再建築不可物件の定義とは?建築可能にすることはできるのか

中古物件や土地を探している際に、「再建築不可物件」という言葉を目にすることはありませんか?

再建築不可物件は、一般的に相場より安いことで、購入を検討することがあるかもしれません。

また、現在すでに所有している物件が、再建築不可物件であると言われ、戸惑っている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、再建築不可物件とは何か?ということから、そういった物件が建てられた背景、再建築不可物件を購入する際のメリット・デメリット、さらに、リフォームや建て替えは可能なのかどうか、それをする際の注意点などを詳しく解説していきます。

目次

再建築不可物件の定義とは?

再建築不可物件とは、法律上、現在建てられている建物を解体して更地にしてしまった場合、再び新たな建築物を建てることができない物件のことを言います。

「建て替え(新築)」はもちろん、建築確認申請が必要な「改築」「増築」「大規模な修繕」もできません。

再建築不可物件の定義は大きく4つに分類できます。

再建築不可物件の定義

  • 敷地上空に17万ボルト以上の高圧線が通っている場合
  • 既存不適格物件である場合
  • 市街化調整区域内にある場合
  • 接道義務違反の場合

2つ目の、既存不適格物件にあたる場合、何らかの理由で、建築当時の法律と現在の建築基準法に違いがあり、現在の建築基準法では同じ建物を建てられない場合を言います。

3つ目の、市街化調整区域というのは、あまり市街地開発をせず、無秩序な市街地の拡大を防ぐ地域のことです。

そのため、市街化調整区域に建物を建築するにあたっては制限が多く、建築が難しいエリアであるということになります。

4つ目の接道義務違反というのが、再建築不可物件の条件として一番多い問題です。

建築基準法には、接道義務というものがあり、都市計画区域内で建物を建築する際においては、原則として建築基準法第42条に定められた幅員4m以上の道路(特定行政庁が幅員6m以上を道路として扱う区域は6m以上)に敷地が2m以上接していないといけない、と決まっています。

この接道義務が定められた理由は、災害の際などに緊急車両が侵入できないといったことからです。

しかし、都心部の昔からある住宅密集地などでは、建築基準法が定められた1950年以前に建てられた物件が多いため、この接道義務を満たしていない物件が多く見られます。

幅員4mに満たない私道にしか面していない建物や、旗竿地などで間口が2m以下の建物などです。

再建築不可物件が建てられた背景

再建築不可物件は、現在の建築基準法が定められた1950年より以前から建っている物件が多いです。

第二次世界大戦前は、半間道路(幅員90㎝)や半間にも満たない道路のようなところに、長屋がたくさん建っていることなどが普通に見られました。

したがって、先ほど述べたように、東京の都心部で、戦争で焼け残ったところなどでは、現在の建築基準法に定められた道路がない場所もたくさんあるのです。

また、建築基準法以前の市街地建築法では、間口は1.8m(一間)以上とされていたため、間口が2m以下の建物も多く存在しています。

つまり、前項4つ目の、接道義務違反の物件が多いということです。

元々は一つの敷地に複数建てられた建物が、それぞれ借地だったため、地主が個別に借地人に売却してしまい、道路に面していない建物や、旗竿地が生まれてしまった、という背景もあります。

さらに、1968年に制定された都市計画法により、それ以前の敷地区分に基づいて建てられた建物が、再建築不可物件に該当してしまうケースも増えました。

実際には、全国における再建築不可物件の物件数は、全体の約6.7%であり、約15件に1件は、再建築不可物件であるということになります。

再建築不可物件を購入するメリット

このような背景で建てられた再建築不可物件は、リスクの多い物件ではありますが、購入するメリットもあります。

それは、以下の3つです。

再建築不可物件を購入するメリット

  • 相場よりも安く購入できる
  • 固定資産税が安くなる
  • 浮いたお金をリフォームに回せる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット1:相場よりも安く購入できる

再建築不可物件を購入する最大のメリットは、相場よりも安く購入できることです。

再建築不可物件には、数多のデメリットがあるため、買い手がつきにくく、その需要が低い分を価格でカバーしているので、近隣地域の同じような物件よりも、地価や物件の資産価値が安く設定されているのです。

再建築不可物件の価格相場は、物件が売却されるタイミングによって振れ幅が変わるものの、近隣地域の同じような物件と比較すると、約1割~5割ほど安い価格となっています。

