売れない市街化調整区域の物件を処分する6つの方法。売れやすくするにはどうすればいいの?
市街化調整区域とは「売却しづらい」というイメージが持たれがちです。
しかしながら、市街化調整区域も不動産であるため、売却する方法や、いっそ手放してしまう方法も存在します。
そこで今回は、市街化調整区域を売却する方法について解説します。
なぜ市街化調整区域が売却しづらいのか、売却しづらい・しやすい市街化調整区域の特徴についてもあわせて解説しているため、市街化調整区域処分の際の参考にしてください。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 売れない市街化調整区域の物件を処分する7つの方法
- 1.1. 、方法1:隣地の所有者に売却する
- 1.2. 方法2:空き家バンクに登録する
- 1.3. 方法3:オークションで売却する
- 1.4. 方法4:専門の買取業者に依頼する
- 1.5. 方法5:相続放棄をする
- 1.6. 方法6:寄付をする
- 2. そもそも市街化調整区域が売れにくいのはなぜ?
- 2.1. 理由1:建物の建て替えや建築に制限がある
- 2.2. 理由2:住宅ローンが通りづらい
- 2.3. 理由3:インフラ整備が遅れている場合がある
- 3. 一口に市街化調整区域の物件と言っても売れやすい物件と売れにくい物件がある
- 3.1. 売れやすい物件の特徴
- 3.1.1. 開発許可が下りやすい物件
- 3.1.2. 開発許可を取ってから建てられた物件
- 3.1.3. 60条証明によって建てられた建物が存在する場合
- 3.1.4. 線引き前に建てられた建物
- 3.2. 売れにくい物件の特徴
- 3.2.1. 農地
- 3.2.2. 開発許可が下りない物件
- 3.2.3. 無許可で建てられた物件
- 3.2.4. 線引き後に建てられた建物
- 4. 市街化調整区域の売れない物件は売却前に開発許可や転用の申請をすると売れやすくなる!
- 5. 不動産会社に相談してもどうしても売れない、査定額が低すぎる物件は、専門の買取業者に依頼して処分するのがすすめ
- 6. 市街化調整区域は売れにくいが売却することは可能!
売れない市街化調整区域の物件を処分する7つの方法
「売りづらい」「処分しづらい」というイメージが先行しがちではあるものの、市街化調整区域を売ったり、あるいは処分する方法は存在します。
市街化調整区域を処分する方法は下記のようにさまざまあります。
市街化調整区域の物件処分方法
- 隣地の所有者に売却する
- 空き家バンクに登録する
- オークションで売却する
- 専門の買取業者に依頼する
- 相続放棄をする
- 寄付をする
以下からは市街化調整区域を売却したり、処分する各方法について詳しく解説します。
、方法1:隣地の所有者に売却する
市街化調整区域を処分する方法として簡単かつポピュラーなものは売却です。
前半ではまず、土地売却の方法について解説します。
本項では、市街化調整区域の売却を隣人にする方法について考えます。
市街化調整区域とは、簡単に売却できるものではありません。
このため何らかの方法で市街化調整区域に付加価値を与えてやらなければなりません。
方法2:空き家バンクに登録する
市街化調整区域とは売却が難しい媒体です。
このため、土地売却に特化したサービスである空き家バンクを利用する方法も効果的です。
空き家バンクの利用についてのメリットは、空き家バンクの運営を各地方の自治体が行っているところにあります。
つまり、空き家バンクは信頼性が高いのです。
空き家バンクの仕組みは、地域住民から自治体が空き家を登録するように募集して、集まった空き家についての情報を、移住などを希望する人々に提供するというものです。
地方公共団体が運営する信頼性の高いサービスである空き家バンクであれば、より多くの方々に市街化調整区域を見てもらえる機会が増えます。
方法3:オークションで売却する
オークションサイトを利用して土地を売買することも可能です。
