空き家の相続登記が義務化!相続放棄した場合の管理義務はどうなる?

空き家を相続する際、「相続しなければならないのか?」「相続放棄をした場合でも管理義務は残るのか?」など、わからないことが多く困っている方もいるのではないでしょうか。

特に2024年4月の法改正によって、相続登記が義務化されることから、対応を怠ると罰則やリスクが生じる可能性があります。  

この記事では、相続登記義務化の背景や概要を解説するとともに、相続放棄後の管理義務や具体的な対応策についても詳しく説明します。

空き家の相続に関する疑問や不安を解消して、トラブルを未然に防ぐための具体的な対処法を検討してみましょう。

空き家の相続登記義務化とは?

空き家の相続登記義務化とは、相続によって不動産を取得した場合に、その家や土地の名義変更が義務付けられることです。

この改正は、近年問題視されている「所有者不明土地」問題の解決を目指したものです。

これまで任意で行われていた相続登記が義務化されることで、不動産の所有者が明確になり、適正な管理が促進されると期待されています。

法改正の背景と目的

相続登記義務化の法改正が行われた背景には、全国で深刻化している「所有者不明土地」の問題があります。

所有者不明土地とは、登記簿上の所有者が確認できない、または連絡がつかない土地のことです。

国土交通省の調査によれば、令和4年度時点で、日本国内の所有者不明土地は国土全体の約24%を占めており、今後この面積がさらに増加すると予測されています。

所有者不明土地の増加によって土地が適切に管理されないことで、防災や衛生上の問題が発生したり、地域の発展や都市計画が阻害されるといった懸念もあります。

このような社会問題を受け、不動産の所有権を明確にし、空き家や土地の適正な管理を促す法改正が行われることになりました。

これにより、地域社会の課題解決や国土利用の効率化が期待されています。

義務化の概要と適用時期(2024年4月施行)

