事故物件はどれぐらいで売れる?売却相場や高く売る方法について
相続などにより、親族のどなたかが逝去した現場となった「事故物件」を所有するケースが増えています。
こうした事故物件とは、全くの第三者であれば当然のこと、親族であっても住むことや利用することに抵抗があるものです。
そんな事故物件を早く手放す方法や売却する方法は、一見ないかのように思えてしまいます。
しかしながら、自然死や自殺、事故死などが発生した事故物件であっても「売却」による処分が可能です。
一方、事故物件の売却に際しては、新規に買う側へ「事故物件であることを伝える」という意味合いでの「告知義務」が生じ、このことにより相手に心理的負担が起こり、相場価格よりもかなり値段を下げなければ一般的な不動産仲介などでは売れづらくなることも一般的です。
そこで今回は、こうした「不動産が事故物件となってしまうケース」を事例別に解説しつつ、事故物件でも相場に近い価格で売るための方法、事故物件の相場価格を知る方法などについて深堀りします。
さらには、事故物件の告知義務についての詳細、それでも事故物件を好条件で売却するための方法についても合わせて解説するため、ぜひ事故物件の処分に困った際に参考にしてみてください。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 事故物件の売却価格は相場より20〜50%安くなる
- 2. 【ケース別】事故物件の売却相場
- 2.1. ケース1:自然死(特殊清掃をした場合)
- 2.2. ケース2:自殺
- 2.3. ケース3:他殺
- 3. 事故物件でも売却価格が下がりにくい場合もある
- 3.1. <1>立地条件が良い場合
- 3.2. <2>建物の損傷や臭いがほとんどない場合
- 3.3. <3>事件性が低くい場合
- 4. 事故物件の売却相場を自分で調べる方法
- 4.1. 【1】一括査定サイトを活用する
- 4.2. 【2】買取業者に無料査定を依頼する
- 5. 事故物件の売却時に負う告知義務とは
- 5.1. 隠して売却した場合は、損害賠償を請求されることも
- 6. 事故物件をなるべく高く売却する方法
- 6.1. 方法1:建物は更地にせず、そのままの状態で売却する
- 6.2. 方法2:一般仲介で売却する(条件が良い場合)
- 6.3. 方法3:訳あり物件専門の買取業者に売却する
- 6.3.1. メリット1:そのままの状態でスピード売却できる
- 6.3.2. メリット2:契約不適合責任が免責される
- 6.3.3. メリット3:周囲にバレずに売却できる
- 7. 事故物件を手放すなら専門の買取業者に相談しよう!
事故物件の売却価格は相場より20〜50%安くなる
事故物件とは、購入時に買い手・借り手側が事故物件であることを気にして買い控えを起こすことがあるため、需要が低いとみなされ、同条件の事故物件ではない不動産に比べて売却額が下がります。
2023年に行われた不動産市場における調査報告では、「これから新たに住む物件が事故物件かどうか」を気にするユーザーは全体の80%を越えています。
つまり、ほとんどの新規入居者とは事故物件に抵抗感・ためらいを持っているといえるのです。
事故物件になる理由とはさまざまであり、自然死だけでなく、自殺や他殺が起きたことによっても事故物件となることがあります。
このため、事故物件の売却相場はその背景にも左右されつつ、同条件の不動産にとっての相場よりも20~50%下がることになるのです。
このように物件が事故物件であることは、同時に需要がないことを意味します。
需要がないのであれば、購入候補者が少ないわけです。
つまり、事故物件の売り手側は市場において注目を集めるために、事故物件の価格を下げざるを得なくなります。
相当に立地条件がよいというようなケースでもなければ、顧客の注目を引く手段とは価格調整ぐらいしかなくなってしまうのです。
事故物件とは、その不動産が事故物件である事実を隠して売りに出すと法律違反です。
そのため、当該物件が事故物件であることを必ず売り手側が知っているという状況は避けられません。
【ケース別】事故物件の売却相場
事故物件とは、以下の通り「事故物件になるまで」のケースによって性質が異なります。
