底地が売れないのはなぜ?速く確実に売却するための手段とは?
「借地権」が付いた土地のことを「底地」といいますが、「底地」は売れにくく買い手がつかないといわれています。
今回は、「底地」はなぜ売れないのか、「底地」を早く確実に売るための手段にはどのようなものがあるのかなどについて詳しく解説します。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 底地は買い手がつきにくい
- 2. 底地が売れない5つの理由
- 2.1. 理由1:地代収入があっても収益性が低い
- 2.2. 理由2:購入時にローンを組みづらい
- 2.3. 理由3:地代に関してトラブルになりやすい
- 2.4. 理由4:土地を購入しても自由に使えない
- 2.5. 理由5:相続税が高い
- 3. 底地を売却する4つの手段
- 3.1. 手段1:借地人に底地を売却する
- 3.2. 手段2:借地人と共同で同時売却する
- 3.3. 手段3:等価交換をして完全所有権にしたあとに売却する
- 3.4. 手段4:底地に強い専門の買取業者に売却する
- 4. 底地を高く売るならどの手段を選ぶべき?
- 5. 底地を売却するときの注意点
- 5.1. 注意点1:借地人への事前の連絡を怠るとトラブルになる可能性がある
- 5.2. 注意点2:共有者がいる場合は共有者全員の同意を得る必要がある
- 5.3. 注意点3:売却利益が出たら譲渡所得税を納める必要がある
- 6. 速く確実に売りたいなら専門の買取業者に依頼しよう
底地は買い手がつきにくい
「底地」とは、建物の所有や使用を目的とする「借地権」が設定されている土地のことをいいます。
「借地権」とは、建物の所有を目的として地代を払って、他人から土地を借りる権利です。
「底地」の所有者のことを「地主」といい、この土地を借りている人のことを「借地人」といいます。
よく「底地」は買い手がつきにくいといわれますが、それは「地主」と「借地人」のそれぞれが土地の権利を持つ特殊な土地だからです。
一般的な土地(更地)の場合、その土地の所有者は「所有権」を有しているため、自由に使ったり売却したりすることができます。
これに対して「底地」には、「地主」が持つ「底地権」と「借地人」が持つ「借地権」があり、この2つの権利を合わせたものが「所有権」となります。
「更地評価額」を100%としたときの「借地評価額」の割合のことを「借地権割合」、「底地評価額」の割合のことを「底地割合」といい、「借地権割合」と「底地割合」の合計は100%になります。
「借地権割合」は、地域ごとに国税庁が定めて路線価図で公表しており、30%~90%の範囲で土地が接する道路毎に決められています。
商業地などの土地の利用価値が高い地域では「借地権割合」は高く「底地割合」は低く設定されていますので、「底地」だけの売却価格は安くなってしまいます。
また、「借地人」の権利が強いため「底地」を所有していても自由に使用したり売却したりすることができず、「底地」の所有者には「借地人」とのやり取りなど負担が生じてしまうというデメリットもあります。
このようなことなどから、なかなか「底地」の買い手が見つからず、一般の不動産会社では、「底地」の仲介を断られてしまうケースもあります。
このように「底地」には特有の事情があるため、なかなか買い手が見つからないのです。
底地が売れない5つの理由
「底地」は、立地条件や土地の形などが良かったとしてもなかなか売れません。
その主な理由としては、次の5つを挙げることができます。
底地が売れない5つの理由
- 理由1:地代収入があっても収益性が低い
- 理由2:購入時にローンを組みづらい
- 理由3:地代に関してトラブルになりやすい
- 理由4:土地を購入しても自由に使えない
- 理由5:相続税が高い
以下では、それぞれについて順に説明します。
理由1:地代収入があっても収益性が低い
「底地」の所有者である「地主」は、「借地人」に土地を貸して地代や更新料、承諾料などの収入を得ています。
これらの収入は、「地主」と「借地人」との話し合いで決定され、地代は固定資産税・都市計画税の3~5倍程度、更新料は1年間の地代の10倍程度、建て替えや増改築時の承諾料は更地価格の3%程度が相場となっています。
一方、「底地」を所有していることによる支出には、固定資産税や都市計画税、維持管理費があります。
この「地主」の収入と支出を比較すると、非常に収益性が低いことが分かります。
また、一般的に「底地」を購入することによる利回りは2~4%であり、これは一般の賃貸物件1棟の利回り4~6%よりも低いことも分かっています。
このようなことから、あえて「底地」を購入しようとする人は少なくなってしまいます。
理由2:購入時にローンを組みづらい
住宅ローンを組む際は、購入する不動産を担保として抵当権を設定しますが、「底地」には担保価値がないとみなされるため住宅ローンを組めないケースがあり、結果として現金一括で購入しなければならないことが多くあります。
ただし、都市部の「底地」の場合は、担保価値が認められて住宅ローンが組めることもあります。
なお、「借地人」が「地主」から「底地」を購入する場合は、土地にも建物にも抵当権を設定できるため、金融機関によっては通常の住宅ローンを組めるようになります。
理由3:地代に関してトラブルになりやすい
「底地」に関しては、「地主」と「借地人」との間で、地代や更新料、承諾料などの支払いに関するトラブルが発生する可能性があります。
