住まない空き家は相続してはいけない3つの理由。手放す方法も徹底解説

最近では、肉親の逝去にともない、それまで存在を知らなかったような建物を相続する機会が増えています。

無料で不動産が手に入ることをメリットと捉える向きもあるかも知れません。

しかしながら、利用しない不動産とはメリットだけではなく多くのリスクを抱えているのです。

もし何も知らずに実家だったから思い入れもあるからと空き家を相続した場合、さまざまな費用負担に関わる恐れが生じます。

そこで今回は、そもそも空き家を相続しない相続放棄などの方法や、所有してしまった空き家を売却や寄付などによって処分する方法について、多角的に解説します。

もし、自分が必要のない空き家を相続などにより手にしてしまった場合、今後実家の相続が行われる可能性がある場合などに、本記事の空き家処分方法を参考にしてみてください。

住まない実家は相続してはいけない3つの理由

相続により、自らが所有することになる実家などの空き家について、もし相続を回避できるのであれば回避すべきであるというのが実情です。

それは空き家の持ち主に対して、空き家とは以下のようなリスクをもたらすためです。

空き家を持ち続けるリスク

  • 相続税がかかる
  • 固定資産税がかかる
  • 維持管理費がかかる

そこで、以下からは「自分が住むことのない実家などを相続しないほうがよい理由」について、詳しく解説します。

理由1:相続税がかかる

「絶対に住むことがない」と予測される実家について、もし遺産相続により所有してしまうことで、相続人に対して相続税が課せられます。

つまり、相続人にとって利益にならない物件の所有者になった上に、自己の資産からマイナスが生じるのです。

一方、相続税とは発生しないこともあります。

それは相続税としての課税対象となる遺産の総額が、基礎控除額を上回らなかった場合です。

課税対象となる遺産の総額、つまり課税価格の合計額とは、以下の3ステップを経て求められます。

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STEP

課税対象となる遺産の価格を算出

被相続人の遺産、生前贈与を受けた財産や生命保険金などを合計する。

課税対象の例

  • 被相続人が亡くなった時点で所有していた遺産(例:土地や建物、有価証券、預貯金、現金のほか、金銭に換算できるすべての財産)
  • みなし相続財産(例:被相続人の死亡に伴って支払われる「生命保険金」や「退職金」) ※生命保険金・退職金について、500万円×法定相続人の数×その相続人の取得した保険金などの合計額÷相続人全員が取得した保険金の合計額までは非課税
  • 被相続人から取得した「相続時精算課税適用財産」(例:被相続人から生前に贈与を受け、贈与税の申告の際に相続時精算課税を適用している財産)
  • 被相続人から「相続開始前3年以内」に取得した暦年課税適用財産:被相続人が亡くなる以前の「3年以内」に被相続人から贈与された財産

非課税対象の例

  • 債務:借金、未払い税金など
  • 葬式費用:寺社や葬儀社などへの支払い、通夜費用など

※墓地や墓碑などの購入費用、香典返しの費用や法要に要した費用は含まれない。

STEP

財産価格(被相続人の死亡日時点)の計算をする

「財産評価基本通達」をもとに計上。

財産価格の計算例

  • 宅地:路線価(道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価値)で評価。路線価が定められていない地域は倍率方式(固定資産評価額に一定の倍率を掛ける方法)で計算
  • 建物:固定資産税評価額を参照して評価
  • 上場株式:「相続開始日の終値」「相続開始月の毎日の終値の月平均額」「相続開始月の前月の毎日の終値の月平均額」「相続開始月の前々月の毎日の終値の月平均額」の4つの価額の中で最も低い価額での評価
  • 預貯金:被相続人が亡くなった日の残高で評価

STEP

課税される遺産の総額を計算する

課税遺産総額=課税価額合計-基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)

理由2:固定資産税がかかる

不動産は、所有しているだけで毎年固定資産税が課税されます。

例えば住居の場合、誰も住んでいなくても毎年一定の費用がかかるということになるのです。

固定資産税の額とは、以下のように市区町村が定める「固定資産税評価額」に、決められた税率を掛け合わせて算出されます。

固定資産税の算出方法

固定資産税額=固定資産税評価額×税率(1.4%)

標準税率は1.4%であり、自治体によって税率が異なる場合があります。

固定資産税評価額とは、3年に一度更新されます。

更新の根拠として、「土地の公示価格」や「建物の時価額」が自治体によって参照されます。

当該空き家が新しく建設された駅から近かったり、敷地面積が広いというような不動産であれば、次回の固定資産税評価額の更新時には評価額が高まり、固定資産税も高額になってしまうかもしれません。

