法的瑕疵物件とは?確認方法は?購入後に後悔しないための基礎知識

不動産を購入する際には、不動産関連のいずれかの法律に抵触している「法的瑕疵物件」でないことを確認することが大切です。

「法的瑕疵物件」は他の物件に比べて比較的安い価格で売り出されていることが多いため、知らずに「法的瑕疵物件」を購入してしまうと後々面倒なことになりかねません。

そこで今回は、「法的瑕疵物件」を事前に確認する方法や購入後に後悔しないための「法的瑕疵物件」の基礎知識などについて詳しく解説します。

法的瑕疵物件とは

「法的瑕疵物件」とは、その名前の通り、法的に何らかの瑕疵(問題)を有している物件のことをいいます。

「法的瑕疵物件」は、主に「建築基準法」や「都市計画法」「消防法」に抵触していることが多いため、建物の建て替えやリフォーム・リノベーションなどが自由に行えないという問題を抱えています。

「法的瑕疵物件」の代表的な例としては、「建築基準法」の安全基準を満たしていない物件や接道義務を満たしていない「再建築不可物件」などがあります。

その他に、「都市計画法」の「市街化調整区域」内に建っている物件、計画道路予定地のために建物の建築に制限が設けられている物件、「消防法」の防火設備や防災設備の設置基準を満たしていない物件、防火設備や防災設備が老朽化している物件などもあります。

新築で建物を建てる場合は現行の法律に適合していることを確認してから建築しますので、新築の「法的瑕疵物件」はほとんどないと考えても良いでしょう。

しかし、中古物件の中には「法的瑕疵物件」に該当するものがありますので注意が必要です。

これは、「建築基準法」や「都市計画法」「消防法」などが施行される以前や改正される前に建築されたり造成されたりしたために、建物や敷地が最新の法律に適合していない状態になっていることが原因です。

法的瑕疵物件と関係する3つの法律

「法的瑕疵物件」とは、不動産関連のいずれかの法律に抵触している物件のことですが、「法的瑕疵物件」と関係する主な法律は次の通りです。

法的瑕疵物件と関係する3つの法律

  • 【1】建築基準法
  • 【2】都市計画法
  • 【3】消防法

以下では、それぞれの法律の概要と、その法律に抵触する「法的瑕疵物件」の例などについて説明します。

【1】建築基準法

「建築基準法」は1950年に制定された法律で、建築物や建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低限の基準が定められています。

制定後に何回かの改正が行われており、直近では2006年に改正されて、現在の内容となっています。

「建築基準法」の目的は、建築物の安全を確保することによって、国民の生命・健康・財産の保護を図り、公共の福祉を増進させることです。

そのために、建築物や建築物の敷地・構造・設備・用途を対象として、その敷地に建築できる建築物の用途(居住用や事業用など)、建築物の大きさ(容積率や建ぺい率、敷地面積、高さなどの上限)について細かく規定しています。

また、「建築基準法」の下には、「建築基準法施行令」「建築基準法施行規則」「建築基準法関係告示」が定められており、建築物を建築する際の技術基準や建築物を安全に維持するための技術基準などが具体的に規定されています。

「建築基準法」が関係する主な「法的瑕疵物件」としては、次のようなものがあります。

「建築基準法」が関係する主な「法的瑕疵物件」

  • 「建築基準法」の構造上の安全基準を満たしていない物件
  • 「建築基準法」が定める接道義務を満たしていない「再建築不可物件」
  • 「建築基準法」が定める容積率や建ぺい率に違反している物件

【2】都市計画法

「都市計画法」は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として1968年に制定された法律で、計画的な市街地開発や道路・公園・上下水道などの施設設備の基本的なあり方が規定されています。

「都市計画法」では、国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類しています。

「都市計画区域」とは都市計画を行って総合的に整備・開発が行われる地域のことであり、「準都市計画区域」とは乱開発を防止すべき地域のことです。

さらに、「都市計画区域」を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分して、無秩序な開発を防止して計画的な市街化を図っています。

「市街化区域」は、既に市街化が行われている地域のことであり、「市街化調整区域」は市街化を抑制すべき地域のことです。

「市街化区域」と「市街化調整区域」のどちらにも区分されていない地域のことを「非線引き区域」といいます。

また、「用途地域」という分類もあり、これは住居や商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、「第一種低層住居専用地域」などの13種類に分かれています。

「都市計画法」が関係する主な「法的瑕疵物件」には、次のようなものがあります。

「都市計画法」が関係する主な「法的瑕疵物件」

  • 原則として建築物を建てることができない「市街化調整区域」内にある物件
  • 計画道路予定地のために建物の建築に制限が設けられている物件
  • 「用途地域」ごとに定められた建ぺい率や容積率を順守していない物件