同じ立地で、同じ敷地面積であっても、1割引から半額で購入できるわけですから、これは大きなメリットと言えるでしょう。

メリット2:固定資産税が安くなる

再建築不可物件は、固定資産税評価額が低いため、固定資産税額も低く設定されていることが多いです。

固定資産税評価額とは、固定資産税の税額計算に使われる基準税額のことです。

固定資産税額は、以下の計算式で決まるため、固定資産税評価額が低く設定されている再建築不可物件は、毎年の固定資産税額を安く抑えられる、ということになります。

固定資産税額の計算方法

固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)

固定資産税評価額は、物件の贈与あるいは相続をする場合の贈与税・相続税を計算する際の基準税額としても使われます。

また、都市計画区域であれば、都市計画税も納めなければなりませんが、これも固定資産税評価額を基準にして計算される(基本的に×0.3%)ため、固定資産税評価額が安ければ安いほど、都市計画税も安くなるわけです。

したがって、再建築不可物件を購入した場合、普通の物件を購入した場合と比べると、物件の維持存続や贈与・相続にかかる税額を、かなり安く抑えることができるのです。

メリット3:浮いたお金をリフォームに回せる

再建築不可物件は、全面的な建て替え(新築)や、大掛かりな増改築はできないものの、一定範囲内でのリフォームは可能です。

基本的に、「建築確認申請」が不要な工事のみであれば、リフォームできます。

建築確認申請とは、建物を新たに建てたり、大規模な改修をしたりする際に、建築計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを、自治体の建築確認検査機関に対して確認を受ける手続きのことです。

建築確認申請が不要なリフォームには、以下のようなものが挙げられます。

建築確認申請が不要なリフォーム

  • 水回りの入れ替え
  • 壁や床の張り替え
  • 10平米以内の増築
  • 主要構造部(基礎や土台、壁、柱、屋根、階段など)の2分の1未満の修繕

したがって、再建築不可物件を安く購入して、その浮いたお金でリフォームすれば、近隣地域の同様な物件を新築で購入するよりも、はるかにお得にきれいな一戸建てに住めるということになります。

再建築不可物件を購入するデメリット

再建築不可物件を購入する際のデメリットは数多くありますが、主なものは以下の5つです。

再建築不可物件を購入するデメリット

  • 建て替えできない
  • 地質調査が難しい
  • 住宅ローンの審査が通りにくい
  • 緊急時に救助が遅れやすい
  • 売却時に買い手がつきにくい

それぞれ注意して見ていきましょう。

デメリット1:建て替えできない

建て替え(新築)ができないことは、やはり再建築不可物件の最大のデメリットと言えるでしょう。

家を取り壊して新たに建てるといった自主的なケースだけでなく、老朽化による倒壊や、地震や火災、台風など予期せぬ災害による倒壊・焼失などといったケースにおいても、再建築は認められません。

災害リスクは、耐震補強などによってある程度軽減されるかもしれませんが、被害の可能性をゼロにすることはできないでしょう。

たとえ建物が全壊しても、そもそも広い道に面していないことなどから、駐車場にするなど土地の活用方法がない場合も多いです。

また、大規模な修繕や増築・改築もできないため、部屋数を増やしたり、階を増したりなどの大きなリフォームはできません。

リフォームする場合でも、広い道に面していないと、機材や部材の搬入が大変になるので、工事費用もかさんでしまいます。

デメリット2:地質調査が難しい

接道義務を満たしていない土地は、ほとんどが道路から見て奥まった位置にあるため、敷地の使い方に余裕がないケースが多くなっています。

地面がむき出しになっている部分が少ない場合、地質調査が難しくなってしまうということが言えます。

地質調査が難しいということは、建物重量が増す耐震・耐火補強などのリフォームができない可能性もあるということです。

こういった場合、災害リスクが上がってしまうので、注意が必要です。

デメリット3:住宅ローンの審査が通りにくい

再建築不可物件は、購入する際に住宅ローンの審査が通りにくいこともデメリットの一つです。

再建築不可物件は、資産価値が低いため、担保としての価値も低くなってしまいます。

そのため、物件そのものを担保として借入する住宅ローンは、審査のハードルが通常よりも高くなると言えるでしょう。

また、そもそも再建築不可物件においては住宅ローンを認めていない金融機関も多いです。

したがって、再建築不可物件を購入する場合は、現金一括払いで購入する必要があります。

一般的な物件と比べて、再建築不可物件は価格が安いとはいえ、現金一括払いは負担が大きいでしょう。

デメリット4:緊急時に救助が遅れやすい

再建築不可物件は、そのほとんどが接道義務を果たしていない物件です。

つまり、広い道に面していないか、間口が狭いため、緊急時に消防車や救急車が入りにくいというデメリットがあります。

特に、路地の奥や袋地にある物件は、緊急時に救助が遅れやすいと言えるでしょう。

住宅が密集しているため、火災による延焼も起きやすく、特に都心部では、木造住宅密集地域に首都直下地震による火災被害が想定され、不燃化特区制度などの特例も設けられています。