また固定資産税だけでなく、制限税率0.3%である都市計画税が課せられることもあります。

都市計画税が課せられる対象の不動産とは、「市街化区域内」にある不動産です。

このように、不動産とは一切利用していなくても毎年必ず固定資産税による支出をもたらしてしまいます。

固定資産税は、1月1日時点で当該不動産を所有している方に課税されます。

理由3:維持管理費がかかる

空き家であっても、維持のために管理費用が発生します。

維持管理費用とは、例えば以下の通りです。

空き家の維持管理費用の種類

  • 水道代
  • 電気代
  • 草刈り代
  • 土留め費用
  • 柵の設置費用

相続した空き家が所有者の自宅から離れている場合、維持管理のための遠征費用つまり交通費も発生し、自己負担となります。

それだけでなく、特に報酬なども発生しない時間的コストも同時に発生してしまうのです。

家屋の維持管理を業者に代行すれば、時間的コストは省かれるものの、月額費用などが新たに発生します。

さらに長い間手入れされていなかった建物であったりする場合などは、月額費用だけでなく、別途特別料金が請求されることもあるのです。

こうした「利用していない空き家」の維持管理が面倒だからといって対応をせず、放置してしまうと、空き家はさらに劣悪な状態となり、いざという時などに売却できなくなることがあります。

さらに、放火や不法投棄、反社会集団のアジトとして利用されたり、空き家の管理不足による不始末が近隣住民とのトラブルを喚起することもあるのです。

また空き家の管理不足が起因してほぼ確実に起こることとして、以下のような「特定空き家に指定されるリスク」があります。

維持管理を怠った場合、特定空き家に指定されることも

管理が行き届いていない空き家とは、自治体から「特定空き家」に指定されることがあります。

特定空き家に指定されると、「住宅用地の特例」が適用されなくなり、税金の軽減措置がなくなります。

この固定資産税の減税措置がない状態とは、更地を所有しているのと同じことであり、さまざまなリスクを抱えつつさらに増額した固定資産税を支払わなければなりません。

住居の固定資産税とは、軽減措置を受けることで土地分の税額が1/3または1/6になります。

しかしながら、固定資産税額が更地と同じになるということは税額は3倍ないし6倍になることを意味します。

さらに、特定空き家の指定を受けることで「勧告」も行われるのです。

この勧告に従わず空き家の管理を怠り、放置を続けた場合は、行政代執行により強制的に空き家が解体されることがあります。

そして、行政代執行による空き家の解体費用は所有者が支払うことになります。

このように、空き家とは放置することによりさまざまな金銭的リスクが起こりうるのです。

住まない実家を相続すると負担が大きい!相続前に手放すのがベター

建物とは、維持管理のために相応の手間をかけなければ負の遺産として所有者にさまざまなリスクを及ぼします。

このため、絶対に利用しないことが予想される不動産について、将来的に相続しなければならないことが事前に判明したのであれば、なんらかの方法で自分の所有物とならないように手回しをしておくことが理想です。

そこで以下からは、空き家を手放す方法として、売却や寄付、相続放棄といった方法も含めたさまざまな手段について解説します。

空き家の維持管理に困ったときにはぜひ、自分に適した空き家の処分方法を試してみてください。

住まない実家を手放す方法

利用する予定がない実家なのであれば、相続しないで手放し、自分の持ち物とはしてしまわないようにすることであらゆるリスクから解放されます。

住むことのない実家を手放す方法とは、以下の通りです。

住まない実家を手放す方法

  • 売却する
  • 寄付する
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する
  • 相続放棄する

さらに以下からは、住まない実家を手放す各種方法について、より詳しく解説します。

手放す方法1:売却する

不動産の処分方法として、売却を行えば所有者が変わるため維持管理の義務、費用負担から解放されます。

不動産の売却とは、そのまま「中古住宅として売り出す」という方法や、「建物を解体して更地として売り出す」といった方法が考えられます。

さらに以下のように売却先として、一般的な不動産仲介業者に買い手を探してもらう方法や、訳あり物件専門の買取業者に売り渡す方法が存在するのです。

一般仲介で売却する

一般的な不動産仲介業者に、不要な空き家を中古住宅として売る方法は多少手間がかかります。

空き家が管理不足であったりした場合は、内装や庭の手入れなどメンテナンスが要求され、相応の費用が発生することがあるのです。

あるいは、建物を解体し、更地として売却先を探す方法もあります。

建物更地化による売却においては、建物解体のための費用負担が所有者に発生するのです。

一般的に30坪の木造家屋の解体費用が、90万円前後とされています。

この解体費用は建物の構造によって異なるため、建物の構造が木造ではなく鉄骨造り、鉄筋コンクリート造りとなっていくにつれて一坪あたりの単価が上昇するため、最終的な解体費用が木造の1.15倍~1.75倍と高まることになります。