事故物件になるまでのケース
- 自然死(特殊清掃をした場合)
- 自殺
- 他殺
各ケースごとに入居希望者の心象、物件の価値の下落度合いには違いがあるため、事故物件の売却価格の下がり方は異なるものです。
そこで本章では、事故物件が抱える背景・ケースごとに異なる売却相場がどのようになっているのかについて詳しく解説します。
ケース1:自然死(特殊清掃をした場合)
ある物件において、自然死した方がいたとします。
自然死の中でも、「孤独死」を迎えた方がいた場合、遺体が放置されてしまい、物件に影響を及ぼした可能性があるため、この事故物件においては特殊清掃を行うことになります。
特殊清掃とは以下の行為です。
特殊清掃を行う理由は、原状回復の意味合いが強いです。
つまり発見までに時間経過を伴った状況のように遺体が「放置」されてしまうと、腐敗により室内環境に臭気など変化を与えてしまうことになるため、そうした状態を撤去する作業が必要なのです。
特殊清掃によって「自然死(遺体放置)による影響」が及ぼした名残をなくすことは可能なものの、特殊清掃を行ったからといって事故物件となってしまった不動産に対する市場からの嫌気をすべて撤廃することができるわけではありません。
そのため、特殊清掃を施された「遺体放置があった事故物件」であっても、通常の相場よりも10%~20%は売却価格が下がることを覚えておくべきです。
ケース2:自殺
事故物件となった背景が「自殺」である場合も、自殺の状況、その後のケースなどによって売却価格の下がり方にばらつきがあります。
自殺とは手段に違いがあり、発見までには時間差もあるものです。
当人の死亡場所・時期が住居内か、医療機関に搬送された後でなのかは分かれるものの、自殺を背景とする事故物件であることはあらかじめ入居候補者に対して告げられることになります。
新たに知った物件が「自殺を背景とする事故物件」であることを知った入居候補者は、自然死を背景とする事故物件などと比較して、かなり戸惑うことが予想されます。
さらに、自殺の手段によって部屋の汚れなど残骸の範囲が異なることがあり、こうした要因は大きく物件価格に影響するのです。
部屋に対する汚染が少ない形の自殺が行われた場合は物件価値の減額が狭まることがあるものの、自殺を背景とする事故物件の売却価格とは、一般的に同条件の不動産よりも相場価格が20%~30%下がることになります。
ケース3:他殺
自然死や自殺に比べ、他殺があった事故物件とは、より市場から購入が避けられる傾向にあります。
他殺とは、各種メディアで「報道」されてしまうことがあります。
報道の中でも殺人事件であれば、周囲から広く認知され、悪印象を持たれてしまうことになるのです。
こうした印象は、事件が解決したり、数日経過した程度ではなくなりません。
つまり当該地域全体が、社会から注目され続けたり、うがった印象で見られ続けられがちなのです。
自らすすんでそのような地域にある物件、まして殺人事件が実際に起きた物件を買おうとする入居希望者はまれです。
このように他殺にまつわる事故物件の市場におけるイメージとは、他のケースで事故物件となってしまったものと比較してもより悪いものとなり、売却相場がさらに落ちることになります。
こうした背景により、他殺が起きた事故物件の売却価格とは、一般的に相場の半額以下となります。
事故物件でも売却価格が下がりにくい場合もある
町なかにある不動産屋のガラス窓などに張り出されているチラシで、物件価格に落差があるように、事故物件でもさまざまな要因によって価格に差が生まれます。
特に以下のような状態であれば、事故物件であっても大きな価格の減衰もなく売却できるとされています。
事故物件でも売却価格が下がりにくい場合
- 立地条件が良い場合
- 建物の損傷や臭いがほとんどない場合
- 事件性が低い場合
そこで本章では、事故物件における「売却価格が下がりにくい」各ケースについて、それぞれ詳しく解説していきます。
<1>立地条件が良い場合
不動産とは、事故物件であるかないかに関わらず、その立地条件により価格が大きく左右されます。
このため、事故物件であっても以下のような状況であれば「立地条件がよい」と考えることができます。
