既存不適格物件とは?購入・売却のデメリットや高く売れるケースを徹底解説

中古不動産市場で、「既存不適格物件」という言葉を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

あるいは、実家を相続したら、既存不適格物件と言われた、という方もいらっしゃるかもしれません。

日本の不動産市場において、既存不適格物件は、特殊なカテゴリーに属します。

その理由は、既存不適格物件は、現在のままであれば、居住や使用が認められるけれども、一定規模以上の増改築や再建築(新築)をすることは、不可能である場合が多いからです。

既存不適格物件は、日本の不動産市場では独特の位置を占めており、その理解は不動産取引において重要な要素となります。

したがって、この記事では、まず既存不適格物件とは何かといったことから、既存不適格物件とされる理由、購入・売却する際のデメリットを詳しくお伝えし、さらに、できるだけ高値で売却するためにはどのような方法があるかまで、解説していきます。

既存不適格物件の購入・売却をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

既存不適格物件とは

既存不適格物件とは、今現在建っている建物あるいは建築中の建物のうち、竣工した時点では、その当時の法令において合法だったものが、その後の建築基準法の改正や都市計画法の変更などによって、現在の法令に照らし合わせると、基準を満たさなくなってしまう物件のことを言います。

既存不適格物件は、現在の法令に違反してはいるものの、建築基準法3条2項の特例により、居住や使用が認められているものです。

したがって、法令違反を理由とした罰金や取り壊しの対象にはなりませんが、一定の規模を超える増改築などの際には、現在の法令に照らし合わせて、適法にする必要があります。

既存不適格物件は、法改正のタイミングによって突如として現行法の基準に合わなくなることがあるため、不動産市場での取り扱いには特別な配慮が必要とされます。

既存不適格物件と違反建築物の違い

既存不適格物件と違反建築物とは、似ているようで根本的に異なります。

既存不適格物件と違反建築物との違いとは、一言で言うと「その建物が竣工した時点で合法であったかどうか」ということです。

竣工した時点では合法であったものの、法改正などによって基準からはずれてしまった既存不適格物件に対し、違反建築物とは、竣工当初から法令に違反している建物や、建築確認申請を行った後に内容が変更され違法になった建物、または法令に適合しない増改築工事を無許可で行った建物などのことです。

違反建築物は、建築基準法9条1項で規定されており、これらに対しては、使用制限や使用禁止、除却、移転などの是正命令が出されることになっています。

この是正命令は、建築主に対してだけではなく、工事の請負業者や、建物の建っている敷地の所有者に対しても出され、これに従わない場合には、建築基準法98条の規定により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される場合があります。

このように、違法建築物は初めから法律に適合しておらず、売買に際して多くの法的問題を抱える可能性が高いです。

一方で、既存不適格物件は、過去には法的な要件を満たしていたが、時間の経過と共に新しい法規制によってその地位を失ったものです。

違法に建てられた建物とは言えないため、ある程度法律によって保護されています。

したがって、不動産取引において、既存不適格物件と違法建築物を区別することは、不動産取引の合法性と安全性を確保する上で重要な判断基準となり、必要不可欠なことと言えます。

既存不適格物件は、法的な変更点に敏感であるため、不動産市場における特殊な存在として取り扱われる必要があるのです。

既存不適格物件となる理由

建物が既存不適格となる理由は、主に以下の2つです。

建物が既存不適格となる理由

  • 耐震基準の改正によるもの
  • 建築基準法や都市計画法の改正によるもの

それぞれについて、詳しく解説していきます。

理由1:耐震基準の改正によるもの

既存不適格物件の一つの大きな要因は、耐震基準の改正です。

日本では、過去に何度も耐震基準が見直されてきました。

例えば、1981年の新耐震基準の導入は多くの既存建築物に影響を与えています。

これにより、基準導入前に建築された多くの物件が、現在の基準に照らし合わせると不適格となる場合があります。

これらの物件は、耐震性に関して現代の基準を満たさないため、特別な扱いが必要です。

耐震基準の改正は、特に地震の多い日本において、不動産の安全性を高めるために必要な措置であり、これによって既存不適格となる物件は数多く存在します。

耐震基準の改正は、建物の安全性向上を目的としていますが、その一方で、基準改正以前に建築された多くの建物が既存不適格の状態になることもあり、これが不動産市場に影響を与えることになっているのです。

