古民家を手間なく売りたい!高く売るコツや税制優遇ついても徹底解説
不要な古民家を相続などで入手、所有してしまったときにはその処分方法に困るという例が各地で相次いでいます。
古民家とは、その管理不足の実態から課税額が高まる特定空き家などに指定されてしまうリスクがあり、所有しているだけでお金がかかる特徴があります。
そこで今回は、古民家を手放すための方法、売却するためには何が必要か、どんな書類や手続をしなければならないのかについて解説します。
もし、使いみちのない古民家を持て余している場合があれば、ぜひ参考にしてみてください。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。
- 1. 古民家を売るための4つの方法
- 1.1. 方法1:そのままの状態で売却する
- 1.2. 方法2:古民家を取り壊してから売る
- 1.3. 方法3:空き家バンクに登録する
- 1.4. 方法4:専門の買取業者に売却する
- 2. 古民家を売却するまでの流れ
- 3. 古民家をできるだけ高く売るためのコツ
- 3.1. コツ1:瑕疵担保責任を付保してから売却する
- 3.2. コツ2:水まわりなどをリフォームしてから売却する
- 4. 古民家を売りたいと思ったら確認すべき6つのこと
- 4.1. その1:建物に瑕疵はあるか
- 4.2. その2:耐用年数や建築基準を満たしているか
- 4.3. その3:取り壊しは必要か
- 4.4. その4:固定資産税が上がるタイミングで取り壊しを計画していないか
- 4.5. その5:自治体の補助金制度を利用できるか
- 4.6. その6:家財は撤去されているか
- 5. 家財の撤去、解体、リフォームなどの手間をかけたくないなら専門の買取業者へ売却するのがおすすめ
- 6. 古民家を売却する際にかかる費用
- 6.1. 【1】税金
- 6.1.1. 印紙税
- 6.1.2. 譲渡所得税
- 6.2. 【2】抵当権抹消費用
- 6.3. 【3】その他費用(売却方法によってはかからない)
- 6.3.1. 仲介手数料
- 6.3.2. 解体費用
- 6.3.3. リフォーム費用
- 7. 古民家を売る際にかかる譲渡所得税とは?
- 7.1. 売却代金から各種費用を引いた時に、マイナスになった場合は譲渡所得税が発生しない
- 7.2. 古民家の取得費を求める方法
- 7.2.1. ケース1:建物の購入額がわかっている
- 7.2.2. ケース2:建物と土地の購入額がわからない
- 8. 古民家の売却時に役立つ3つの税制優遇措置
- 8.1. 【1】相続した不動産を3年以内に売却したときの特例
- 8.1.1. 相続空き家売却特例の適用時注意点
- 8.2. 【2】住んでいる古民家(マイホーム)を売却したときの特例
- 8.3. 【3】空き地などを売却したときの特例
- 9. 面倒な手間をかけず、スムーズに売りたいなら専門の買取業者に売却しよう
古民家を売るための4つの方法
古民家とは管理が充分に行き届いていなかったり、ほか様々な瑕疵があることが懸念され、なかなか売りづらいものです。
しかしながらそんな古民家であっても、いくつかの売却方法があります。
以下からは古民家を売るための方法について、4つを詳しく解説します。
方法1:そのままの状態で売却する
古民家を売るための手っ取り早い方法は、そのままの状態で売ってしまうことです。
そのまま売却するのに適した古民家の基準とは、管理が行き届いていたり、直近や過去に何らかのリフォームを行っており、現在でも通じる利便性を保っているかどうかなどに左右されます。
もし自己が所有する古民家が適正な管理状況だったり、リフォーム後であるといった場合には、売却での処分を検討してみてください。
あるいは「古民家」という触れ込みで売却する方法もあります。
あえて古民家というキーワードを打ち出した住居を売りに出すことで、レトロ文化のファンなどに対して訴求できるのです。
一方古民家として訴求できたとしても、それだけでは不十分です。
古民家が売れるかどうかは周辺環境にも左右されます。
例えば古民家の雰囲気とマッチするような、自然が豊富な状況だったりすれば顧客の目に止まる可能性が高まるのです。
このように古民家は、古民家であるがゆえのメリットが売却時に生じます。
ぜひ古民家売却を検討しているのであれば、本メリットを活かす方向を検討してみてください。
方法2:古民家を取り壊してから売る
古民家とは、管理状態が悪いことがあります。
管理状態が悪い家屋とは、活用の可能性が限りなく少ないため「売却の芽がほぼない」といえます。
そこで、管理状態が悪い古民家などをどうしても売却したい場合は、「取り壊し」が必要なのです。
土地の上に建っている建物を取り壊すことで、その土地を「更地」として売却の上で取り扱うことができるようになります。
建物の取り壊しにかかる費用の概算は、面積を30坪とした場合、以下の式で計算できます。
建物の取り壊しにかかる費用の概算
