空き家を放置すると固定資産税が最大6倍になる?増額を防ぐためにできること

空き家とは不動産であるため、固定資産税がかかります。

現在、政府の方針として管理が行き届いていない空き家の税優遇を減らそうという動きが見られています。

もし、あなたが管理不足の空き家を持っている場合、固定資産税が最大6倍になってしまう可能性があるのです。

そこで今回は、なぜ空き家の固定資産税が増額してしまうのか、その対象となる家屋はどんなものなのかに加え、管理不足の空き家を処分したり、売却するなどして、増額する固定資産税から身を守る方法について解説します。

すべての空き家の固定資産税が6倍になるわけではない

固定資産税が6倍になるのは、空き家であれば無条件にというわけではありません。

空き家の中でも、「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税が6倍になります。

そもそも空き家における固定資産税とは、その年の1月1日時点での空き家所有者(所有者不明の場合は空き家利用者など)が支払責任を負うものです。

維持管理がなされている空き家であれば、固定資産税の算出方法と額は以下のようになります。

今回は、「家の評価額が500万円」、「土地の評価額が3,000万円」、「土地面積が350㎡」の空き家を例に出します。

空き家の固定資産税の算出例

  • 「土地の固定資産税」の計算方法=固定資産評価額×1.4%×軽減税率
  • 「家の固定資産税」の計算方法=固定資産評価額×1.4%
  • 最終的な固定資産税の算出方法は「土地の固定資産税+家の固定資産税」であるため、17.8万円

軽減税率とは、住宅が建っているとみなされることにより特例として適用される、固定資産税支払いの上で有利となるものです。

この特例は、「住宅用地の特例」といいます。

空き家でも住居とみなされれば、住宅用地の特例が適用されます。

住宅用地の特例が適用されると、「土地の固定資産税に対してのみ、軽減税率が適用」となるのです。

また「住宅が建っている土地」についての軽減税率は、以下のように状況に応じて変化します。

「住宅が建っている土地」についての軽減税率

  • 土地面積が200㎡以下の部分にかかる軽減税率:1/6
  • 土地面積が200㎡超えの部分にかかる軽減税率:1/3

空き家にかかる固定資産税とは、このようになっています。

固定資産税が6倍になる仕組み

固定資産税が6倍になる空き家とは「特定空き家」です。

特定空き家とは荒廃している家屋であるとみなされており、居住用の建物として扱われません。

そのことにより土地に対する税率の控除制度が適用されなくなり、住宅用地の特例による最大1/6の軽減税率が得られなくなるのです。

このため、対策がされていない空き家は固定資産税が6倍になる可能性があるとされるのです。

そもそも特定空き家とは?

「特定空き家」という概念が定められたのは平成26年のことでした。

特定空き家についての規定を定めた法律は「空き家対策特別措置法」といいます。

大まかな特定空き家の概念とは、「周辺の住環境や景観を著しく損ねる空き家」です。

特定空き家の認定は国や自治体が行います。

固定資産税が6倍になる可能性が生じるのは、特定空き家に認定された翌年からです。

以下からは、特定空き家に関するより細かい情報について解説します。

特定空き家に指定される条件

特定空き家に認定されるのは、空き家が以下に挙げる条件に当てはまった場合です。

特定空き家に指定される条件

  • 適切な管理が行われておらず、景観を損なっている場合:例えば、「窓ガラスが割れたまま、家がおびただしく成長した草木などに覆われてしまっている」など
  • 「周辺の生活環境保全」のために、その空き家を放置すべきではない場合:例えば、「土砂が大量にある」「周囲に石や枝があふれ通行妨害する」「当該空き家へ簡単に侵入できてしまう」など
  • 当該空き家を放置すると、倒壊などの危険がある場合:例えば、「建物が傾斜している」「建物の土台が腐りはじめている」「外壁が剥がれ落ちたりしている」など
  • 当該空き家を放置すると、衛生上有害なことが起こる場合:例えば、「害虫や害獣が発生したり住みつく」「廃棄物が放置されている」など