立地条件が良いと言われる条件
- 駅からの距離が近い
- バス停がある道路に面している
- 商業施設が近くにある
- コンビニが近い
- 病院が近い
このように交通インフラ、生活インフラに恵まれた物件は住環境がよく、事故物件であったとしてもマイナス面が考慮されず入居希望が殺到することすらあります。
さらに物件の築年数や敷地の広さ、間取り、設備なども市場からの好感度に影響します。
このように、一般的な不動産を売買する際に考慮されるポイントとは、事故物件を扱う際にもそのまま転用されると捉えてください。
一方、以下のような環境であると「立地条件が悪い」とされます。
立地条件が悪いと言われる条件
- 商業施設や病院など生活インフラから遠い
- 交通機関から離れている
- 近くに産業廃棄物処理場(香り面を懸念される)がある
- 近くに葬場や火葬場などがある
<2>建物の損傷や臭いがほとんどない場合
事故物件であっても、以下のような「損傷」を撤去できた状態であるのならば、入居希望者から好感される可能性があります。
建物の損傷
- 床や壁紙に付着した血液
- 体液、その他
- 悪臭
こうした損傷とは、自殺や他殺含め、自然死・孤独死など人が亡くなった事故物件の背景であればいずれかがほぼ確実に残りうるものです。
このような状態の事故物件については通常のハウスクリーニングサービスなどではなく、特殊清掃により元の状態に戻すことが求められます。
特殊清掃では専門的な化学薬品や器具などを用いて清掃するため、可能な限り部屋の状態を原状まで復帰させられます。
つまり特殊清掃の効果がどこまで発揮できたかによって、事故物件の価格は左右されるといえます。
<3>事件性が低くい場合
事故物件の価格は、その物件が事故物件となった背景にも左右されます。
つまり「事故」の内容が重視され、一般的には「自然死や孤独死」より、「自殺や他殺」が背景である場合に売却価格が低くなります。
特に背景が他殺である場合は、地域内外からの悪印象も減衰することがほぼなく、物件の価値が軽くても相場価格の50%ともなるのです。
事件について当時のメディアなどで大きく報道がされてしまうと、全国的に「あの事件が起きた場所の……」という形で誰でも当該事件を想起できる状態となってしまい、いくら価格を下げても買い手がつかないような状態ともなってしまうことがあります。
事故物件の売却相場を自分で調べる方法
手持ちの物件が事故物件だったとしても、売却した際の相場を調べることは可能です。
事故物件の売却相場を調べるためには、以下の方法が利用できます。
事故物件の売却相場を調べる方法
- 一括査定サイトを活用する
- 買取業者に無料査定を依頼する
以下からは、それぞれの事故物件の売却相場調査方法について詳しく解説します。
【1】一括査定サイトを活用する
人を介さず、専門的な調査を行う必要もない手軽な売却相場の調査方法として、「一括査定サイト」のようなインターネット上のサービスを利用して、事故物件の売却相場を調べる方法について紹介します。
一括査定サイトとは、指定のフォームに「自分が売ろうとする物件に関する情報(状態、地域など)」を入力して送信すると、複数の不動産買取業社による査定額が一覧で表示されるサイトです。
一括査定を利用し、複数社から査定額を算出させるメリットとは以下の通りです。
一括査定サイトを活用するメリット
- 事故物件についての売却価格相場を認識
- 相場を理解することで、悪意ある業者などによる買い叩きを防ぐことができる
- より高い価格で買取に応じる可能性がある、査定額の高い業者が判明
- 見積もりが提示された相手方と必ずしも契約を結ぶ必要はない
事故物件の売却価格相場を算出するには、各業者から提示された査定額をそれぞれ足し合わせ、社数分で割り算し、得られた「平均値」の額を利用してみてください。
計算によって得られた手元の売却価格を基準とすることで、以後の買取業者探しがスムーズに進められるのです。
【2】買取業者に無料査定を依頼する
いわゆる「訳あり物件」を専門とする買取業者に対しては「直接査定」が依頼可能です。
買取業者とは、自社サイトに無料査定フォームを用意しているケースがほとんどであり、一般的な買取業者の公式ページには、一括査定サイトのように査定のために物件情報を入力できるフォームが用意されています。
