ゴミ屋敷は相続放棄すべき?ゴミを片付けずに手放す方法も解説
自分が相続人になっている遺産の中にゴミ屋敷が含まれている場合には、どのように対処すれば一番良いのでしょうか?
たとえば、相続人が自分一人だけで、外観はゴミ屋敷であったとしても、家自体は居住できるレベルで立地条件も良いのであれば、相続してゴミを片付けて自分で住むことができます。
しかし、自分がすでに自宅を持っている場合には、ゴミ屋敷を片付けたり、固定資産税や管理義務を負ったりすることは負担となります。
また、自分以外にも複数の相続人がいて、かつ家自体も老朽化していて居住することはできないという場合もあり、このような状況で相続すると共有不動産となり、固定資産税や管理義務の負担が増えますし、その負担をどう分担するかでトラブルになったりします。
このようなことから、ゴミ屋敷を相続するかどうかは慎重に判断する必要があり、一つの対応策として「相続放棄」することが考えられます。
そこで今回は、ゴミ屋敷を相続放棄する判断基準、ゴミ屋敷を相続放棄するメリットとデメリット、ゴミ屋敷の片づけと管理義務と同時に手放す方法などについて詳しく解説します。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. ゴミ屋敷は相続放棄すべき?判断基準は?
- 2. ゴミ屋敷を相続放棄するメリット
- 2.1. メリット1:相続税を払う必要がなくなる
- 2.2. メリット2:借金などのマイナスの遺産を相続せずに済む
- 3. ゴミ屋敷を相続放棄するデメリット
- 3.1. デメリット1:プラスの遺産も相続できない
- 3.2. デメリット2:管理義務が残るケースがある
- 3.3. デメリット3:他の相続人に迷惑がかかる可能性がある
- 3.4. デメリット4:3ヶ月以内に申請をする必要がある
- 3.5. デメリット5:遺品の処分や形見分けはできない
- 4. 相続放棄をしても管理義務が残るケースとは?
- 5. ゴミ屋敷を片付けず、管理義務と同時に手放す方法
- 5.1. 【1】相続放棄をして相続財産管理人を選任する
- 5.1.1. 相続財産管理人の選任には費用がかかる
- 5.2. 【2】訳あり物件専門の買取業者に買い取ってもらう
- 5.2.1. 一般的な不動産会社ではゴミ屋敷を買い取ってもらえない
- 5.2.2. 清掃業者に依頼してゴミを片付けると100万円以上かかることも
- 6. ゴミ屋敷は相続をしてから訳あり物件専門の買取業者に売却するのがベター!
ゴミ屋敷は相続放棄すべき?判断基準は?
「相続放棄」という手続きを家庭裁判所に申し立てることによって、ゴミ屋敷の相続を免れることができます。
しかし、他の預貯金や有価証券などのプラスの遺産を相続することもできなくなりますので、被相続人に多くのプラスの遺産があるような場合には望ましい方法ではありません。
また、ゴミ屋敷を「相続放棄」したとしても、ゴミ屋敷の管理義務が残ることがありますので、これも好ましくありません。
したがって、最も望ましい方法は、プラスの財産も相続することができて、かつ管理義務が残らないような方法だと考えられます。
ゴミ屋敷を相続放棄するメリット
まず、ゴミ屋敷を「相続放棄」することのメリットは、次の2つです。
ゴミ屋敷を相続放棄するメリット
- メリット1:相続税を払う必要がなくなる
- メリット2:借金などのマイナスの遺産を相続せずに済む
以下、順に説明します。