例えば、ヤフー・オークションなどを利用する方法です。
ヤフー・オークションでは土地売買が一般的に行われており、土地という検索キーワードでサイト内を調べてみれば何千件と競売にかけられていることがわかります。
オークションに出品する場合は、その土地が「市街化調整区域」であることを明記しましょう。
方法4:専門の買取業者に依頼する
土地の売買という分野においては、専門の買取業者が存在します。
市街化調整区域も、専門の買取業者に依頼することで売却できる可能性が生じます。
しかしながら、買取業者を介した売買において、もとの所有者は直接土地売却の利益を得ることにはなりません。
この方法においては、市街化調整区域を買取業者に譲り、その対価を得ることになります。
つまり個人間で直接やり取りして、売却益を受けるといった方法よりも入手金額は下がることになります。
また、土地売買の専門買取業者すべてが市街化調整区域に対応しているわけではないことにも注意を払いましょう。
市街化調整区域の売却を専門の買取業者に依頼する場合は、その業者が市街化調整区域の取り扱いに長けているかどうかを事前にチェックしてください。
買取業者に依頼する方法は、市街化調整区域をとにかく手放したい、という場合にメリットがある手段となっています。
方法5:相続放棄をする
市街化調整区域が自分にとって不要であり、売れる見込みもないときは相続放棄をしてください。
本件における相続放棄とは、下記の意味を持ちます。
被相続人の財産(市街化調整区域を含む場合)に関して、「相続の権利」を放棄すること
相続放棄を行うことで、市街化調整区域を誰かから相続の形で譲り受ける前、つまり自分のものとなってしまう前に処分可能となります。
相続放棄により、処分という破棄の形を取らなくても、そもそも自分のものとならないため市街化調整区域に関する一切の責任を持たなくていいためです。
一方、相続放棄には市街化調整区域について以外に関わるメリットとデメリットを持ち合わせており、それぞれ以下の通りです。
相続放棄のメリットの一覧は下記表です。
相続放棄のメリット
- 市街化調整区域についての責任を負う必要がなくなる
- 市街化調整区域の所有に伴う固定資産税等ランニングコストが発生しなくなる
続いて相続放棄のデメリット一覧は以下の通りです。
相続放棄のデメリット
- 市街化調整区域だけでなく、被相続人が本来持っていた財産(預貯金・運用資産など)を譲り受ける権利資格を失う
- 相続を知ってから3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしない場合は、放棄ができない
- 市街化調整区域の土地管理義務は残存する(新規相続人による土地管理が始まるまで)
方法6:寄付をする
市街化調整区域が不要な場合は、寄付をして手放すことが可能です。
寄付とは以下の効力を持ちます。
寄付の効力
誰かに無償で市街化調整区域を譲り渡す(寄付)ことで、自身の所有権をなくせる。
また、寄付の方法は様々であり、寄付先として以下があげられます。
寄付の方法
- 自治体
- 個人
- 法人
ただし自治体や法人に寄付したくても、即座にできるわけではありません。
自治体や法人はメリットがない土地を手に入れようとはしないため、寄付の前に調査や審査を行います。
このため、団体に対する寄付のハードルは高いと言えます。
その点、個人への寄付はハードルが低いことが特徴です。
特に市街化調整区域がある場所の隣人であれば効果的です。
隣人からしてみれば、自分の持つ土地が単純に増えることはメリットとなります。
一方、土地が増えることにより固定資産税が増えることはデメリットです。
このメリットとデメリットを話し合いなどで納得してもらう過程が必要となるでしょう。
このように、もし市街化調整区域の寄付をしたいのであれば、基本的に隣人への土地の寄付であれば喜ばれるケースは多いため、隣人にあたりをつけてみるのがおすすめといえます。
そもそも市街化調整区域が売れにくいのはなぜ?