相続登記の義務化は、2024年4月1日から施行されました。

不動産を相続した場合、3年以内に登記を申請する必要があります。

相続人が複数いる場合も、話し合いを行い、不動産の取得が決まった日から3年以内の相続登記が必要です。

相続登記の申請には、戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類が必要になります。

これらの準備には一定の時間がかかるため、相続が発生したら早めに手続きを進めることが重要です。

登記を怠った場合の罰則とリスク

義務化に伴い、相続登記を行わなかった場合は、法律に基づき罰則が科される可能性があります。

具体的には、正当な理由がなく期限を過ぎると、最大で10万円の罰金が科されることがああります。

また、相続登記の義務化に加えて「住所変更登記」も義務化されることが決まりました。

2026年4月1日から不動産所有者の氏名や住所が変更された場合、2年以内に手続きを行わないと、5万円以下の罰金が科される可能性があります。

登記を怠ると、相続人同士のトラブルや空き家の放置による劣化や、不動産価値の下落といったリスクも高まるため、注意が必要です。

空き家を相続した場合の管理義務

空き家を相続すると、その不動産を所有者として適切に管理する責任が生じます。

管理する義務は法律で規定されており、地域の安全や周囲の環境を守るためにも重要です。

以下では、管理義務の具体的な内容と範囲、さらに管理を怠った場合に生じるペナルティについて解説します。

管理義務の内容と範囲

相続した空き家に課される管理義務の内容は、主に以下のとおりです。

相続した空き家に課される管理義務

  • 管理義務1:建物の安全確保
  • 管理義務2:景観や衛生の維持
  • 管理義務3:定期的な点検と清掃

老朽化が進んだ建物は倒壊の危険性があり、所有者には修繕や補強を行う責任があります。

改善命令を受ける場合もあるため、早期の対応が必要です。

また、敷地内に雑草やゴミを放置すると、害虫の発生や不法投棄を招く可能性があり、これが原因で近隣住民とのトラブルが発生することもあります。

そのため、空き家の状態を定期的に確認し、雨漏りや外壁の劣化などに早めに対処しなくてはなりません。

さらに、不動産には固定資産税がかかるため、所有者は納税が義務付けられています。

空き家の管理義務は、地域社会や隣接する住民との関係を良好に保つだけでなく、空き家の資産価値を維持するためにも不可欠です。

管理を怠った場合のペナルティ

空き家の管理を怠ると、さまざまな問題や罰則が生じる可能性があります。

管理不足による具体的なリスクは、以下のとおりです。

具体的なリスク固定資産税
特定空き家への指定・適切に管理されていない空き家は「特定空き家」に指定されることがある
・指定を受けると、固定資産税の軽減措置が適用されなくなるため、税負担が増加する
行政からの命令や罰則・改善命令に従わないと、自治体による行政代執行が行われることがあり、撤去や修繕費用が所有者に請求される
・放置が長期化すると、過料が科されることもある
近隣住民とのトラブル・安全面や衛生面の問題が原因で、隣人との関係が悪化するリスクがある
・場合によっては訴訟に発展することもある

放置された空き家は周囲に悪影響を与えるだけでなく、所有者自身に大きな負担をもたらすことになります。

相続放棄した空き家の管理義務はどうなる?

相続放棄をすれば空き家の管理義務から解放されると考える方は多いですが、必ずしもそうではありません。

具体的に解説します。

相続放棄後も「現に占有している」者には管理義務が生じる

相続放棄をしても、「現に占有している」場合には管理義務が発生します。

たとえば、相続放棄をした人がその空き家に住んでいた場合、「現に占有している」者として、管理義務が適用されます。

ただし、財産の所有者が新しい人に移った後は、管理義務から免れることができます。

一方で、空き家に居住しておらず、建物の手入れなどに関わっていなければ「現に占有している」とは見なされず、相続放棄後に管理義務は発生しません。

管理義務から保存義務に呼称変更(2023年法改正)

ここまで「管理義務」と呼んできましたが、2023年の法改正により、相続放棄した空き家に関する管理義務は「保存義務」と呼び方が変わりました。

この変更は、相続放棄者が所有権を持たない一方で、最小限の安全性を確保する義務があることを明確化するために、「保存義務」と表現されています。

ただし、「管理義務」から「保存義務」に呼称変更されただけで、実際の意味合いには違いはないと考えられます。

相続放棄した空き家の管理義務を免れるための対処法

相続放棄をしても、「現に占有している」場合には管理義務が生じるため、完全に空き家の管理負担から解放されるわけではありません。

そこで、空き家の管理義務を免れるために考えられる2つの具体的な対処法を解説します。

ほかの相続人に引き継ぐ

自分と同じ相続順位の全員が相続放棄をすると、相続権は次の順位にある人に移ります。

ほかの相続人が空き家の管理に意欲や余裕がある場合、その責任を引き継いでもらうことは有効な方法です。

特に、空き家の維持や活用について具体的な計画がある場合には、スムーズな相続が期待できます。

しかし、管理や費用の負担が伴うため、相続を引き継ぐ側の同意が必要不可欠です。

また、ほかの相続人が相続放棄を連鎖的に行った場合には、占有していた者に管理義務が残ってしまいます。

ほかの相続人に引き継ぐ方法は、相続人間での合意がスムーズに進む場合に効果的ですが、意見が分かれることもあるため、慎重な話し合いが求められます。

相続財産清算人を選任する

空き家の相続を希望する人がいない場合には、家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらう方法があります。

相続財産清算人とは、相続放棄された財産を適切に管理し、最終的に処分するために家庭裁判所が選任する人のことです。

相続財産清算人が空き家の処分や管理を代行するため、相続放棄した人は空き家の管理義務から完全に解放されます。

また、弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースが多く、処分までの流れがスムーズに進むことが期待できます。

ただし、相続財産清算人の選任には費用が発生する点に注意が必要です。

専門家に依頼する場合、報酬や手続きにかかる費用を事前に確認し、納得したうえで進めることが重要です。

相続放棄以外の空き家問題への対処法

空き家問題への対応には相続放棄以外にもさまざまな方法があります。

相続した空き家を放置せず、早期に適切な手段を講じることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

具体的な解決策を5つ紹介します。

空き家を売却する

相続した空き家が利用予定のない場合、まず選択肢として考えられる方法が売却です。

空き家を売却するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・現金化できるため、ほかの相続手続きや生活資金に充てることができる
・売却後は固定資産税の支払い義務がなくなる
・需要が低い地域では売却が難しい場合もあるため、早めの判断が求められる
・売却益に課税される場合もあるため、税金面での確認が必要になる

