空き家の解体費用がないけど解体したい!対処法や解体費用を抑える方法を解説

相続した実家が空き家状態になっていて解体したいと思ってはいるものの、まとまったお金が工面できないために困っているという話を聞くことがあります。

これは、解体業者の支払い条件が「工事完了後現金一括払い」や「着工時に半金・完了時に残金」のような現金払いが一般的になっているため、現金を揃えることができないことが大きな要因になっています。

そこで今回は、空き家の解体費用がない場合の対処法、空き家の解体費用の相場、解体費用を抑える方法などについて詳しく解説します。

空き家の解体費用がない場合の6つの対処法

空き家の解体費用がない場合の対処法としては、次のような方法を挙げることができます。

空き家の解体費用がない場合の対処法

  • 対処法1:自治体の補助金を利用する
  • 対処法2:空き家解体専用ローンを利用する
  • 対処法3:現状のまま売却する
  • 対処法4:空き家バンクを利用する
  • 対処法5:賃貸物件として活用する
  • 対処法6:専門の買取業者に売却する

それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

対処法1:自治体の補助金を利用する

空き家問題が大きな社会問題としてクローズアップされていることを背景として、自治体によっては空き家の解体費用に対する補助金制度や助成金制度を設けていることがあります。

自治体によって「空き家解体補助金」「空き家解体助成金」などのように制度の名称は異なりますが、おおむね空き家の解体費用の1/5~1/2程度が補助されます。

補助金の対象は、空き家の解体費用のほかに整地費用が対象となる場合もあり、さらに解体した土地の固定資産税・都市計画税が最長5年間にわたって軽減されるケースもあります。

たとえば、東京都大田区では耐震性が不足している木造住宅の解体費用の2/3までを助成してくれて、上限金額は75万円となっています。

また、東京都豊島区では不燃化特区(災害発生の危険度が高い木造住宅の密集エリア)内の老朽化した建物の解体費用として、上限金額1,000万円までを補助してくれます。

このほかにも全国の多くの自治体が独自の補助金制度や軽減措置を設けていますので、解体したい空き家のある自治体がどのような補助金制度や軽減措置を設けているかを調べて積極的に利用するようにしましょう。

対処法2:空き家解体専用ローンを利用する

特に地方の銀行や金融機関では、「空き家解体ローン」や「空き家解体支援ローン」という名前の商品の取り扱いを始めています。

これは、社会問題化している「空き家問題」の解決や過疎化対策・地方創生の取り組みの一環として、地方の自治体が金融機関に要請して取り扱いが始まったともいわれています。

「空き家解体ローン」は、空き家の解体資金として利用できる融資で、多くは保証人・担保不要、低金利となっており、利用条件のハードルが非常に低く設定されていることが特徴です。

利用したい場合は、空き家のある地域の地方銀行や金融機関などで「空き家解体ローン」の取り扱いの有無を確認してみましょう。

対処法3:現状のまま売却する

空き家の状態が良くまだまだ居住可能な場合は、現状のまま「中古住宅」として売却することが考えられます。

現状のままで売却しますので、当然ながら解体費用は発生しませんが、「中古住宅」として売却しますので、売り主は「契約不適合責任」を負うことになります。

「契約不適合責任」とは、物件を引渡したあとに、建物の基本的機能に関する瑕疵(雨漏りやシロアリ被害など)が見つかり、それが売買契約書に記載されていなかった場合に、売り主が買い主に対して負わなければならない責任のことです。

ただし、売却時点で判明している瑕疵(雨漏りやシロアリ被害など)を売買契約書に明記しておき、買い主が了解したうえで売却した場合は、その瑕疵について「契約不適合責任」は適用されません。

または、老朽化が進んで居住できない場合には、「古家付きの土地」として売却する方法もあります。

この場合は、買い主が「古家」を解体することが前提となっていますので、その分だけ売却価格を下げなければ売れないことになります。

さらに、「古家」は解体することが前提ですので売買契約書で建物の「契約不適合責任」をすべて免責にしておく必要があります。

対処法4:空き家バンクを利用する

空き家を「空き家バンク」に登録して購入希望者を探し、売却する方法もあります。

「空き家バンク」は、国や自治体などが空き家削減を目的として開設している不動産情報サイトで、空き家の売り主と買い主をマッチングさせて売買につなげることが目的です。

「空き家バンク」への登録には費用はかかりませんが、空き家の物件情報がサイトに掲載されるだけですので、購入希望者の目に触れる機会は不動産会社に仲介を依頼した場合よりは少なくなります。