特に、商業地などで「借地人」が複数いる場合、「地主」はそれぞれの「借地人」と個別に話し合って解決策を探らなければならないため、大変な時間と労力がかかります。
「借地人」とのトラブルが絶えないため「借地人」に立ち退いてもらおうとしても、「賃借契約の解除」には正当な理由が必要となりますので、現実的には難しいということになります。
理由4:土地を購入しても自由に使えない
「底地」を購入しても、すでにその土地には「借地人」が建物を建てて生活をしているため、購入者が新たに家を建てるなどの土地利用をすることができません。
つまり、せっかく土地を購入しても自分のために自由に使えないということになります。
「借地人」との借地契約を解除して立ち退いてもらおうと思っても、「地主」に「借地人」よりも「底地」を使用する必要性があることが認められなければ、契約の解除はできません。
また、通常の借地契約期間は30年もの長期に及びますし、契約満了後も「借地人」が「底地」に建てられた建物の利用を継続する場合は自動的に契約が更新されたものと見なされ、「地主」が契約更新を拒絶することはできません。
このように、一般的に「底地」を購入するメリットはほとんどないということができます。
理由5:相続税が高い
「底地」を相続することになった場合は、相続税を納める必要がありますが、「底地評価額」は、実勢価格よりも高くなるケースがあります。
「底地評価額」は、次の計算式で求められますが、ここで「借地権割合」とはその土地の「更地評価額」のうち「借地人」が有する権利の割合のことで、住宅地の場合は60~70%が一般的な割合です。
底地評価額の算出方法
「底地評価額」=「更地評価額」×(100%-「借地権割合」)
たとえば、「更地評価額」2,000万円、「借地権割合」が70%の「底地評価額」は次のようになります。
底地評価額の算出方法(例)
「底地評価額」=2,000万円×(100%-70%)=600万円
一般に、「底地」の実勢価格は「更地評価額」の10%ほどといわれていますので、この場合は200万円程度になりますが、この計算式では「底地評価額」は600万円となり、実勢価格の3倍にもなってしまいます。
このように、「底地」の相続税は実勢価格の数倍になる可能性が高いため、将来の相続を考えると、なかなか「底地」には手が出せなくなるのです。
底地を売却する4つの手段
「底地」が売れない理由について説明してきましたが、現在「底地」を所有していて売却したい場合はどうすればいいのでしょうか?
「底地」を売却するためには次の4つの手段がありますので、以下順に説明します。
底地を売却する4つの手段
- 手段1:借地人に底地を売却する
- 手段2:借地人と共同で同時売却する
- 手段3:等価交換をして完全所有権にしたあとに売却する
- 手段4:底地に強い専門の買取業者に売却する
手段1:借地人に底地を売却する
「底地」を購入することによって最もメリットを受けるのは「借地人」ですので、真っ先に検討すべき手段は「借地人」に売却することです。
「借地人」は、「底地」を購入することによってその土地の「所有権」を取得することができるため、土地を自由に利用できるようになります。
もちろん、地代や更新料、建て替え・増改築時の承諾料を支払う必要もなくなります。
このように「借地人」にとって多くのメリットがありますので、第三者に売却するよりは高値で買い取ってくれる可能性があります。
また、「借地人」が「地主」から「底地」を購入する場合は、住宅ローンを組むことができるため購入しやすくなります。
手段2:借地人と共同で同時売却する
「地主」と「借地人」が共同で、「底地」と「借地権」を同時売却する方法もあります。
「底地」だけでは土地の利用に制約がありますが、「借地権」と同時に購入することができれば、通常の土地として利用することができます。
購入者は、一般の不動産と同じような土地利用が可能となるため、更地価格と同等の比較的高い価格で売れる可能性があります。
この場合は、後々のトラブルを避けるためにも、「底地」と「借地権」の利益配分について「地主」と「借地人」との間で事前にしっかりと取り決めをしておくことが重要です。
手段3:等価交換をして完全所有権にしたあとに売却する
「地主」と「借地人」との間で「底地」と「借地権」の等価交換をして、「地主」の完全所有権の土地と「借地人」の完全所有権の土地に分割(文筆)して、その後に売却する方法があります。
文筆によって狭い面積の土地になってしまいますが、完全所有権の土地になりますので買い手が見つかりやすくなります。
不動産売買で利益が生じた場合は、利益の額に応じた譲渡所得税がかかりますが、不動産の等価交換の場合は「固定資産の等価交換の特例」により税金がかからないケースもあります。
手段4:底地に強い専門の買取業者に売却する
「底地」を早く確実に売却したい場合は、「底地」専門の買取業者を利用する方法があります。
専門の買取業者であれば、最短では数日から長くても1ヶ月で買い取ってくれますので、すぐに現金化でき点も大きなメリットです。
しかしながら、専門の買取業者への売却の場合は、更地価格の10~15%の売却価格になってしまうことを覚悟しておく必要があります。。
なお、「底地」を専門としない不動産業者に売却する方法も考えられますが、活用方法や再販に関するノウハウがないために、専門業者よりもさらに買取価格は低くなります。
底地を高く売るならどの手段を選ぶべき?