- 木造:坪あたり4~5万円×30=120万円~150万円
- 軽量鉄骨造:坪あたり6~7万円×30=180万円~210万円
- 鉄筋コンクリート造:坪当たり坪7~8万円×30=210万円~240万円
古民家とは木造であるケースが多いため、取り壊し費用は120万円~150万円とかかると意識してください。
また、近年の解体費用は高額になりつつあることが本項目の方法を行う上での注意点です。
古民家である特色を活かして売り抜けることや、リスクを考慮して解体に及ぶかの判断は慎重にしてください。
解体については、専門家の判断を借りることも検討すべきです。
方法3:空き家バンクに登録する
自治体が運営する不動産情報サイトとして、空き家バンクというものが存在します。
空き家バンクでは空き家売買、賃貸情報などを掲載しており、古民家を売る場所として適しているのです。
空き家バンクの特徴として、一般的な仲介業者が取り扱わないような物件でも売買の場には出品できるというものがあります。
例えば、売る状態にはないような家財道具が残っていたりするような住居でも販売に出せるのです。
自治体により空き家バンクの運営に関わっていないケースもあるものの、売りづらい可能性がある物件を売りに出したい場合は、該当地区に空き家バンクが存在するかどうかを確かめてみてください。
方法4:専門の買取業者に売却する
古民家は通常の仲介業者では取り扱いづらいことが多いものです。
しかしながらそういった物件専門の買取業者であれば、手持ちの物件を買い取ってくれる可能性があります。
一般的な業者が買い取ろうとしない物件でも専門の買取業者が取り扱える理由は、その知識や経験、ノウハウにあります。
売りづらい物件でも転売するための知識や経験、ノウハウを専門の買取業者は持ち合わせているため、古民家でも買い取れるのです。
無理に一般的な不動産業者で売ってしまおうとするよりも、専門の買取業者を介せば高く売れる可能性があります。
一般的な業者は、売りづらい不動産の転用・活用方法などについての知見を持ち合わせていないため、いわゆる「足元を見られた状態での買い叩き」などが発生する可能性があるのです。
「過程にはこだわらないから、とにかく目先の物件を処分だけしてしまいたい」という場合は、即売も可能な一般の業者に売却を依頼する方法も適しています。
取り壊しが必要な物件を売りたい場合も同様で、「取り壊し費用」を仲介業者が請け負う形での買取となるためトータルで見ると素早く売れるものの、安価になりがちです。
本来の土地が持つ価値から、取り壊し費用や転売で手に入れたい利益のために買取料金が安くなるのです。
専門の買取業者を探したい場合は、不動産一括査定サイトなどの利用を検討してください。
同サイトで売却したい古民家に関する情報を入力すれば、サイトに加入している業者に対して概算売却額の提示を求めることができるためです。
このよう相見積もりを得た状態であれば、相場観が知られるとともに安く買い叩かれる心配もなくなります。
ただし、不動産情報は個人情報でもあるため、取り扱いには気をつけてください。
古民家を売却するまでの流れ
古民家を売るには、査定や契約の締結など細かい流れが存在します。
簡単にまとめると以下の表の通りです。
- 【STEP1】価格査定
- 【STEP2】媒介契約の締結
- 【STEP3】売却活動開始
- 【STEP4】売買契約の締結
- 【STEP5】引き渡し・代金の残額を受領
- 【STEP6】確定申告
価格査定は業者によって内容が異なるため、基本的に複数の業者へ見積もりが依頼できる一括査定サイトの利用がおすすめです。
媒介契約とは、不動産会社などに売買の仲介を依頼する契約を意味します。
媒介契約は「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」といった種類にわかれています。
次の売却活動では、業者は「買い主」を探すことになります。
一般的な不動産の売却活動は、3ヶ月程度かけて買い取る人を探します。
しかしながら古民家の場合は、専門業者でない限りより時間がかかるかも知れません。
買取側と売買契約を結んだあとは、1~2ヶ月後に引き渡しを行います。
古民家の売却で売却益が発生した場合、税金がかかるかも知れません。
そんな時は、「売却した翌年」の2/16~3/15までの間に確定申告をしてください。]
古民家をできるだけ高く売るためのコツ
何も手をつけないままでは買い叩かれてしまう可能性もある古民家ながら、方法によっては市場の相場よりも高い値段で売却することが可能です。
その方法は2つあり、以下から詳しく解説します。
それぞれ売却する側にもいくらかの出費が必要となる方法であるため、気をつけて実行してください。
コツ1:瑕疵担保責任を付保してから売却する
古民家には「瑕疵担保責任」を付保することが可能です。
瑕疵担保責任とは、以下の内容です。
瑕疵担保責任
物件を売却した後に、物件に瑕疵(傷)があると判明した場合に、当該瑕疵部分の補修費用の一部について「保険料」でまかなうことができるという種類の保険