不動産関係者の間において、市街化調整区域は売れにくいことが共通認識となっています。
それは、市街化調整区域が売買の成立を妨げかねない以下のデメリット的性質を持っているためです。
市街化調整区域の物件のデメリット
- 建物の建て替えや建築に制限がある
- 住宅ローンが通りづらい
- インフラ整備が遅れている場合がある
そこで以下からは、市街化調整区域が売れづらい理由となる市街化調整区域のデメリット的性質について解説します。
理由1:建物の建て替えや建築に制限がある
市街化調整区域において新規に土地開発や建物の建て替え、建築、リフォームを行う場合においては、許可申請が必要です。
つまり、勝手にそのような建築行為をすることができません。
また建物の容積率・隠蔽率・延床面積などには制限が存在し、制限の範囲は各自治体(行政)の裁量に左右されます。
市街化調整区域を将来的に活用するつもりなのであれば、各費用の捻出だけでなく各制限をどのようにクリアするかといった中長期的目標を持たなければなりません。
例外は、その市街化調整区域における土地の所有者あるいは6親等以内の親族が住むための再建築のみです。
このように土地計画において、複雑なプランを練り、煩雑な手段に訴えなければならないことはひとつのデメリットといえます。
理由2:住宅ローンが通りづらい
土地の購入は必然的に額が高い買い物となりがちであり、住宅ローンとして分割払いの支払い方法が取られることがあります。
しかしながら、住宅ローンの審査にはその土地の評価額が指標となることがあり、評価額が低くなりがちな市街化調整区域においては住宅ローンが通りづらくなることもデメリットとして挙げられます。
当該地域の建物建設やリフォームの場合も同じような結果となりがちです。
これはローン形成において、担保が当該不動産となるためです。
その土地の価値が低いままであれば担保として成立しなくなってしまいます。
理由3:インフラ整備が遅れている場合がある
市街化調整区域の大きなデメリットとして、区域内の生活インフラが整っていないことが多いことが挙げられます。
この場合の生活インフラとは、電気、水道、ガスなどです。
生活インフラが届いていない理由として、地方自治体などのインフラ整備計画の地域として市街化調整区域が対象外となっているからというものがあります。
生活インフラを自分で整備する必要がある土地を、好んで買うというケースはあまり考えられません。
また自分で生活インフラを整備するにあたっても、助成金といった制度の対象外であったり、下水道整備のために自費にて浄化槽や貯水槽といった設備を建設しなければならないこともあり、極度の出費が予測されることになります。
一口に市街化調整区域の物件と言っても売れやすい物件と売れにくい物件がある
売却しづらいイメージがある市街化調整区域ではあるものの、一定の条件をクリアすることで売却しやすくなることがあります。
そこで以下からは、売却しやすい物件の特徴および売却しづらい物件の特徴について解説します。
売れやすい物件の特徴
市街化調整区域であっても売却しやすくなる物件の特徴は以下の通りです。
売れやすい物件の特徴
- 開発許可が下りやすい物件
- 開発許可を取ってから建てられた物件
- 60条証明によって建てられた建物が存在する場合
- 線引き前に建てられた建物
以下からさらに詳しく解説します。
開発許可が下りやすい物件
都市計画法第34条を参照すると、開発許可が得られる土地の立地基準が定められていることがわかります。
このため、都市計画法第34条に記載された条件を満たしている物件は利用する価値が見いだされ、自ずと価値が上がり売却しやすくなります。
例えば、現在は果樹園など更地になっているものの、市街地に隣接しており宅地としての開発許可が下りる見込みが高ければ価値があるとみなされるのです。
その土地が開発許可が下りやすい土地かどうかは、各自治体の都市開発課に相当する部署に問い合わせることで判明します。
インターネット上に都市計画概要を公表している自治体であれば、各ホームページでの確認も可能です。
開発許可を取ってから建てられた物件
その市街化調整区域において、すでに開発許可を得た建築物が存在する場合は、その市街化調整区域が売却しやすくなります。
理由は、その市街化調整区域において同程度の規模・用途の建物であれば再建築が可能であるためです。
例えば、市街化調整区域にあらかじめ建てられていがちな物件として工場や倉庫があげられます。
つまりその土地では、以後も工場や倉庫であれば建設許可がおりやすく、以後の用地利用を工場や倉庫のために使うのであれば計画が有利に進む可能性が高まります。
開発許可を得た事実がない場合は、所有者が改めて個人的に開発許可を得なければならず、手段が煩雑化するため価値が下がります。
60条証明によって建てられた建物が存在する場合
60条証明とは、「都市開発法に基づく開発許可」が必要ない都市開発計画に適合するという証明です。
60条証明に該当する建物とは以下の通りです。
60条証明に該当する建物
- 農家住宅
- 農林漁業用建築物
- 日常生活用品の販売、加工等の業務用の建築物
先んじて60条証明に該当する建物がその土地に建っている場合、宅地とみなされます。
そのため、新たに建物を建てる際に開発許可を要しません。