理由2:建築基準法や都市計画法の改正によるもの

建築基準法や都市計画法の改正も、既存不適格物件の出現に大きくかかわっています。

これらの法律は、都市の安全性や住環境の保護を目的として定められており、時代と共にその基準は更新されています。

たとえば、建ぺい率や容積率の変更、用途地域の変更などがこれに該当するものです。

これらの変更により、一度は合法的に建築された物件が、新しい法規制によって不適格となることがあります。

このように、法的な変更は不動産の価値に直接的な影響を及ぼし、所有者や購入・売却を考える者にとって重要な検討事項となります。

建築基準法や都市計画法の改正は、社会の変化や技術の進歩に伴い、不動産の安全性や利便性を向上させるために行われますが、これらの改正は既存の建物に新たな制約を課すことにもなり、不動産市場において特別な扱いが必要な既存不適格物件を生み出すことになるのです。

つまり、既存不適格物件となる理由は、時代の変遷と共に生じる法的な状況の変化に起因することが多いと言えます。

既存不適格物件を購入するデメリット

既存不適格物件を購入するデメリットは、主に以下の3つです。

既存不適格物件を購入するデメリット

  • 増改築や建て替えが簡単ではない
  • ローン審査が通りにくい
  • 住宅ローン控除が利用できない

一つひとつ詳しく見ていきましょう。

【1】増改築や建て替えが簡単ではない

既存不適格物件の購入における主なデメリットの一つは、増改築や建て替えにおける制限が厳しいことです。

これらの物件は、現在の建築基準に適合していないため、改修や改築を行う際には、新たな法律基準に合わせる必要があります。

これは、追加の費用や手間がかかることを意味しており、物件の価値や利用可能性に制限を加えることになります。

特に、耐震基準やエネルギー基準のような重要な要素に関しては、厳格な改修が必要となり、これが購入後のコスト増につながる可能性が高いです。

既存不適格物件は、改修や改築において、現行の法規制に準拠する必要があるため、これらの作業は通常よりも複雑で、高額になる可能性があります。

このため、既存不適格物件の購入を検討する際には、将来的な改修や改築のコストと手間を考慮することが重要です。

【2】ローン審査が通りにくい

既存不適格物件の購入において、もう一つの大きなデメリットは、住宅ローンの審査が通りにくいことです。

多くの金融機関では、不動産の安全性や法的適合性を重視しており、既存不適格物件はこれらの基準を満たさない可能性が高いため、住宅ローンの審査を通過するのが困難です。

これは、購入希望者にとって大きなハードルとなり、自己資金での全額支払いや他の金融手段を検討する必要があるかもしれません。

住宅ローンの利用が困難であることは、購入者の選択肢を制限し、購入プロセスをより複雑にします。

また、住宅ローンの審査が通りにくいことは、物件の流動性にも影響を及ぼし、もし将来売却したいと思った時に、購入希望者が限られることになります。

このため、既存不適格物件の購入を検討する際には、資金計画を慎重に立てることが求められるでしょう。

【3】住宅ローン控除が利用できない

既存不適格物件を購入する際に直面するもう一つの問題は、住宅ローン控除の利用が困難であることです。

住宅ローン控除は、新築や一定の基準に適合する物件の購入時にのみ利用可能な税制優遇措置であり、法的基準から逸脱している既存不適格物件では、この控除の対象外となることが一般的です。

