しては、購入者自身が積極的に質問し、可能な限り情報を収集することが必要です。
環境的瑕疵物件に対する法律の対応
日本の法律では、不動産取引において売主には瑕疵のある物件について説明する義務があります。
物件に関する重要な情報は「重要事項説明書」に記載され、買主は取引前にその情報を確認することができます。
環境的瑕疵も、この説明義務の対象となるため、買主が不利益を被らないように、売主は正直に開示する必要があります。
また、購入後に環境的瑕疵が判明した場合、買主は売主に対して損害賠償を請求することが可能です。
ただし、これには証拠が必要となるため、購入前に十分な調査を行い、問題がないか確認することが重要です。
購入前には周囲の状況などを実際に見て確認しよう!
環境的瑕疵物件は、物件自体に問題がない場合でも、周辺環境が原因で居住者に不利益を与えるリスクを抱える物件です。
購入前には、物件の立地や周辺環境についてしっかりと調査し、長期的なリスクを見越して慎重に判断することが大切です。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。