指定されても改善が認められれば特定空き家から除外される

国や自治体は、問答無用で空き家を特定空き家に認定してくるわけではありません。

つまり、空き家が特定空き家に指定されても、税額控除の特例などをすぐに外されるわけではないのです。

空き家が特定空き家に認定される前には、その空き家に対して改善を求める通達が来ます。

この改善を求める期間は猶予期間となっており、その間に特定空き家となる条件をなくせば特定空き家の指定を解除できるのです。

空き家が特定空き家と指定され、特例が解除されるまでには、以下のステップを追うことになります。

丸いアイコン(アウトラインの方)の線の色を変更する場合は「グループ」ブロックの「色」→「テキスト」の色を変更してください。

当院での初診から治療の流れをご案内します。

空き家がどのような状況か、国や自治体により調査される

STEP
1

調査の結果、当該空き家が特定空き家の条件に当てはまる場合、特定空き家に指定される

STEP
2

自治体から、空き家の現状を回復させるための助言や指導が届く

STEP
3

ここまでに空き家の状態が改善されない場合、当該空き家を修繕したり、撤去するよう書面で勧告がなされる

STEP
4

ここまでに空き家の状態が改善されない場合、勧告の翌年から軽減税率が解除される

STEP
5

特定空き家に指定されないためにできる7つのこと

空き家を、行政から「特定空き家」に指定されてしまうと固定資産税が肥大化するといったデメリットがあります。

空き家を特定空き家に指定されないためには、以下の対策方法があります。

特定空き家に指定されないためにできる7つのこと

  • 売却する
  • 貸し出す
  • 親族が住む
  • 解体して更地にする
  • 自分で管理する
  • 親族や知人に依頼して管理する
  • 専門の業者に管理を依頼する

以下からは、特定空き家の指定を回避するためのそれぞれの対策方法について詳しく解説します。

【1】売却する

空き家を手放すには売却が1番手っ取り早い方法です。

「公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会」による2017年公開の調査内容によると、空き家を所有している人で「今後空き家をどうしたいか」についての考えとして1番多い考え方は「売却」でした。

・空家保有者に空家の今後の活用意向について確認したところ、「売却したい」が53.1%で最も多く、以下、「貸し出したい」(28.6%)、「建物を建替え・修繕して自分で使用したい」(28.1%)の順となっている。

引用:土地・住宅に関する消費者アンケート調査 ウェブアンケート調査結果 <全体版> - 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会

このように現代、空き家の処分方法として「売却」はメジャーかつスタンダードな考え方です。

空き家を売却することで固定資産税の支払い義務がなくなることはメリットです。

売却のデメリットとしては、地方にある空き地の場合は買い手が見つかりづらいことが挙げられます。

それでも買い手を探したい場合は、一括査定サイトや空き家バンクに登録する、複数の不動産会社に相談するといった手段を利用すべきです。

期間内であれば「空き家3,000万円特例控除」を利用できることも

空き家や土地は不動産であるため売却額も高くなりがちです。

このため売却額に対しての課税が高いイメージも拭えません。

しかしながら、相続から3年以内の不動産であれば「相続空き家の3,000万円特例控除」が適用され、売却益に対しての課税を避けられる可能性があります。

本特例控除を受けるための条件は以下の通りです。

本特定控除を受けるための条件

  • 売却する建物が、昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた建物である
  • 当該建物が、相続開始の直前「被相続人以外は居住していなかった建物である
  • 相続発生から3年以内に、当該建物を1億円以下で売却した
  • 敷地と合わせて建物を売却する場合、耐震についての備えが必要:「新耐震基準に適合するリフォーム」を施すか「耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し」を提示できるか、あるいは建物を解体し更地で売却する

【2】貸し出す

空き家が、人が住める状態であるならば誰かに貸し出して住んでもらう方法も選べます。

家を貸し出すことには、以下のメリットがあります。

空き家を貸し出すメリット

  • 人が住むと建物の劣化が防げる
  • 建物の劣化が防げれば、特定空き家指定を回避できる可能性が高まる
  • 賃貸物件には家賃収入があるため、家賃収入を固定資産税の支払いに充当できる
  • 建物を「低所得者用の賃貸」として貸し出すと「家賃低廉化補助制度」が受けられる(国や自治体から最大4万円/月を最長10年間)