中古住宅市場においては、古い宅地が建っているよりも更地状態の物件において売却可能性が高いともされているため、不動産仲介業者に利用しない空き家の売却を依頼する場合、持ち主は高い解体費用の負担を余儀なくされることになるかも知れません。

専門の買取業者に売却する

自分が住まない空き家、相続する空き家とは管理不足なことが多く、将来的なリスクを抱えているものです。

そうしたリスクを解消しない限り、一般的な不動産仲介の市場では売りづらい可能性があります。

このように空き家について売却により手放す算段が立てづらい場合は、「訳あり物件専門の買取業者」に相談することを検討してみてください。

訳あり物件専門の買取業者とは、管理が行き届いていない空き家のようなリスクがある物件や、通常の不動産会社にとって売却の芽がなく取り扱おうとはしないような物件でもそのまま買い取りに応じます。

こうした訳あり物件であっても専門の不動産買取業者が買い取りに応じる理由は、当該業者とは取り扱いが困難な物件であっても活用し、将来的に収益化させるために必要な知識やノウハウを持ちあわせているためです。

さらには取り扱い困難な物件であっても、将来的な再利用の可能性が得られた際に活用できる可能性が高い顧客リストなども訳あり物件専門の業者は所有しています。

こうした買取業者とは、無料で相談に応じ、スピード感を持って見積もりを提示、見分に応じることが多いため、まずは気軽に相談してみることを勧めます。

手放す方法2:寄付する

所有し続けるのが難しい空き家について、売却での処分が進めづらい場合は「寄付」での処分ができる可能性があります。

寄付によって手放す場合でも、不動産を所有し続けることで発生する固定資産税や維持管理費といった支出から解放されます。

不動産の寄付が行える団体として、以下が挙げられます。

不動産の寄付が行える団体

  • 自治体、または町内会など認可地縁団体:自治体や認可地縁団体は、土地の活用方法(県外の若者にとって移住先として魅力的な住居開拓といった自らにとってのメリット)が見いだせない場合は断ることがある点に注意
  • 個人:隣地の所有者などであれば、単純に土地面積が増えメリットがある(寄付先には贈与税の課税がある点に注意)
  • 法人:条件の悪い土地でも工場や資材置き場といった事業用途、社員の保養施設といった活用可能(寄付後の贈与税は経費として扱えるメリットもあり)

手放す方法3:相続土地国庫帰属制度を利用する

不動産とは土地でもあるため、国に「返却」することが可能です。

土地の相続登記が2024年4月1日から義務化されることにともない、「相続によって取得した不要な土地を国庫に帰属」させることができる「相続土地国庫帰属法」が2023年4月27日から施行されました。

本法の成立前までは、「土地所有権」を放棄することができませんでした。

相続土地国庫帰属制度を利用するためには、審査手数料と10年分の土地管理費用の負担が必要です。

しかしながら、必要のない空き家に関するさまざまなデメリットから解放される手段としては持ち主にとって有利といえます。

一方、相続土地国庫帰属制度の利用にあたってはさまざまな要件をクリアする必要があります。

申請をすることができないケース(法第2条第3項)

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

承認を受けることができないケース(法第5条第1項)

  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理するために過剰な費用・労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分を行うために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟を通さなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

相続土地国庫帰属制度を利用する際は、上記適用要件に気をつけて申請し、承認を受けてください。

また本制度は開始されて間もないため、各要件について今後、担当者ごとに解釈の違いが生じる可能性があるため注意してください。

例えば適用要件における「過分な費用、労力がかかる~」という表記が、どれほどの数値を意味するのか、などです。

手放す方法4:相続放棄する

そもそも使いみちのない実家について、所有しない方法が存在します。

それが相続放棄であり、相続放棄を行うと、被相続人の債務など「マイナス財産」についても一切相続しなくてよくなります。

このため相続放棄とは、被相続人の負債が多い場合、一番はじめに検討すべき手段といえるのです。

相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に行わなければならず、手順は以下の通りです。

STEP1:「相続放棄申述書」「被相続人の住民票除票または戸籍附票」「申述人の戸籍謄本」を家庭裁判所に提出
費用:収入印紙代800円、郵便切手代数百~1,000円程度、必要書類の交付手数料として数千円、弁護士や司法書士への依頼がある場合は報酬費用に3~5万円程度
STEP2:書類提出後、1週間から10日ほどで家庭裁判所から送られる「照会書」に申述人の意思と相続放棄に至った経緯を記載し返送
STEP3:照会書返送後、相続放棄が認められた場合、1週間から10日ほどで裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られる