この場合もフォーム内に「備考欄」が存在し、物件の詳細情報などを記入することで事故物件でも査定額を得ることが可能です。
しかしながら業者のフォームでは個別に対応することで査定までの返事に時間を要したり、こちらが差し出す情報によっては電話番号やメールアドレス等に対する営業を受け続けることにもつながるため、 提示する情報には注意した上で利用してください。
買取業者の査定額とは、後から同社が現地を見分して算出する実際の売却価格と比較的差がないことが特徴です。
また不動産仲介業者も無料査定サービスを提供していることはあるものの、実際の売却額は売り主と買い主による交渉で決まるため、こちらでは実際の売却価格と査定額が大きく異なりがちです。
事故物件の売却時に負う告知義務とは
事故物件を売却により手放し、別の方に所有権が移る際には、その物件が事故物件である旨を伝えなければなりません。
事故物件には何らかの瑕疵(かし)がある状態です。
瑕疵とは、売買などの取引に関わる当事者が当然予測できるような状態ではなかったり、あるはずの性質が欠けていたり、法律的な要件を満たしていない状態のことです。
この「瑕疵がある状態」を伝えなければならないという決まりは、事故物件の売却においては「告知義務」と呼ばれており、告知義務を怠って事故物件を売り渡した場合、買った方からあとあと損害賠償請求を受けるなど大きなトラブルを引き起こしてしまいます。
事故物件の売り主には、以下のような種類・内容の瑕疵がある場合、買う側の方へ告知を行う義務が付随します。
告知が義務となる瑕疵の種類 | 瑕疵の内容 | 告知の仕方 |
---|---|---|
心理的瑕疵 | ・自然死、殺人事件や自殺などで人が亡くなったことがある ・物件の周辺に暴力団など反社会的勢力の集会所、事務所がある ・異臭を漂わせている工場など建物がある ・墓地や葬儀場が近い など…… | 事故物件をはじめ、こうした心理的瑕疵が存在する物件を売却する際、売買契約書に心理的瑕疵に関する事項を明記 |
物理的瑕疵 | ・物件自体に欠陥が生じている(例:柱が腐食している、雨漏りがある) | 買い手に対し、事前にどのような不具合があるのかを告知(買い手が告知内容に納得すれば契約不適合責任には問われないものの、契約書に記載されていない「隠れた瑕疵」が後から見つかった場合、損害賠償請求が起こる可能性あり) |
法律的瑕疵 | ・都市計画法、建築基準法など「建物を建てる際に遵守すべき法律」に違反している不動産である(例:接道義務違反=敷地が道路に2m以上設置してないため建て替え不可/耐震基準など構造上の安全基準が現行法を満たしていない、など) | 売却時に重要事項として説明(法律的瑕疵物件の購入者が購入後に建て替えを行いたいのに、それが不可能となることを知らない可能性があるため) |
隠して売却した場合は、損害賠償を請求されることも
不動産を売却する側が買った人に対して、例えば、実は水道が壊れていて水が出ないなど「物理的瑕疵」に関する告知義務を怠った場合、後から契約不適合責任を問われ、損害賠償を請求されることがあります。
契約不適合責任とは、売る側が買う側に引き渡した物やサービスに欠陥や不具合が見つかるなど「契約内容に適合しない」と判明した際、売る側が買う側に対して負わなければならない責任です。
契約不適合責任を回避するには、以下の方法があります。
契約不適合責任を回避する方法
- 売買契約書に「売主の契約不適合責任免責」の条件を記載し、合意を得る
- 売却前にホームインスペクション(住宅診断士による住宅調査により、物件に不具合があるかどうかや改修すべき箇所が残されているかどうかなどについての診断をおこなうこと)をおこない、瑕疵を見つけて修繕する
こうした告知義務は、すべての瑕疵について負うものです。
そのため物理的瑕疵だけでなく、心理的瑕疵や法律的瑕疵に関する内容の告知を怠ったのであれば、同様に損害賠償請求が行われることがあるため注意してください。
過去、東京地裁における平成12年8月31日の判例では、50年以上も前に発生したという殺人事件の事実を告知しなかったことで、契約不適合責任を追及されたことがありました。