同時に、人に家を貸し出すことには以下デメリットもあります。

空き家を貸し出すデメリット

  • 物件管理をしなければならない
  • 入居者のトラブル対応に手間や時間が費やされる
  • リフォームを費用がかかる(~1000万円)
  • 家を貸し出せる入居者がいなければリフォーム費用・空き家の維持管理費・固定資産税の代金が回収できず、自己負担に

【3】親族が住む

信頼できる人に空き家を託し、管理してもらう方法として親族に住んでもらうというやり方があります。

誰かに住んでもらった時点で、空き家は空き家でなくなるため特定空き家になりません。

住んでもらえば、当該住宅の維持管理もしてもらいやすくなります。

空き家の維持管理が託せるということは、特定空き家になってしまう条件をなくせることにもつながります。

つまり特定空き家に指定されてしまってからでも、この親戚に住んでもらう方法は効果的なのです。

宅地を貸して住んでもらうということは、賃料も期待できます。

そこで賃料を固定資産税代金程度にすれば、自らは固定資産税を捻出する必要もなくなります。

【4】解体して更地にする

空き地は解体してしまい、土地を更地にすることで買い手が急増する可能性が高まります。

買い手が増える理由は、土地の自由度が高まるためです。

土地の自由度が高まれば、畑や倉庫、工場や太陽光パネル、駐車場を設置するといった活用方法が考えられます。

一方、解体には注意が必要です。

解体に注意すべき理由は、解体費用が100万円以上かかったり、解体により住宅地がなくなり住宅用地の特例が受けられなくなり、固定資産税が最大6倍となる可能性があるためです。

空き地を解体する場合は、売却についての計画を入念に立てた上で費用対効果などを専門家である不動産会社などに相談すべきです。

また自治体により、解体に対する補助金が受けられる場合もあるため該当の自治体へ確認することをおすすめします。

【5】自分で管理する

空き家を自分で管理するには、空き家管理にかかる費用をあらかじめ計算しておくべきです。

費用とは、当該空き家までの交通費なども含めた額です。

自分で空き家を管理するためにかかる費用がわかれば、親族や専門業者など第三者に管理を依頼した場合と比べた場合の費用の額の差などが明らかになり、どのように管理すべきかが鮮明になります。