多くの場合、購入希望者との交渉なども自分で行う必要がありますので、スムーズな契約手続きが行えなかったり、トラブルが発生したりする可能性もあります。

ある自治体の「空き家バンク」では、トラブル防止などのために地域の不動産会社に仲介を依頼しているケースもあります。

また、「空き家バンク」を利用して売却する場合も、売り主は「契約不適合責任」を負うことになります。

対処法5:賃貸物件として活用する

空き家の状態が良く居住可能な場合は、「賃貸物件」として貸し出すことも考えられます。

「賃貸物件」として活用できるかどうかは立地条件が良いことが大前提となります。

都心部であれば、最寄り駅に近いことやスーパー・コンビニなどが近くにあることが必須でしょうし、郊外や田舎であれば車のアクセス性が良く駐車スペースが確保されていることなどが必要です。

このような条件を満足している場合は「賃貸物件」として活用できると判断して、壁紙の張替えなど若干の改修をしたうえで入居者の募集を始めることになります。

入居者の募集やクレーム対応は自分で行うこともできますが、手間を考えると不動産管理会社に委託した方が良いでしょう。

入居者が確保できれば継続的な家賃収入が得られますが、不動産収入の確定申告と不動産管理会社への管理費の支払いが必要になります。

対処法6:専門の買取業者に売却する

空き家を、専門の買取業者に売却する方法もあります。

空き家がどのような状態であっても現状のままで、1週間~1ヶ月程度の短期間で買い取ってくれて、確実に現金化することができます。

通常の不動産売買では、売り主が「契約不適合責任」を負わなければなりませんが、買取業者に売却する場合は、一般的に特約で「契約不適合責任」を免責にしますので、この点でも安心できます。

専門の買取業者に売却する場合は、近隣の不動産相場より安い売却金額になってしまいますが、手間がかからず短期間で売却することができます。

そもそも空き家の解体費用はどれくらい?

空き家の解体費用の相場は、家の構造や大きさ(坪数)によって変わってきますが、一般的な目安は次の通りです。

建物構造1坪当たり解体費用
木造40,000円
鉄骨造60,000円
鉄筋コンクリート造70,000円

空き家の周辺の道路が狭くて解体用の重機(ショベルカーなど)が入れない場合は、人手で解体する必要があり人件費がかさむため解体費用は割高になります。

旗竿地や道路との段差のある土地の場合も、廃材搬出用のトラックが横付けできないため解体費用が割高になります。

また、解体業者によっても費用に差が出る場合がありますので、複数の業者から現地を見た上での見積もりを入手して比較して業者を決めることをおすすめします。

空き家の解体費用を抑える方法はある?

空き家の解体費用を少しでも安く抑えたい場合は、次の5つの方法を考慮しましょう。

空き家の解体費用を抑える方法

  • 方法1:事前に片付けをしておく
  • 方法2:解体業者の繁忙期を避ける
  • 方法3:解体に適さない季節を避ける
  • 方法4:自分で建物滅失登記をする
  • 方法5:解体現場に近い業者に依頼する