さらに、こうした告知義務とは「事件の現場となった建物を解体し、更地にした状態」で取引を行ったとしても売却側に課せられます。
こちらも実例として、大阪高等裁判所における平成18年12月19日の判例にて当時から8年前起きた殺人事件の現場となった建物を解体、更地とし、殺人事件が起こったという事実を告げずに土地を売買したケースにおいて「心理的欠陥」の残存が指摘され、売却した側に損害賠償が命じられました。
告知義務違反とは、このように大きなトラブルの元となります。
事故物件の取引の際には、告知義務を遵守し、事故物件の内容を隠さずにお伝えするようにしてください。
事故物件をなるべく高く売却する方法
事故物件を売却する上では、通常の不動産のように立地条件がいいなど各種条件を満たすことで高く売却することが可能です。
しかしながら、後からは物理的に満たせない条件もあります。
そんなときでも覚えておきたい、事故物件の価値を下げず、できるだけ価値を保った状態で高く売却するための方法とは以下の通りです。
事故物件をなるべく高く売却する方法
- 建物は更地にせず、そのままの状態で売却する
- 一般仲介で売却する(条件が良い場合)
- 訳あり物件専門の買取業者に売却する
そこで以下からは、この「事故物件を売却する際に、できるだけ高い価格で売却する方法」それぞれについて詳しく解説します。
方法1:建物は更地にせず、そのままの状態で売却する
事故物件を高く売却するため、さらに各種経費を最低限に抑えるためには、建物を解体せずに売却する方法が挙げられます。
一般的に建物の解体費用とは「数百万円単位」で発生することになります。
さらに、建物を解体しても告知義務が消えるわけではありません。
事故物件である背景についての告知義務が消えないということは、建物を解体したところで事故物件であることを理由に市場において取引が忌避される可能性が残り続けることを意味します。
建物を解体し、更地で売買するケースとは、一般的に解体費用を回収できるほど好条件で売却できる見込みがあるからこそ起こりうるものです。
更地となった事故物件の売買においては、取引が成立したとしてもほぼ確実に相場よりは安い値段での取引となるため、解体費用が回収できない可能性が高く、最悪の場合ではいつまでも売却が成立しないこともあるのです。
また建物の解体については、「固定資産税の増額」というデメリットも存在します。
もし解体前の事故物件が住宅だった場合、それまでは「住宅用地の特例」により固定資産税についての減税措置を受けられていた状態でした。
しかしながら解体によりその住宅用地がなくなってしまったのであれば、解体を行った年の翌年以降からの土地固定資産税が最大6倍ともなってしまうのです。
このように、解体費用が回収できない可能性、売却不成立の状態が続くことによる経費支出が膨れ上がってしまう以上、事故物件の安易な解体・更地化は行うべきではありません。
方法2:一般仲介で売却する(条件が良い場合)
事故物件とは、立地条件などに恵まれていることがあります。
そもそも不動産とは、立地条件など「状態に応じて価格が大きく変動するもの」です。
こうした要件とは事故物件においても同様であり、条件に恵まれた事故物件とは通常の不動産と同様に、仲介にて買い手を探して売却することが容易な場合もあります。
例えば駅チカなど立地条件がよい事故物件であれば、同エリア内の駅から離れた物件などよりも高い価格がつくことも珍しくはありません。
一般的に不動産仲介では、独自に獲得した販路の広さを活用し、条件のよい物件があることをアピールします。
このため、立地条件さえよければ事故物件であることは意に介さないといった買い主を見つけやすくなるのです。
不動産仲介では、一人でも購入希望を表明すれば相場の価格を超えた値付けも可能となります。
しかしながら、事故物件を売却するのであればもちろん特殊清掃などを済ませておき、最低限の痕跡を消去して原状復帰をもたらしておくことは必須となります。
特殊清掃の費用について、間取り4LDK以上の物件においては20万円~60万円を見込んでください。
立地条件がよい物件は事故物件でも売却の見込みがあるものの、「買い主を探す」という営業形態である以上、いつまでたっても売却先が見つからないこともありえます。