売却によって現金化すれば、固定資産税や管理コストといった維持費用の負担の軽減が可能です。

まずは不動産会社に相談し、査定を受けた後に売却活動を開始します。

空き家の状態が悪い場合でも、修繕して価値を高めることで高額売却が見込めるケースがあります。

隣家に空き家を贈与する

空き家の立地条件によっては、隣家の住人が土地や建物を活用したいと考えている場合があります。

そのようなケースでは、隣家に贈与する方法が検討できます。

メリットデメリット
・売却活動を行う必要がない
・手続きが比較的簡単
・隣家にとっては、空き家を活用することで土地を広げたり、新たな用途で利用できる
贈与税が課される場合がある

隣家への贈与は、売却や解体以外の柔軟な選択肢として検討する価値があります。

隣人と円満な合意を得たうえで進めることで、双方にとってメリットのある解決策となるでしょう。

自治体に空き家を寄付する

一部の自治体では、空き家を寄付として受け入れる制度があります。

地域の活性化や公共の利益に寄与するため、寄付という形で空き家を手放す方法です。

メリットデメリット
・空き家の維持費用や管理責任が完全になくなる
・放置された空き家が倒壊や老朽化によって周囲に影響を与えるリスクを回避できる
・建物の老朽化が進んでいる場合や立地条件が悪い場合には寄付を断られることもある
・寄付後の空き家がどのように活用されるかは自治体の裁量に委ねられる

自治体への寄付を検討する際には、まず地元自治体やその制度について問い合わせを行い、受け入れ条件や手続きの詳細を確認します。

また、事前に税理士や不動産の専門家に相談し、寄付後の税制上の影響や費用についても把握しておくことが重要です。

空き家を活用して賃貸経営を行う

空き家が良好な状態で立地条件も良ければ、賃貸物件として活用する方法も有効です。

賃貸経営を行うことで、収益を得ながら空き家を維持できます。

メリットデメリット
・継続的な賃貸収入を得られ、プラスの財産に変えられる
・定期的に利用されることで老朽化を防ぐ
・フォームや設備の導入などの初期費用が必要になる場合がある
・需要の少ないエリアでは、入居者が決まらない「空室リスク」が伴う

賃貸経営をする場合は、リフォームやリノベーションを行い、空き家の価値を高めることが成功のポイントです。

また、賃貸管理会社に運営を委託すれば、手間を大幅に減らすことができます。

相続土地国庫帰属制度を利用して国へ納付する

2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」を活用すれば、空き家の土地を国に引き渡すことが可能です。

この制度は、管理できない土地や建物の所有者負担を軽減するために設けられたものです。

メリットデメリット
・土地の管理義務が完全になくなる
・固定資産税の支払いが不要になる
・申請には専門的な知識が求められることがあり、書類の準備や条件の確認が煩雑
・申請する際には手数料が必要になる
・老朽化した建物がある場合には解体費用を負担する必要がある場合がある

制度の利用には、建物が老朽化していないことや境界が確定していることが条件です。

また、土地に係る費用がかかる場合は申請が認められないこともあるので、利用条件には注意が必要です。

空き家の売却ならスマイル空き家買取センターへ

空き家問題への対処法には多様な選択肢がありますが、それぞれの方法のメリットとデメリットをしっかりと理解し、最適な解決策を見つけることが重要です。

専門家の助言を受けながら早めに対策を講じることで、空き家がもたらすリスクを最小限に抑えられます。

スマイル空き家買取センターでは、空き家の買取に特化した専門業者として、迅速かつ適正な価格での買取が可能です。

煩雑な手続きも徹底してサポートするため、時間や労力を大幅に削減できます。

築年数が古い物件や老朽化が進んだ物件でも買取可能な場合が多いので、「売れないかも」と悩む前にまずは一度ご相談ください。

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