相続放棄する場合に注意するべき3つのこと

利用する予定のない遠方の実家などを相続する可能性がある場合、そもそも相続をしない表明である「相続放棄」を行うことで、不要な不動産の所有に伴うさまざまなリスクから逃れることができます。

しかしながら、相続放棄とは何の下調べもせずに行うべきではありません。

相続放棄を行うと、以下のようなデメリット、あるいは手間なども同時に発生するためです。

相続放棄をするデメリット

  • プラスの遺産も相続できなくなる
  • 3か月以内に手続きを行う必要がある
  • 相続財産管理人を選任する必要がある

そこで以下からは、各種相続放棄に関わる注意点について、より詳しく解説します。

<1>プラスの遺産も相続できなくなる

相続放棄を行うと、本来相続するはずだったすべての資産について相続できなくなります。

つまり実家のような不要な財産だけでなく、被相続人の現金や預貯金、有価証券や動産といった資産価値の高い遺産についても相続不可能となるのです。

もし、何らかの必要な財産がある場合、相続放棄には慎重になるべきといえます。

<2>3か月以内に手続きを行う必要がある

相続放棄とは、「被相続人が亡くなってから」3ヶ月以内に、ではなく「相続人自身のために相続が開始したことを知ったとき」から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申し立てなければ期限切れとなってしまいます。

この要件は、前者のように被相続人の死亡時を相続放棄可能時期としてしまうと、相続人が被相続人の死亡という事実を把握していなかった場合に不利になってしまうために存在します。

また、正当な理由が認められる場合には家庭裁判所にて期間の伸長も可能です。

<3>相続財産管理人を選任する必要がある

もし相続人全員が相続放棄を希望した場合、全員の相続放棄の手続きが終わった際には、家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」を行う必要があります。

本申立てにより、「相続財産の管理・処分」を相続財産管理人に依頼しなければならないのです。

このため、自分の相続放棄が済めば、その後の相続に関する手続きすべてが終了したと思いこむことは危険であるため注意してください。

また、相続財産管理人に「相続財産の管理と処分」を依頼するには、以下費用がかかります。

相続財産管理人に「相続財産の管理と処分」を依頼するための費用

相続財産管理人への相続財産管理・処分依頼費用:数10万円~100万円程度の予納金(最終的に予納金が余った場合、返還される)

※原則として、当費用は相続財産によって充当する
※相続財産管理人が選任される前に、土地管理費などを相続財産で充当してしまうと相続放棄できなくなってしまうため注意

また、自己が相続財産管理人となる場合、実家を含めた相続財産の管理義務が発生し、相続放棄後の実家の管理義務が生じます。

住まない実家は相続する前に売却するのが一番おすすめ!

今回は、住む予定のない実家、空き家について相続を避けるべき理由について解説しました。

空き家とは不動産であるため、所有しているだけで管理義務が発生し、固定資産税など各種費用もかかります。

つまり利用しない不動産とは、所有しているだけで負の遺産となり得るのです。

そこで「利用していない不動産」を手放す方法として、売却や寄付、相続土地国庫帰属制度の利用や相続放棄といった手段があることは事前に押さえておくべきです。

どういった手段であっても、不動産を手放すことができれば所有者が変わり、管理義務や費用負担から解放されます。

相続放棄は手段が複雑であったり、専門家の知恵が必要なこともあります。

また一般的な不動産仲介業者では、使われなくなった不動産とは売却がしづらいこともあります。

もし空き家を持て余してしまう場合は、こうした自分に合った処分方法を探しつつ、訳あり物件専門の買取業者へ相談を持ちかけてみてはいかがでしょうか。

専門の買取業者とはどのような物件でも買い取りに応じ、無料相談やスピード見積り・買い取りなどを打ち出していることも多いためです。

ぜひ本記事を利用して、満足のいく空き家の処分方法を検討してみてください。

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