メリット1:相続税を払う必要がなくなる
ゴミ屋敷を「相続放棄」すると、そもそも相続人ではなかったことになりますので、相続税を納める必要がなくなります。
メリット2:借金などのマイナスの遺産を相続せずに済む
ゴミ屋敷を「相続放棄」すると、被相続人のすべての遺産の相続ができなくなります。
もし、被相続人の遺産が不動産や現金などのプラスの遺産よりも借金や負債などのマイナスの遺産の方が多かった場合には、マイナスの遺産を相続しなくて済みます。
ゴミ屋敷を相続放棄するデメリット
次に、ゴミ屋敷を「相続放棄」することのメリットは、次の5つです。
ゴミ屋敷を相続放棄するデメリット
- デメリット1:プラスの遺産も相続できない
- デメリット2:管理義務が残るケースがある
- デメリット3:他の相続人に迷惑がかかる可能性がある
- デメリット4:3ヶ月以内に申請をする必要がある
- デメリット5:遺品の処分や形見分けはできない
以下、順に詳しく説明します。
デメリット1:プラスの遺産も相続できない
ゴミ屋敷を「相続放棄」すると、被相続人のすべての遺産の相続ができなくなりますので、被相続人の現金や有価証券などのプラスの遺産も相続することができなくなってしまいます。
つまり、ゴミ屋敷だけを「相続放棄」することはできないということで、他の不動産や預貯金、有価証券なども相続できなくなるということです。
デメリット2:管理義務が残るケースがある
ゴミ屋敷を「相続放棄」しても、相続人が自分一人の場合や相続人全員が「相続放棄」した場合は、管理義務が残るケースがあります。
ゴミ屋敷以外のプラスの財産も相続できないうえに、管理義務が残ってしまうケースもあり得るということです。
デメリット3:他の相続人に迷惑がかかる可能性がある
自分が「相続放棄」した場合に、「相続放棄」せずにゴミ屋敷を相続した他の相続人がゴミ屋敷の管理義務や固定資産税の納税義務を負うことになります。
もちろん、他の相続人にも「相続放棄」を選択することはできたわけですから、必ずしも自分の責任ではありませんが、結果的に他の相続人に迷惑をかけたということになってしまいます。
デメリット4:3ヶ月以内に申請をする必要がある
「相続放棄」は、被相続人が亡くなって相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。
もし、3ヶ月以内に「相続放棄」の手続きを行わなかった場合は、自動的に「単純承認」を選択したものとみなされます。
「単純承認」とは、被相続人のすべての遺産を引き継ぐというものですので、被相続人に多額の負債や借金があった場合は、ゴミ屋敷とともにそのマイナスの遺産も相続することになります。
デメリット5:遺品の処分や形見分けはできない
「相続放棄」とは、被相続人の権利や義務をすべて放棄するということですので、財産の一部である遺品を「処分」することはできません。
「相続放棄」の手続きをする前に、遺品を「処分」してしまうと、相続する意志があるとみなされて「相続放棄」ができなくなってしまいます。
基本的に、被相続人の部屋の中にあるものを勝手に「処分」することはできませんが、経済的価値がないものの形見分けは「処分」には当たらないと判断されます。
しかし、経済的価値があるかないかの判断自体が難しいものですので、「相続放棄」を考えている場合は、事前に弁護士などの専門家に相談をすることをおすすめします。
相続放棄をしても管理義務が残るケースとは?
