未登記建物でも相続放棄は可能!放棄した場合の管理義務の有無をケース別に解説

身近な人が亡くなって自分が相続人になったときに、被相続人の遺産の中に「未登記建物」が含まれていることがあるかもしれません。

「不動産登記法」には登記申請の義務があることが規定されていますので、建物を新築した際は、その建物の「建物表題登記」を行わなければなりませんが、さまざまな理由から「建物表題登記」がされていない「未登記建物」が数多く存在しています。

「未登記建物」は「建物表題登記」がされていませんので「登記簿」が作成されていないため、抵当権の設定ができず住宅ローンを組むことができません。

従って、現金でしか売買ができないことになり、買主が限定されるなど売買が難しいというデメリットがありますし、そもそも法律違反であり罰則の対象にもなっています。

このようなことから、「未登記建物」の相続は慎重に行う必要があり、一つの対応策として「相続放棄」することが考えられます。

しかしながら、「未登記建物」の「相続放棄」をしたとしても、「未登記建物」の「管理義務」が残ることがあり、その場合は「未登記建物」の維持管理を行わなければなりません。

そこで今回は、「未登記建物」を相続することになったときに「相続放棄」ができるのかどうか、そして「相続放棄」した場合に「未登記建物」の「管理義務」がどうなるのか、などについて詳しく解説します。

目次

未登記建物でも相続放棄することはできる

「未登記建物」が相続財産に含まれている場合でも、「相続放棄」をすることは可能です。

この場合の手続きは、通常の「相続放棄」と同様で、その「未登記建物」の所在地を管轄する家庭裁判所に申し立てることによって「相続放棄」することができます。

自分が「相続放棄」すると、相続権は自分の「法定相続人」に移りますが、一般的には自分の配偶者や子供などが「法定相続人」になりますので、配偶者や子供なども「相続放棄」をするかどうかを判断する必要があると考えられます。

また、後々のトラブルを避ける意味からも、自分以外の相続人(一般的には親や兄弟などの親族)には、自分が「相続放棄」することは伝えておいた方が良いでしょう。

一般の相続において、相続人全員が「相続放棄」をした場合には財産の「管理義務」がありますが、「未登記建物」でも「管理義務」が残ることがあります。

なお、「相続放棄」をすると「未登記建物」だけではなく被相続人の現金や有価証券などのプラスの財産の相続もできなくなりますので、「未登記建物」の使用状況などを総合的に検討して慎重に判断する必要があります。

【ケース別】未登記建物を相続放棄した場合の管理義務の有無

「未登記建物」でも「相続放棄」が可能ですが、「相続放棄」は相続の発生を知ったときから3ヶ月以内に行う必要がありますので、あまり時間的な猶予がないということに注意が必要です。

また、「相続放棄」をしたとしても、「未登記建物」の「管理義務」が課せられる場合があることにも注意が必要です。

この「管理義務」について、2023年3月までの旧民法では「管理義務」の有無が明確になっていないという問題がありましたが、2023年4月の民法改正において、「相続放棄」した時点で相続財産を現に占有していた相続人に管理義務があるということが明確になりました。

ここで占有とは、その相続財産を利用していることをいい、「未登記建物」の場合は居住していることが典型的な利用の実例です。

なお、2023年4月の民法改正で、「管理義務」は「保存義務」に変更されましたが、従来から「管理義務」という用語が使われていますので、この記事でも「管理義務」という用語を使っています。

以下では、自分自身が「相続放棄」をすることは大前提として、「相続放棄」した時点で誰が「未登記建物」を占有していたのか、自分以外に相続人がいるのか、自分以外の相続人が「相続放棄」をしたのかによってケース分けをし、それぞれのケースについて、自分自身の「管理義務」の有無について解説します。

ケース1:相続人が自分一人の場合

まず、自分一人が相続人だというケースが考えられますが、このケースはさらに以下の2つに分けることができます。

ポイントとなるのは、自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたかどうかです。

相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していたケース

これは、唯一の相続人である自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたケースです。

具体的には、被相続人が所有する「未登記建物」に一緒に住んでいて、「相続放棄」した時点でも「未登記建物」に住んでいたような場合です。

このケースの場合は、自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していた相続人になりますので、自分自身に「管理義務」が残ります。

相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していなかったケース

これは、唯一の相続人である自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していなかったというケースです。

具体的には、被相続人が所有する「未登記建物」に一緒に住んでいたものの、被相続人の死亡後に退去して「相続放棄」した時点では「未登記建物」に住んでいなかったというような場合です。

このケースの場合は、自分自身が「相続放棄」をした時点では「未登記建物」を実際に占有していませんでしたので、自分自身には「管理義務」はありません。

ケース2:相続人が他にもいる場合

次に、自分以外に相続人がいるケースが考えられ、さらに以下の4つに分けることができます。

このケースの場合は、「相続放棄」をしていない相続人がいるかどうか、と「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していた相続人がいるかどうかがポイントになります。

もし、「相続放棄」をしていない相続人がいる場合は、その相続人に「管理義務」が残ります。

また、「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していた相続人がいた場合は、その相続人に「管理義務」が残ります。