「底地」を売却するための4つの手段を紹介しましたが、どの手段が一番高く売ることができるのでしょうか?
結論から言えば、最も高く売れるのは<手段2>で紹介した「借地人と共同で同時売却する」です。
その理由は、「底地」と「借地権」を同時に売却しますので、購入者は完全所有権の通常の土地として利用することが可能なためです。
立地条件などにもよりますが、更地価格と同等の価格で売却できる可能性があります。
しかし、この方法が成立するのは、「借地人」が「地主」と共同して「借地権」の売却をする場合のみです。
「地主」が「底地」売却したいと考えているのとまったく同時期に、「借地人」が「借地権」を売却したいと考えていなければならないという非常に稀なケースと考えられますので、実現性はかなり低いと考えなければなりません。
次に高く売れるのは<手段1>で紹介した「借地人に底地を売却する」です。
理由は、「底地」を購入することによって最もメリットを受けるのは「借地人」だからですが、この方法が上手くいくためにはいろいろな好条件が揃っていることが必要です。
たとえば、「地主」と「借地人」の関係が良好であること、「借地人」が「底地」を購入したいという意欲を持っていること、「借地人」に「底地」を購入する資金があること、などです。
この2つの手段に対して、最も高く売れるわけではありませんが、早く確実に売ることができるのは、<手段4>で紹介した「底地に強い専門の買取業者に売却する」です。
「底地」の買取を専門に行っている業者は、購入した「底地」の活用ノウハウをもっているため、どのような「底地」であっても1週間から1ヶ月程度で買い取ってくれます。
ここで、この3つの手段について、更地価格が2,000万円の場合を例にして売却価格の相場を考えてみましょう。
「底地」を「借地人」に売却した場合は更地価格の30〜40%程度の売却価格となり、専門の買取業者に売却した場合は更地価格の10~15%程度の売却価格が一般的と言われています。
そこで、それぞれの手段による売却価格を計算すると、次のようになります。
底地を売却する4つの手段
- 手段2:「借地人と共同で同時売却する」場合の売却価格の相場:更地価格2,000万円
- 手段1:「借地人に底地を売却する」場合の売却価格の相場:更地価格2,000万円×(30~40%)=600~800万円
- 手段4:「底地に強い専門の買取業者に売却する」場合の売却価格の相場:更地価格2,000万円×(10~15%)=200~300万円
売却価格だけで考えると、当然<手段2>2,000万円が一番魅力的ですが、実現性はかなり低いといえます。
また、2番目は<手段1>600~800万円ですが、これも「借地人」側とタイミングが合うかどうかという問題があります。
これらのことを総合的に考えると、<手段4>「底地に強い専門の買取業者に売却する」の200~300万円が最も現実的で、速く確実に売る手段だと考えられます。
底地を売却するときの注意点
「底地」を売却するときの主な注意点は次の通りです。
底地を売却するときの注意点
- 注意点1:借地人への事前の連絡を怠るとトラブルになる可能性がある
- 注意点2:共有者がいる場合は共有者全員の同意を得る必要がある
- 注意点3:売却利益が出たら譲渡所得税を納める必要がある
以下で、詳しく説明します。
注意点1:借地人への事前の連絡を怠るとトラブルになる可能性がある
原則として、「底地」を売却する際には「借地人」に同意を得たり、事前に連絡したりする必要はありません。
しかしながら、「底地」の売却後に「借地人」は新しい「地主」と賃貸借契約を結ぶ必要がありますので、事前に連絡をしておくと無用なトラブルになることを回避できるでしょう。
注意点2:共有者がいる場合は共有者全員の同意を得る必要がある
相続によって、共有名義の「底地」になっている場合は、売却に際して他の共有者全員の合意を得る必要があります。
もし、共有者のうちの1人でも反対する人がいる場合は売却することができません。
共有名義の「底地」は、固定資産税の負担などを巡ってトラブルなどが起こりやすいといわれていますので、極力早く共有状態を解消することが大切です。
注意点3:売却利益が出たら譲渡所得税を納める必要がある
「底地」を売却することによって売却利益が出た場合は、その利益の額に応じた「譲渡所得税」を納める必要があります。
「譲渡所得税」は次の計算式で求めることができます。
譲渡所得税の算出方法
「譲渡所得税」={売却価格-(取得費+売却にかかった費用)}×税率
「譲渡所得税」は、売却した不動産を所有していた期間によって税率が変わります。
不動産の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)になります。
不動産の所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%(所得税30.63%、住民税9%)になります。
速く確実に売りたいなら専門の買取業者に依頼しよう
この記事では、「底地」が売れない5つの理由、「底地」を売却する4つの手段、「底地」を売却するときの3つの注意点などについて解説しました。
「底地」の売却方法としては、いくつかの方法が考えられますが、速く確実に売りたいということであれば、専門の買取業者に依頼することをおすすめします。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。