しかしながら、この開発許可なく建てられる建物とは都市計画法第34条に該当する建物のみとなります。
都市計画法第34条に該当する建物とは以下のような、日常生活のために必要な店舗です。
都市計画法第34条に該当する建物
- コンビニエンスストア
- レストラン
- ガソリンスタンド
開発許可が必要なく建てられる建物についても、都市計画法43条における建築許可は必要となる点に注意してください。
線引き前に建てられた建物
各自治体に問い合わせることで、その市街化調整区域がいつ線引きされたものなのかが確認できます。
そこで市街化調整区域にある建物が線引き前に建てられたかどうかが判明し、もし線引き前に建設されていたことがわかれば売却に際し何の許可も必要なくなるため、売却しやすくなります。
許可が必要ない理由は、もともとあったその建物に対して、行政が自己都合で勝手に後から制限をかけたと解釈されるためです。
しかしながら、線引き後に建て替えを行っていた場合は線引き後の建物として取り扱われるため売却しづらい物件となるため注意が必要です。
売れにくい物件の特徴
市街化調整区域として売れづらい物件の特徴は以下の通りです。
売れにくい物件の特徴
- 農地
- 開発許可が下りない物件
- 無許可で建てられた物件
- 線引き後に建てられた建物
以下段落から、それぞれについて詳しく解説します。
農地
その土地が農地である場合、もし農地以外の利用をしたければ転用許可を得なければなりません。
さらに都市計画法による開発規制、農地法による開発規制という2つの法律による縛りを受けることになり、転用がしづらい土地と見なされ価値が下がります。
開発許可が下りない物件
開発許可を得るためには、都市計画法第34条で定められた諸条件をクリアする必要があります。
しかしながらこの開発許可が得られないのであれば、以後も開発許可が下りない可能性は高くなり、土地としての価値が下がったと見なされ売りづらくなります。
無許可で建てられた物件
市街化調整区域となっている土地では、農家の住宅や温室などを建設することはできるものの、通常の住宅を建設するには行政の許可が必要になります。
市街化調整区域には、この行政の許可を取らずに無許可で建てられた物件が存在することがあります。
無許可物件とは価値が低くなりがちであり、売却の可能性が下がるのです。
線引き後に建てられた建物
無許可で建てられた物件がある市街化調整区域と似たパターンで、市街化調整区域が線引きされた後に建てられた建物がある場合は、当時の各種手続き上の混乱に乗じて建設されたものである可能性が高く、価値が大きく下がることがあります。
あるいは、開発許可申請といった手続きを経たあとに建設されたものである可能性もあります。
線引き後の建物は、使用者制限を帯びた建物であることもあり、当該建物についての各種権利は当時に許可を受けた者の相続人や近親者のみです。
外部から新たに購入しようとしても、使用者制限の解除がなければ不可能です。
そういった手続きを経て、物件が手に入ったとしても、建て替えや増築をしたい場合はまた購入した当人が許可申請を出さなければなりません。
この過程には、土地を買ったものの手出しできなくなる可能性があるなど多くのリスクがあります。
このため、線引き後に建てられた建物がある市街化調整区域は売却が難しくなる可能性があるのです。
市街化調整区域の売れない物件は売却前に開発許可や転用の申請をすると売れやすくなる!
売却の見込みが薄い市街化調整区域であっても、売却する前に開発許可や転用許可を受けておけば売却の可能性は高まります。
それは市街化調整区域が開発・転用許可を得づらい性質を持っているためです。
そのため、売り手が買い手の代わりに開発・転用許可申請と行った負担を肩代わりするという考え方です。
不動産会社に相談してもどうしても売れない、査定額が低すぎる物件は、専門の買取業者に依頼して処分するのがすすめ
売却の可能性が低かったり、売却までの負担やコストがかかりがちな市街化調整区域ではあるものの、専門の買取業者に売買を依頼することでその負担を和らげることが可能です。
一般的に不動産業者が得る手数料とは売買価格の3%程度といわれるため、関わりを避けられがちです。
しかしながら不動産業者の中には、市街化調整区域の売買を専門とする、販売実績やノウハウを備えた業者が存在します。
そのため、市街化調整区域をどうしても売却したい場合は市街化調整区域専門の業者に依頼することで売却がスムーズに進行する可能性が高まります。
市街化調整区域は売れにくいが売却することは可能!
今回は、売却しづらいイメージがある市街化調整区域を売却する方法について解説しました。
市街化調整区域にも、専門の買取業者が存在します。
そういった業者は市街化調整区域の売買に関するプロフェッショナルであるため、どうしても市街化調整区域を売ってしまいたい場合、有用な相談先です。
また売却にこだわらない場合は、相続放棄や寄付といった処分手段もあります。
一方で市街化調整区域であってもその性質により、売却しやすかったり、売却しづらかったりするため、当該区域の性質を見極めてから売却か処分すべきなのかを検討してみてください。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。