相続放棄をしていない相続人がいるケース

このケースは非常に明快で、「相続放棄」をしていない相続人に「未登記建物」の「管理義務」がありますので、自分自身には「管理義務」はありません。

自分自身が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していたケース

これは、相続人の一人である自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたというケースです。

具体的には、被相続人が所有する「未登記建物」に一緒に住んでいて、「相続放棄」した時点でも「未登記建物」に住んでいたような場合です。

このケースの場合は、自分自身に「管理義務」が残ります。

相続放棄をした本人が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していたケース

これは、自分以外の相続人が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたというケースです。

このケースの場合は、その自分以外の相続人に「管理義務」が残りますので、自分自身には「管理義務」はありません。

相続放棄をした本人が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していなかったケース

これは、自分以外の相続人が「未登記建物」の「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していなかったというケースです。

このケースの場合は、その自分以外の相続人には「管理義務」はありませんし、もちろん自分自身にも「管理義務」はありません。

ケース3:相続人全員が相続放棄している場合

最後に、自分自身を含む相続人全員が「未登記建物」の「相続放棄」をしているというケースです。

このケースの場合は、「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していた相続人がいるかどうかがポイントになります。

もし、「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していた相続人がいた場合は、その相続人に「管理義務」が残ります。

自分自身が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していたケース

これは、相続人の一人である自分自身が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたというケースです。

この場合は、自分自身に「管理義務」が残ります。

相続放棄をした本人が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していたケース

これは、自分以外の相続人が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していたというケースです。

この場合は、その自分以外の相続人に「管理義務」が残りますので、自分自身には「管理義務」はありません。

相続人全員が相続放棄をした時点で未登記建物を現に占有していなかったケース

これは、自分自身を含む相続人全員が「相続放棄」をした時点で「未登記建物」を実際に占有していなかったというケースです。

この場合は、自分自身を含む相続人全員に「管理義務」はありません。

未登記建物を相続放棄するメリット・デメリット

ここで、「未登記建物」を「相続放棄」するメリットとデメリットについてまとめてみます。

メリット

まず、「未登記建物」を「相続放棄」するメリットは、主に次の1つです。

メリット1:固定資産税を支払う必要がなくなる

「未登記建物」であっても固定資産税がかかりますが、「相続放棄」をすることによって、「未登記建物」の所有者または共有者ではなくなりますので、固定資産税を支払う必要がなくなります。

なお、2023年3月までの旧民法においては、「相続放棄」することによって「管理義務」を免れる可能性がありましたが、2023年4月以降の改正民法においては、「相続放棄」した時点で「未登記建物」を現に占有していた相続人が管理義務を負うということが明確になりました。

つまり、「相続放棄」したかどうかではなく、「相続放棄」した時点で「未登記建物」を占有していたかどうかが判断ポイントとなりますので、メリットとしては挙げていません。

デメリット

次に、「未登記建物」を「相続放棄」するデメリットは、主に次の3つです。

デメリット1:その他の遺産も相続できなくなる

「相続放棄」をすると「未登記建物」だけではなく、その他のすべての遺産を相続することができなくなります。

遺産の中に預貯金や有価証券等のプラスの財産があった場合でも、これらの一切の遺産の相続を放棄することになります。

デメリット2:「相続放棄」の取り消しができない

一旦「相続放棄」をすると、あとから取り消したり撤回したりすることができません。

「相続放棄」をする場合は、慎重に検討した上で判断する必要があります。

デメリット3:他の相続人とトラブルになる可能性がある

「相続放棄」することを他の相続人(一般的には親や兄弟などの親族)に事前に伝えておかないと、後々トラブルになる可能性があります。

また、「相続放棄」すると自分自身の法定相続人(一般的には自分の配偶者や子供など)に相続権が移りますので、これについても事前に伝えて、自分自身と同様に「相続放棄」をした方が良いでしょう。

相続放棄をしたのに管理義務が残る場合は売却するのが1番おすすめ

ケース別の説明からも分かるように、「相続放棄」をしても「管理義務」が残るばあいがあります。

このように「相続放棄」をしたにもかかわらず「管理義務」が残ってしまう場合は、「未登記建物」の管理のために費用を支払い続けなければならなくなりますので、売却して現金化することをおすすめします。

ただし、未登記のままだと売却するのは難しい

「未登記建物」を「相続放棄」したとしても「管理義務」が残ってしまうことがありますので売却することをおすすめしますが、やはり未登記のままで売却するのは難しいでしょう。

その理由としては、買主が「未登記建物」を購入する際に住宅ローンを組めない、未登記のため自分が所有者であることを主張できない、悪意の第三者に所有権を奪われる可能性がある、などが挙げられます。

専門の買取業者なら未登記のまま直接買い取ってもらえる

しかし、専門の買取業者であれば、「未登記建物」を未登記のままで買い取ってくれます。

専門の買取業者は、「未登記建物」であることを前提として買い取り、買い取り後に必要な登記手続きなどを行って再販します。

そのため、売却金額は相場よりも安くなってしまいますが、売主はほぼ手間暇をかけずに短期間でスムーズに売却することができるのです。

相続放棄をしなくても未登記建物を手放す方法はある!登記の手間を省きたいなら専門の買取業者に相談しよう

この記事では、「未登記建物」を相続することになったときに「相続放棄」ができるのか、および「相続放棄」したときに「未登記建物」の「管理義務」がどうなるのか、などについてケース別に解説してきました。

「相続放棄」したときに「未登記建物」の「管理義務」が残るのは避けたいですし、使う予定のない「未登記建物」を相続して登記をしたのちに売却するという面倒な手間もかけたくはないでしょう。

このようなときには、専門の買取業者に相談するのが一番いい方法です。

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