再建築不可物件を購入する際には、こうしたデメリットも考慮しましょう。

デメリット5:売却時に買い手がつきにくい

購入した再建築不可物件を売却したくなった時、買い手がつきにくいという点も大きなデメリットでしょう。

個人の買主は、その7割が新築物件を求めています。

そのため、新築ができない再建築不可物件は、たとえ価格を半値くらいに設定したとしても、新築物件を求めている買い手に売却することができません。

購入時に住宅ローンが使いにくいことも、売却時のデメリットにつながる点です。

再建築不可物件の買い手は、既存の建物部分で満足していて、なおかつ現金一括払いで購入できる人に限定されてしまうので、売却したくても買い手が見つかりにくいと言えます。

再建築不可物件をリフォームすることはできる?

再建築不可物件は、全面的に建物を取り壊して新築することはできませんが、リフォームやリノベーションは可能です。

ただし、基本的には、建築確認申請が不要なリフォームのみ可能となります。

以下に、建築確認申請が必要なリフォームと不要なリフォーム、さらに再建築不可物件でもフルリフォームが可能な場合を解説していきます。

建築確認申請が必要なリフォームとは

建築確認申請が必要なリフォームとは、以下の4つです。

建築確認申請が必要なリフォーム

  • 増築
  • 改築
  • 大規模な修繕
  • 大規模な模様替え

それぞれ詳しく解説いたします。

増築

増築とは、建築基準法において、今ある建物を建て増しすること、建物がある土地に新たに建物を建てることを含めます。

再建築不可物件がある地域が防火地域・準防火地域に当たる場合は、増築にあたっては建築確認申請が必要です。

それ以外の地域においては、10平米を超える増築で建築確認申請が必要になります。

改築

改築とは、建築基準法において、建物の全部または一部を撤去或いは災害で失った場合に、同様の用途、構造、規模の建物を建て替えることを指します。

改築も、増築と同じ扱いで、再建築不可物件がある地域が防火地域・準防火地域にあたる場合は建築確認申請が必要になり、それ以外の地域においては、10平米までは不要です。

大規模な修繕

建築基準法における修繕とは、経年劣化した部分を、同じ材料や形状、寸法のものを使って原状回復を行うことです。

壁・柱・床・梁・屋根・階段などの主要構造部の2分の1を超える修繕が、大規模な修繕にあたり、建築確認申請が必要になります。

大規模な模様替え

建築基準法における模様替えとは、構造や規模、機能の同一性を損なわない範囲での、性能の向上を目的とする改造のことを言います。

壁・柱・床・梁・屋根・階段などの主要構造部の2分の1を超える模様替えが、大規模な模様替えに当たり、建築確認申請が必要になります。

建築確認申請が不要なリフォームとは

一方、建築確認申請が不要なリフォームとは、以下の4つです。

建築確認申請が不要なリフォーム

  • 水回りの入れ替え
  • 壁や床の張り替え
  • 10平米以内の増築
  • 主要構造部(基礎や土台、壁、柱、屋根、階段など)の2分の1未満の修繕

それぞれ詳しく見ていきましょう。

水回りの入れ替え

キッチンや浴室、トイレなどの水回りの入れ替え(リフォーム)は、建築確認申請が不要なため、キッチンをシステムキッチンにしたり、対面式にしたり、浴室やトイレを全面的に改装することも可能です。