このため、どうしても仲介で事故物件が売れないのであれば、以下からも紹介する直接売却といった方法が適している可能性もあります。
方法3:訳あり物件専門の買取業者に売却する
事故物件は、買い手側にどうしても忌避感を与えてしまうものです。
このため、どれほど立地条件が良かったとしても長い間売れ残ってしまうことがあるものです。
事故物件の売却を仲介業者に任せた場合、せっかく立地条件がよい物件なのに、過剰に売却額を引き下げてまで売り逃げようとする不動産仲介が存在するかも知れません。
そうした明らかに損してしまうような方法を選びたくない時は、事故物件のような「訳あり物件」を専門とする不動産買取業者を選択し、直接買い取りを持ちかけるという方法が選べます。
専門の買取業者は事故物件のような瑕疵がある物件であっても、独自のノウハウや販路、顧客リストを利用し、収益化が見込める物件として再生させることが可能です。
つまり「居住目的に転用可能な物件の買い取り」が買取業者にとって事業内容の主軸というわけではないため、事故物件であっても構わず買い取れるのです。
先の例のように、立地条件がよい物件なのであれば高額買取の傾向はより顕著となります。
どうしても駅チカで飲食店などを開店させたいオーナーなどが存在した場合、事故物件であっても条件を満たしているのであれば引き取りたいなどと考えるかも知れません。
専門の買取業者は、こうしたオーナーや不動産投資家のような層ともつながりを持っているため、瑕疵ある物件でも買い取れるような立ち位置となっているのです。
決して、悪用だったり法律に触れるような運用をするために訳あり物件を買い取るわけではないため、売却する側は手放した物件のその後について心配する必要はありません。
一方、訳あり物件専門の買取業者に直接買い取りを依頼する上では注意点も存在し、以下のようになっています。
訳あり物件専門の買取業者に直接買取りを依頼する注意点
- 訳あり物件専門の買取業者の中には、事故物件の取り扱いに応じていないパターンも存在する
- 元来、事故物件の取り扱いには高い専門性が必要
- 訳あり物件専門の買取業者が事故物件に対応しているかどうかは、業者公式のホームページや口コミなどから判断するしかない
- 査定価格は、買い取る事故物件の活用法の幅広さに左右される
- 査定は複数の買取業者に依頼し、価格の比較や事故物件の扱いが得意かどうかの確認に活用する
事故物件の取り扱いが可能な専門の買取業者は、実際の買い取り実績などを持っているものです。
このため、公式サイトや運営ブログといった場所を参照すれば、自己のケースに近い事例があるかどうかを確認しやすくなります。
また、事故物件を売却した後のことが気になる方にとっても、一度買取業者の公式ページなどを見聞しておくことをおすすめします。
この理由として、買い取り実績がある業者であれば、これまでの事故物件買い取り例や、事故物件の再利用例といった実例を提示していることが多いため、心象的にも安心して売却できるためです。
そのほか、事故物件を専門の買取業者に売却するメリットは下記の通りです。
事故物件を専門業者に売却するメリット
- そのままの状態で売却できる
- 契約不適合責任が免責される
- 周囲にバレずに売却できる
以下からは、事故物件を訳あり物件専門の買取業者に売却することで得られるメリットそれぞれについて、より詳しく解説します。
メリット1:そのままの状態でスピード売却できる
事故物件を一般的な不動産仲介で売却する場合、特殊清掃などを施して原状復帰を行うことは最低限の行為とされています。
しかしながら、事故物件の買い取りを専門とする業者に直接買い取りを依頼するのであれば、こうした手続きをカットすることが可能です。
つまり特殊清掃費用など、事故物件を売却するために必要だった経費が丸ごと必要なくなるのです。
専門の買取業者とは独自のノウハウやつながりによって、特殊清掃など諸コストを軽減させる方法も知り尽くしているため、そうした最低限の経費を折り込み済みの額を提示して買い取りに応じます。
買取業者は、買い取った事故物件を「商品化」させることで買い取り費用や諸経費など初期投資の回収が可能なのです。