【3】消防法

「消防法」は、人の命や財産を守るために火災の予防・警戒・鎮圧や、火災発生時の被害抑制や傷病者の搬送を適切に行うことを目的として、建築物などについて防火・消防上必要な規制を定めた法律で、1948年に制定されました。

「消防法」は防火対象物と消防対象物に適用されますが、建築物は防火対象物にも消防対象物にも該当しますので、全ての建築物は「消防法」の対象となります。

「消防法」の下には、「消防法施行令」や「消防法施行規則」があり、関連するものとして「消防組織法」や各自治体が定めた「火災予防条例」があります。

建築物を管理する者に対しては、防火管理者の設置、危険物の貯蔵や取り扱い、消防設備の整備や定期点検などが規定されています。

一般住宅に対しては、マンションや一戸建てなどの寝室を有する建物には火災報知機を設置することが義務付けられています。

「消防法」が関係する主な「法的瑕疵物件」には、次のようなものがあります。

「消防法」が関係する主な「法的瑕疵物件」

  • 設置義務のある防火設備(防火扉、防火シャッターなど)が設置されていない物件
  • 設置義務のある防災設備(消火器、スプリンクラー、火災報知器、ガス漏れ警報器、避難はしご、誘導灯、排煙設備、防火設備など)が設置されていない物件
  • 設置されている防火設備や防災設備が故障している物件
  • 設置されている防火設備や防災設備が老朽化している物件

もし、購入した物件の防火設備や防災設備が最新の法律を遵守していない場合や故障・老朽化している場合は、法律の規定に従って設備の導入や更新をする必要があります。

法的瑕疵物件かどうかを確認する2つの方法

もし、「法的瑕疵物件」であることを知らずに物件を購入してしまうと、後々増改築や建て替えなどができなくなりますので注意が必要です。

購入する前に「法的瑕疵物件」かどうかを確認する方法としては、次の方法があります。

「法的瑕疵物件」かどうかを確認する方法

  • 方法1:自治体の窓口に問い合わせる
  • 方法2:都市計画図を閲覧する

以下、それぞれについて説明します。

方法1:自治体の窓口に問い合わせる

「法的瑕疵物件」かどうかを確認する方法の一つに、自治体の窓口に問い合わせる方法があります。

自治体によって窓口となる担当部署の名称が違うことがありますが、一般的には都市計画課や建築指導課などが相談窓口となります。

また、直接窓口に行って問い合わせるのが一番良いのですが、電話で確認が取れる場合もあります。

方法2:都市計画図を閲覧する

「法的瑕疵物件」かどうかを確認するもう一つの方法は、自治体が作成している「都市計画図」を閲覧する方法です。

自治体の窓口(前項と同様に一般的には都市計画課や建築指導課など)で閲覧の申請をすれば見ることができ、対象物件の周辺の市街化区域や市街化調整区域などの指定状況や都市計画道路の有無を確認することができます。

なお、自治体によってはネットで「都市計画図」が閲覧できるようになっている場合もあります。

すでに購入してしまった場合は専門の買取業者へ売却するのが最善策

これから中古住宅などの購入を考えている方は、自治体の窓口に相談して購入予定の物件が「法的瑕疵物件」でないことを確認してから購入することをおすすめします。

しかし、すでに中古で「法的瑕疵物件」を購入してしまった方の場合は、とるべき方法として、大きく「そのまま住み続ける」か「売却する」かの2択になります。

「売却する」場合は、一般の不動産会社に仲介を依頼して売却することは難しいため、専門の買取業者に依頼して買い取ってもらう方法が最善策でしょう。

専門の買取業者であれば、老朽化している物件であっても接道義務が果たせない物件であってもそのままの状態で買い取ってくれます。

もし、「そのまま住み続ける」場合は、将来老朽化したときなどにリフォームや建て替えをしようと思っても「再建築不可物件」のため建て替えができないという問題に直面する可能性があることを認識しておく必要があります。

このように、「法的瑕疵物件」に「そのまま住み続ける」ことは、問題を先送りにしているということもできますので、早い時期に専門の買取業者に売却した方が良いでしょう。

物件を購入する前に法的瑕疵の有無を確認しよう!

この記事では、「法的瑕疵物件」の基礎知識や確認方法などについて説明し、既に購入してしまった場合の売却先としては専門の買取業者が良いということを紹介しました。

不動産を購入する際、特に中古物件を購入する際は、事前に自治体の窓口に問い合わせをするなどの方法によって、その物件が「法的瑕疵物件」に該当していないかどうかをきちんと確認するようにしましょう。

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