【6】親族や知人に依頼して管理する

空き家は親戚や知人に管理を依頼する方法もあります。

ただし短い間なら合意もしてもらいやすいものの、管理期間が長期に渡る場合は、後でトラブルにならないよう費用の提示や報酬についてどうするかを事前に決めるべきです。

さらに、親戚や知人とは不動産についての専門家ではないことがほとんどです。

したがって、管理を任せた空き家においてどのようなトラブルが発生しても対処できるわけではありません。

このため事前に「こんなことが起きた場合、どう対処すべきか」といったマニュアルを明文化しておく必要があります。

さらに最終的には、空き家で発生したトラブルについての責任は所有者がとらなければならないことに注意してください。

【7】専門の業者に管理を依頼する

空き家の管理を自身や親戚、知人に任せてしまうと、結局は不動産の素人が管理することになります。

そのため、さまざま想定されるトラブルに確実に対処できる保証はありません。

場合によっては、資産に痛手を負う可能性もあります。

そこで管理を依頼する候補として挙げられるのは、専門の管理業者です。

専門業者とは専門知識を有するプロフェッショナルであるため、管理を依頼するとそれなりの費用がかかるものの安心して空き家の管理を任せることができます。

また業者も報酬を受けて管理するため、空き地についてどう管理してほしいかといった所有者の希望は柔軟に聞いてくれる可能性が高いです。

さらに素人だけでは気づけなかった、先々に想定されるトラブルを回避するための提案も受けられます。

老朽化が進んだ空き家は、不動産会社に買取を拒否されることがある

空き家を売却したくても、あまりに老朽化が進んでいる場合は不動産会社からも買取が拒否されることがあります。

詳しく説明すると、老朽化により土地の資産価値がなくなり、評価額がゼロになるのです。

既に建っている建物の解体や、住宅密集地であれば買い取る業者が現れるかもしれないものの、その業者を見つけるまでの根気や時間的コストがかかります。

そこで、もし老朽化が激しい空き家を売却したい場合は、空き家専門の買取業者に相談することをおすすめします。

空き家専門の買取業者に依頼すれば、老朽化が激しい空き家でも買い取りに応じる場合があります。

専門業者であれば、建物の解体や土地の境界線が不明瞭である場合などでも通常の買い取りが行えることがあるのです。

解体や建て替えをする場合は自治体によっては税金減免や助成金の利用が可能

不要な空き家が特定空き家に指定されるのを避けるために、建物の解体や建て替えを考える際には、自治体に相談することをおすすめします。

その理由は、自治体ごとに建物の解体や建て替えに伴う税金減免・助成金を用意していることがあるためです。

そこで以下からは、実際に助成制度を用意している自治体について紹介します。

空き家についての解体や建て替えを考えている場合に、ぜひ参考にしてください。

東京都文京区

東京都文京区は、平成26年度から「空き家等対策事業」を開始しました。

区内に「特定空き家の条件に当てはまる管理不全の空き家」等がある場合、その建物の撤去後、区が建物を無償で借り上げます。

区の建物借り上げにより、上限が200万円の「解体費用助成」が受けられるのです。

仮に、空き家が事業の条件に当てはまらなくても、自治体が「地域課題に取り組むNPO」などと連携し、建物の再活用に向けて展開をもたらします。

神奈川県横浜市

神奈川県横浜市は、建物の解体について助成金制度を導入しています。

解体の対象となる建物は一般住宅、マンション、アスベストの残存が懸念される建物です。

建物のパターンごとに助成の内容が異なります。

例えば一般住宅に関する解体の補助制度として、「住宅除却補助制度」があります。

住宅除却補助制度は、「耐震性が低い」という認定がされた住居を解体する際、横浜市が解体費用の一部を補助するという内容です。

補助金額は工事費用の3分の1であり、上限額は20万円です。

並びに、住宅除却補助制度を受けるための条件として以下があります。

住宅除却補助制度を受けるための条件

  • 解体する建物が、昭和56年5月末日以前に建築確認を得て着工された
  • 当該建物が、耐震診断を経て「評点1.0未満」と判定され、かつ「2階建て以下の木造住宅」である
  • 「交付決定通知」が交付されてから、解体業者と契約する
  • 当該建物の解体は、市内事業者に依頼する
  • 解体について、見積金額が100万円以上となる場合は、2社以上からの相見積もりを受け、自治体に提出する

そもそも空き家法はなぜ制定された?背景やねらい

特定空き家が定義された空き家法、空家特措法が制定された背景には、日本全国の空き家が増加傾向にあったことが挙げられます。

空き家が増加する中で、全国の各自治体はそれぞれ独自に空き家についての条例を定めていきました。

一方で、条例などの制定が間に合わず空き家に関するトラブルが増加しました。

トラブルの内容とは放火、公衆衛生の劣化、景観悪化などです。

空き家に伴うトラブルにより、地域住民の生活品質は著しく低下しました。

このため、国による空き家についての取り決めが必要でした。

今後はさらに国定資産税が増えることが考えられる

空き家被害やトラブルが深刻化するにつれ、管理が不十分な空き家についての固定資産税は増加傾向にあります。

2022年12月にも政府は、「管理が不十分な空き家」について固定資産税の優遇を見直す検討を始めています。

固定資産税の優遇をなくすことで、管理が行き届いていない空き家が増えることが抑制されるよう促そうという考えです。

さらに政府はそういった空き家の解体、建替え、売却も促そうとしています。

一方で、空き家を活用するために規制緩和を行うことも示唆されており、地域住民の生活についての品質保証は今後も続くと考えられます。

放置している空き家が「特定空き家」になる前に、今後の活用について考えよう!

もし自身が持っている空き家について、管理が行き届いていない場合は注意が必要です。

管理不足により「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税が最大6倍となってしまう可能性があるためです。

持っている建物が特定空き家になってしまいそうな場合でも対策方法はあります。

中でも、買取専門業者への依頼は時間的コストも高く、おすすめの方法です。

もし空き家を所有している場合、処分を検討するために買取専門業者へ相談を持ちかけてみてはどうでしょうか。

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