このように事故物件の売却でありながら、売り主がなにもせずに現金化可能なことは仲介などに比較して大きなメリットといえます。
また査定依頼や無料相談を経て、実地調査の結果、最終的に提示された売却額に売る側が納得したのであれば、最短3日程度での売却を可能とする専門業者も存在するほど、スピード買取が可能な点もメリットです。
メリット2:契約不適合責任が免責される
事故物件のような瑕疵がある物件であっても、専門の買取業者へ直接売却を行うことで売る側の「契約不適合責任」が完全に免責されます。
契約不適合責任が免責される理由は、「個人による宅建業法人への物件の直接売却」において、宅建業法40条により物品を売る側の契約不適合責任は免責となるためです。
事故物件について、仲介などによる個人間の取引となると、後から「特殊清掃があったという割に異臭がする」「妙なシミがあり、怖い」などというクレームが来てしまったり、責任の所在が不確かな事象が起きたとして契約不適合責任に基づく損害賠償請求をされる可能性がゼロではありません。
しかしながら契約不適合責任が免責されるのであれば、こうしたリスクからも解放されるのです。
またそもそも買取業者自身が不動産活用ノウハウを持っているため、事故物件にどのような瑕疵があろうとも再生可能です。
訳あり物件の買取業者とは、言い換えれば「瑕疵ある物件の瑕疵を探し出し、排除するプロ」でもあります。
このように専門の買取業者による買取であれば、所有者側もどんな瑕疵があるかが把握しきれていないような事故物件であっても、売却する前後において所有者は責任追及の心配をせず売却に至れるのです。
メリット3:周囲にバレずに売却できる
「訳あり物件専門の買取業者」への事故物件の売却では、近所の人々に「売却の事実」を隠したまま売却ステップを完了させることが可能です。
業者が相手であっても、売却時には心理的瑕疵などの告知義務はあります。
このように当該物件が事故物件であることについては、買い取る業者側には把握されるものの、買い取りステップは直接買い取りの方法により速やかに進行します。
つまり、売買契約に関する諸条件や買取額などに事故物件の所有者側が合意さえできたのであれば、建物の所有権などはすぐ正式に業者側に移るため、周囲にバレずに売却することが可能なのです。
一方、業者によっては特殊清掃費用などを買取額に折り込んだ結果、やや安めの買取額が提示されることもあるため注意してください。
事故物件を手放すなら専門の買取業者に相談しよう!
今回は、事故物件の売却相場や、事故物件であることを隠さずに高く売却する方法について解説しました。
事故物件とは、その心理的瑕疵などが背景となり、一般的な不動産相場から比較するとかなり売却額が下がってしまうものです。
事故物件の抱えたケース(自然死、他殺など)により、売却額の下落幅はさまざまです。
しかしながら、立地条件が良かったり、損傷が少ない物件であれば、一般的な物件程度の価格帯での取引も可能となります。
一括査定サイトや買取業者の無料査定などで、事故物件の売却相場を個人のみで調べる方法は存在します。
ぜひ事故物件の売却前には、売却額の調査をすることで、相場価格についての知識を養いましょう。
一方、事故物件の売却に際しては、その物件が事故物件であることを売却先に通知する「告知義務」が売り主に課せられます。
事故物件であることを隠して売却してしまうと、あとあと損害賠償などかなりの費用をともなうトラブルのもととなるため、告知義務には必ず従ってください。
事故物件を高く売却したいのであれば、更地にしないこと、立地条件などが優良である場合は仲介を利用すること、事故物件専門の買取業者選ぶこと、などが方法として挙げられます。
専門の買取業者を相手にした直接買い取りであれば、特殊清掃費などの費用負担をしなくてもよい上に、スピード買取、契約不適合責任の免除、周囲にバレないままの売却といったメリットを受けることができます。
もし事故物件の処遇に困った際は、多くのケースで無料相談を承っている専門の買取業者への売却をおすすめします。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。