以下では、それぞれについての要点を説明します。

方法1:事前に片付けをしておく

解体業者に依頼する前に、自分でできる範囲のことを済ませておくと解体費用を抑えることができます。

空き家の中の不用品や家財道具などは、自分でできる範囲のものは廃棄しておくと、その費用を請求されなくなります。

骨董的なものがある場合は、リサイクルショップに出張買い取りを依頼すると出向いてくれて、思わぬものを買取ってくれたりします。

方法2:解体業者の繁忙期を避ける

解体業者にも閑散期と繁忙期がありますので、解体費用が高くなる繁忙期を避けて依頼すると解体費用を抑えることができます。

一般的に、企業や公共団体の年度末に近い12月~3月が繁忙期となりますので、この時期を避けるようにしましょう。

方法3:解体に適さない季節を避ける

解体作業は、屋外作業で高所作業となりますので、このような作業に支障のある季節を避けることによって費用を抑えることができます。

梅雨や猛暑、降雪の季節は一般的に費用が高くなりますので、避けた方が良いでしょう。

方法4:自分で建物滅失登記をする

家を解体した後には「建物滅失登記」をしなければなりません。

この手続きは、土地家屋調査士に依頼することもできますが、報酬も含めて5万円程度かかります。

しかし、手続き自体は難しいものではありませんので、自分で法務局に出向いて行うと費用を抑えることができます。

方法5:解体現場に近い業者に依頼する

解体作業に必要な重機やトラックなどの移動時間が短縮できれば、解体費用を抑えることになります。

空き家の近くにどの程度の解体業者がいるかにもよりますが、できれば解体現場に近い業者に依頼することをおすすめします。

空き家の解体費用がない場合におすすめできない2つの行動

空き家を解体したいと思ってはいても解体費用がないという場合に、おすすめできないのは次のような行動です。

空き家の解体費用がない場合におすすめできない2つの行動

  • その1:空き家を自分で解体する
  • その2:空き家を相続放棄する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

その1:空き家を自分で解体する

基本的に、事業として解体を行う場合は「建設業許可」を得る必要がありますが、自分が所有している家を解体する場合は許可は不要ですので、空き家を自分で解体することは可能です。

しかしながら、重機を操作するためには資格が必要となりますし、大型トラックの場合は大型自動車免許が必要となります。

また、建設リサイクル法の届出(作業開始の1週間前まで)、電気・ガス・水道などのライフラインの停止申請、道路使用許可申請(トラックなどが道路を専有するため)などが必要となります。

さらに、古い家でアスベストが使用されている場合は、事前調査の実施と工事計画書(作業開始の14日前まで)、建造物解体等届出書(作業開始前まで)を労働基準監督署に提出しなければなりません。

このように、普通のDIYとは違って、家の解体は重機やトラックを必要とする専門的な大作業であり危険も伴いますので、自分で解体することはおすすめしません。

その2:空き家を相続放棄する

親が亡くなって空き家になった実家を相続することになった際に、取り得る選択肢としては大きく「そのまま相続する」と「相続放棄する」に分けられます。

このときに、「空き家を相続しても解体する費用がないから」と安易に「相続放棄する」という選択をしないように注意しましょう。

「相続放棄する」と、その空き家だけでなく全ての遺産を相続することができなくなりますので、もし親が空き家以外の不動産や金融資産を所有していた場合は、それらの遺産も相続できなくなります。

しかし、逆に親に多額の負債があるような場合は、相続放棄して借金を背負わないようにするという選択は正しいと考えられます。

相続問題は非常に多くのケースが考えられますので、空き家の解体のことだけを考えて「相続放棄する」という選択をすることは避けるべきです。

解体費用がない場合は「そのまま活用する」または「専門の買取業者に売却する」のがベスト

空き家を解体したいと思ってはいても解体費用がない場合は、「そのまま活用する」か「専門の買取業者に売却する」かのどちらかをおすすめします。

いずれも解体費用はかかりませんし、場合によっては収入が得られることもあります。

具体的には、「現状のまま売却する」場合は売却代金が入ってきますし、「空き家バンクを利用する」場合で買い主が購入してくれれば収入が得られます。

また「賃貸物件として活用する」場合は、入居者が見つかれば賃貸料が入ってきます。

さらに「専門の買取業者に売却する」場合は、現金で買取代金を受け取ることができます。

空き家の解体費用がない場合は今後の活用方法に応じて対処法を決めよう!

この記事では、空き家の解体費用がない場合の6つの対処法、空き家の解体費用相場、解体費用を抑える5つの方法、空き家の解体費用がない場合におすすめできない2つの行動などについて解説しました。

解体費用相場は空き家の構造や大きさにもよりますが100万円以上かかることもある上に、解体業者への支払いは現金払いが一般的です。

現金で解体費用が捻出できない場合は、空き家を今後どのように活用するかに応じて「そのまま活用する」か「専門の買取業者に売却する」かのどちらかに決めるようにしましょう。

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