これにより、購入者は税制上の優遇を受けることができず、長期的な経済的負担が増大する可能性があります。

住宅ローン控除の利用ができないことは、購入の総コストを増加させる要因となり、これが購入決定に大きな影響を及ぼすことがあるでしょう。

既存不適格物件を購入する際には、税制面での利点が限られることを考慮し、総合的な費用対効果を検討することが重要です。

既存不適格物件を売却する際のデメリット

既存不適格物件を売却する際のデメリットは、主に以下の2つです。

既存不適格物件を購入するメリット

  • 売却価格が安い
  • 買い手がつきにくい

どちらも、大きなデメリットと言えるでしょう。

【1】売却価格が安い

既存不適格物件を売却する際の主なデメリットの一つは、売却価格が通常よりも低くなる傾向にあることです。

法的な制限や改修の必要性により、これらの物件は市場における魅力が低下し、同じエリアの類似物件に比べて、価格が1割~5割ほど下がることが一般的です。

物件が古い場合、老朽化による価値の減少も価格低下の一因となります。

このため、既存不適格物件の売却を検討する場合、市場価格を慎重に評価し、適切な価格設定をすることが求められます。

既存不適格物件の売却価格は、物件の状態や立地、市場の需要など、多くの要素に影響されるため、市場価格を正確に把握し、物件の魅力を最大限に引き出す戦略を立てることが重要です。

【2】買い手がつきにくい

既存不適格物件を売却する際のもう一つの大きなデメリットは、買い手が見つかりにくいことです。

既存不適格物件のほとんどは、多くの制約やリスクを抱えているため、購入希望者にとって魅力が低い場合が多いです。

また、リフォームや改築の制限、住宅ローンの利用困難などが、購入者にとっての大きなハードルとなります。

したがって、これらの要因により、既存不適格物件は市場での需要が低く、買い手を見つけるのが困難になることがあります。

売却を成功させるためには、物件のポジティブな側面を強調し、適切な価格設定とマーケティング戦略を行うことが必要です。

市場の状況を正確に把握し、潜在的な購入者のニーズに合わせた売却戦略を計画することが、成功への鍵となります。

また、既存不適格物件専門の買取業者など、専門家の助言を求めることで、売却プロセスを円滑に進めることができるでしょう。

既存不適格物件でも高く売れるケースはある

既存不適格物件は市場価格が低いと一般に考えられがちですが、適切な戦略を用いれば高価格での売却も可能です。

最も効果的な戦略の一つは、既存不適格物件専門の買取業者への売却でしょう。

一般市場での売却は時間と労力がかかり、価格面でも不利になることがあります。

しかし、専門の買取業者は既存不適格物件の特性を理解し、迅速な取引と適正な価格提案が可能です。

これにより、市場での売却よりも高い価格での取引が期待できます。

買取業者は物件の将来的な価値や開発可能性を見極め、そのポテンシャルに基づいて買取を行います。

ただし、専門の買取業者に売却する場合は、必ず複数の業者に見積もりを依頼しましょう。

複数の不動産会社に見積もりを依頼することで、物件の市場価値の適切な評価が得られます。

異なる業者からの価格提案を比較することで、物件の実際の市場価値を把握しやすくなり、より適正な価格での売却が可能になります。

複数の見積もりを取ることは、市場の動向を理解し、最適な売却戦略を立てるための重要なステップです。

なるべく高く売るなら専門の買取業者に売却するのがおすすめ!

以上、既存不適格物件の定義や、そうなってしまう理由、購入・売却する際のデメリット、高値で売れるケースについて解説してきました。

既存不適格物件をなるべく高く売るためには、市場の動向を理解し、適切な販売戦略を立てることが重要です。

物件の特性を最大限に活かし、潜在的な買い手のニーズに合わせたアプローチを行うことで、高値で売れる可能性を高めることができます。

そのためには、既存不適格物件専門の買取業者に依頼するのが最適でしょう。

専門家との協力と適切な市場分析により、既存不適格物件でも高価格での売却が実現可能です。

既存不適格物件の売却をお考えの方は、まず複数の専門買取業者に見積もりを依頼することをおすすめします。

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