壁・天井・床の張り替え

再建築不可物件でも、柱と梁を残せば、床・天井・壁をすべて取り壊す「スケルトンリノベーション」が可能になります。

木造住宅の場合、建物の構造を変えなければ、改築とはみなされず、建築確認申請が必要ありません。

したがって、床・天井・壁すべてを新しくできるため、間取りを変えることもできるほか、外観も内装も新築同様にすることが可能です。

また、建物を構造部だけにすることにより、柱や梁などの主要な構造部の状態を確認することができ、さらに補強することまで可能になります。

10平米以内の増築

防火地域・準防火地域に指定されていない地域にある建物であれば、建築確認申請が不要なため、10平米以内の増築が可能です。

ただし、建物が防火地域・準防火地域に当たるエリアにある場合は、増築できません。

東京都内は全域が防火地域あるいは準防火地域に指定されているため、増築は不可能です。

主要構造部の2分の1未満の修繕や模様替え

主要構造部にあたる柱や梁でも、2分の1未満であれば、修繕や模様替えが可能です。

たとえば、建物全体で20本の柱がある場合は、10本までは新しいものに取り換えることができるということになります。

再建築不可物件は築年数が古い物件が多く、柱や梁などの主要構造部分が老朽化していることも多いですが、それぞれ2分の1までであれば、新しいものに取り換えて、耐久性や耐震性を高めることが可能です。

一般的な戸建て住宅であれば大規模なリフォームも可能

再建築不可物件でも、フルリフォームが可能な場合があります。

それは、その建物が「4号建築物」にあたる場合です。

4号建築物とは、木造の戸建て住宅であれば、延床面積500㎡以下、2階建て以下、高さ13m以下、軒の高さ9m以下の建物であり、木造以外の住宅であれば、延床面積200㎡以下、平屋の建物を言います。

4号建築物であれば、大規模な修繕や模様替えをすることになっても、建築確認申請が不要である、という決まりがあるのです。

一般的な再建築不可物件にあたる戸建て住宅は、たいていこれに該当するので、そうであれば、大規模なフルリフォームも可能になるというわけです。

再建築不可物件を再建築可能にする方法

再建築不可物件といっても、再建築を可能にする方法がないわけではありません。

再建築可能にする方法は、以下の3つです。

再建築不可物件を再建築可能にする方法

  • 隣地を購入する
  • セットバックをする
  • 43条但し書き許可を申請する

それぞれ見ていきましょう。

方法1:隣地を購入する

一番シンプルな方法は、隣接地を購入して、接道部分の敷地を広げたり、広い道路に接道させたりするものです。

あるいは、隣接地を借入する、一部だけ分筆してもらう、などの方法もあります。

方法2:セットバックをする

セットバックとは、建物の一部を後ろに下げ、前面道路の道幅を確保する方法です。

「接道してはいるものの、前面道路の幅員が4m未満である」といった場合に、道路に面した土地から少し後ろに下げて建物を建てることで、前面道路の幅員を4m以上にし、接道義務を満たせるようになるケースもあります。

方法3:43条但し書き許可を申請する

43条但し書き許可を申請するとは、敷地に面した道路(土地)を、建築基準法第43条の但し書き道路として申請し、許可を得ることです。

43条但し書き道路とは、以下の3つの条件が満たされれば、道路として認められるものです。

43条但し書き道路にするための条件

  • 敷地の周囲に空き地や公園、緑地がある
  • 特定行政庁(自治体に設置されている建築主事がいる組織)に安全性や防火性が認められている
  • 建築審査会の同意を得ている

その土地が、道路として認められれば、接道義務を果たしていることになり、再建築可能になるというわけです。

ただし、43条但し書き許可を得るのは、簡単なことではありません。

安全性や防火性が認められるためには、いくつもの条件をクリアする必要があるからです。

そのため、この方法は、1に該当する以外は、手間と時間ばかりかかり、現実的ではないと言えるでしょう。

再建築不可物件を建築可能にするのはハードルが高い!所有し続けることが難しいなら売却を検討しよう!

ここまで、再建築不可物件の定義と建てられた背景から、購入する際のメリット・デメリット、再建築不可物件をリフォームまたは再建築可能にするには、といったことをお伝えしてきました。

再建築不可物件は、安く購入できるとはいえ、リフォームや再建築可能にするために、お金や手間がかかります。

せっかく購入しても、活用できずに持て余している方も多いのではないでしょうか。

再建築不可物件を所有し続けるのが難しいなら、売却を検討することをおすすめします。

ただし、一般的な不動産仲介業者では、たいてい扱ってくれないので、再建築不可物件専門の買取業者に依頼するといいでしょう。

再建築不可物件専門の買取業者なら、その物件の価値をしっかり見極めてくれ、適正な価格で買い取ってくれます。

持て余している再建築不可物件がおありの方は、一度専門の買取業者に相談してみてはいかがでしょうか。

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