ゴミ屋敷を「相続放棄」するデメリットの中にも挙げましたが、「相続放棄」しても管理義務が残る場合があります。
この管理義務については、2023年3月までの旧民法では誰に管理義務があるのかが明確になっていないという問題がありましたが、2023年4月に改正された民法では「相続放棄」した時点で相続財産を現に占有していた相続人に管理義務があるということが明確になりました。
つまり、「相続放棄」をした時点で、自分がそのゴミ屋敷を占有していたかどうかによって管理義務の有無が決まるということです。
たとえば、自分が被相続人と一緒にゴミ屋敷に住んでいて、被相続人が亡くなった後に「相続放棄」をした時点でもゴミ屋敷に住み続けていた場合には管理義務が残ります。
しかし、ゴミ屋敷に住んでいたこともなく、「相続放棄」をした時点でもゴミ屋敷に住んでいなければ管理義務は残りません。
ただし、自分が「相続放棄」した時点でゴミ屋敷に住んでいた場合でも、自分以外の相続人がゴミ屋敷を相続するのであれば、管理義務は相続した人に移りますので、自分には管理義務は残りません。
ゴミ屋敷を片付けず、管理義務と同時に手放す方法
ゴミ屋敷を相続することになったときに、手放す方法として「相続放棄」がありますが、プラスの遺産が相続できなかったり、「相続放棄」しても管理義務が残ったりすることがあります。
そこで、ゴミ屋敷を片付けることもなく、管理義務も負う必要もなく手放す方法として、次の2つを挙げることができます。
ゴミ屋敷を片付けたり、管理義務も負うことなく手放す方法
- 【1】相続放棄をして相続財産管理人を選任する
- 【2】訳あり物件専門の買取業者に買い取ってもらう
以下では、それぞれについて詳しく説明します。
【1】相続放棄をして相続財産管理人を選任する
「相続放棄」をした時点で、自分がそのゴミ屋敷を占有していた場合には管理義務が残ってしまいますが、相続財産管理人を選任すると管理義務は相続財産管理人に移ります。
つまり、相続財産管理人を選任することによって、ゴミ屋敷もその管理義務も手放すことができます。
ただし、相続財産管理人が選任されて管理義務を行えるようになるまでの期間は、自分に管理義務が残ります。
相続財産管理人の選任には費用がかかる
相続財産管理人を選任するためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。
申し立てをするためには、収入印紙800円、連絡用の郵便切手代数1000円程度、官報公告料5057円、および予納金として20~100万円程度が必要となります。
予納金の金額は家庭裁判所が算出しますが、相続財産管理人の報酬と相続財産管理人が業務を行うために必要な費用などです。
なお、相続財産管理人の業務が終了した時点で余っている予納金は返還されます。
【2】訳あり物件専門の買取業者に買い取ってもらう
ゴミ屋敷を相続したうえで、訳あり物件専門の買取業者に買い取ってもらうという方法があります。
訳あり物件専門の買取業者であれば、ゴミ屋敷の状態によらず現状のままで、1週間~1ヶ月程度の短期間で買い取ってくれますし、当然管理義務もなくなります。
また、通常の不動産売買では売主は「契約不適合責任」を負うことになりますが、訳あり物件専門の買取業者の場合は、特約によって「契約不適合責任」が免責されるのが一般的です。
ゴミ屋敷を現状のままで買い取ってくれますので、ゴミの片付けなどの費用はかかりませんが、買取価格がかなり安くなってしまうことが唯一のデメリットといえるでしょう。
一般的な不動産会社ではゴミ屋敷を買い取ってもらえない
ゴミ屋敷のような訳あり物件を買い取ってくれる専門の買取業者には、買い取った後に片づけをしてリフォームし再販するノウハウがありますので、現状のままで買い取ってくれます。
しかし、そのようなノウハウを持っていない一般的な不動産会社ではゴミ屋敷を買い取ってくれません。
清掃業者に依頼してゴミを片付けると100万円以上かかることも
ゴミ屋敷の清掃の一般的な相場は、数万円〜数10万円といわれています。
このようにごみ屋敷の片付けの費用の相場に大きな幅があるのは、ゴミ屋敷の大きさとゴミの量の違いによります。
ですから、大きなゴミ屋敷でゴミの量が非常に多い場合は、100万円以上の費用がかかることも考えられるということです。
ゴミ屋敷は相続をしてから訳あり物件専門の買取業者に売却するのがベター!
この記事では、ゴミ屋敷を「相続放棄」する判断基準、「相続放棄」するメリットとデメリット、ゴミ屋敷の管理義務が残る場合に片づけと管理義務と同時に手放す方法などについて解説しました。
ゴミ屋敷を相続しないために「相続放棄」をするという選択肢もありますが、逆に相続をしたうえで訳あり物件専門の買取業者に売却してしまうという選択肢もあります。
訳あり物件専門の買取業者に売却すれば、売却代金が得られますし管理義務もなくなってしまいますので、非常に望ましい方法だと言うことができるでしょう。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。