つまり瑕疵担保責任が付保された物件とは「保証書が付属した物件」のように扱われ、価値が上がることになります。
買う側に対しては、保証書の効果で安心して商談に進めるという心理状況を作り出すことが可能です。
瑕疵担保責任の応用方法はもう一つあります。
それは、「築20年を超えた一戸建ての物件」に対して瑕疵担保保険を付保することで、買う側が「住宅ローン控除」を適用するという方法です。
住宅ローン控除とは、以下の意味を持ちます。
住宅ローン控除
「住宅ローン」を使って住宅を購入した人が、一定の期間だけ所得税等の節税が可能など優遇が受けられる制度
例えば「築20年超の一戸建て」がそのまま売却された場合、買った側は住宅ローン控除を利用することが不可能となります。
しかしながら瑕疵担保保険を付保した物件であれば、保証とともに住宅ローン控除の適用が享受できるのです。
この2つの応用方法は、古民家を売却する上で利用したい手段となります。
コツ2:水まわりなどをリフォームしてから売却する
必ずしも重要な手段ではないものの、古民家をリフォームしてから売却するという方法もおすすめです。
本手順においては、リフォームを施す場所に工夫があります。
それは一般的に費用がかかりがちなお風呂場・洗面所といった場所についてをリフォームするという方法です。
費用がかかりがちな場所をリフォームすることで次の使用者が喜ぶだけでなく、清潔に使いたい空間を新品同様に利用可能であることで、買う側に好印象を与えることができるのです。
お風呂場や洗面所のリフォームには、100万円~150万円ほど費用がかかるため、実践する前には予算と相談してください。
基本的に、中古家屋を買おうとする方は自分の好みでリフォームをしようと考えるものであるため、他の場所および本項目についても、無理に行うことはありません。
古民家を売りたいと思ったら確認すべき6つのこと
その1:建物に瑕疵はあるか
近年、レトロブームの影響により「古民家」が注目されています。
このため、買い主との出会いによっては希望以上の額面で不要な古民家の売却ができる可能性があります。
しかしながら、たとえ「古民家部分」に価値を見いだされて売却に至ったのだとしても、建物に瑕疵があるかどうかだけは厳しくチェックすべきです。
その理由は、不動産の売買契約により建物および土地の引き渡しを行う際、地中埋没物のようなものが見つかってしまうと「隠れた瑕疵」として同物品の撤去やそれにともなう修理などは売ったこちら側が負担することになるためです。
地中埋設物とは、例えば以下が該当します。
地中埋設物
- 下水管
- 杭
- コンクリートのガラ
- 浄化槽
古民家とは建物自体に価値を求められることは多いものの、庭など他の部分は安全に利用できるように後から工事やリフォームが加えられることがあります。
このため家屋以外の部分にも注意を払わないと、後から契約をやめたいと申し出られるなどトラブルの元となってしまうのです。
その2:耐用年数や建築基準を満たしているか
古民家とは古い建物であるため、現代の法令におけるあらゆる基準に適合していないことがあります。
そのため古民家を売りたいのであれば、対象物件が住宅としての耐用年数や建築基準法を満たしているかを調べてください。
例えば「木造戸建ての建物であれば、耐用年数は22年」というように、耐用年数とは当該住宅の「種類」「構造」に左右されます。
さらに古民家とは築年数が相当に経っているものです。
このため、古民家は現在の建築基準法に適合しない可能性を持っているのです。
建築基準法に当該物件が適合しているかどうかは、物件を相続した時に確かめておかねばなりません。
古民家を相続したのであれば、当該物件の「確認済証」「検査済証」が存在するかを確認してください。
物件の同済証が見当たらない場合は、土地建物の専門家に相談をしてください。
その3:取り壊しは必要か
古い建物は、管理不足などにより将来危険を招きかねない物件として、通常の6倍程度の固定資産税が課される「特定空き家」に指定されるリスクが近年浮上しています。
このため一見、家屋を残さずに更地にして売却することでより多くの売却益を得ようとする方法があります。
しかしながら、実は古民家家屋の取り壊しをしなくても売却できる可能性はあるのです。
あるいはケースによるものの古民家を残した状態で売却したほうが、解体してしまうようりも高く売却できることもあります。
したがって、古民家売却の際にはまず「本当に解体や取り壊しの必要があるか」を確かめましょう。
その場合、不動産会社など専門業者に意見を聴いてみることをおすすめします。
専門の買取業者であれば、古民家家屋がそのままの状態でも売却できるノウハウや活用方法を持っているため、家屋の取り壊しや解体を考えている方は、ぜひ専門家に相談してみてから決定してください。
一般的に専門業者は「物件の査定サービス」を受け付けています。
この査定のタイミングで、家屋の解体や取り壊しの必要性があるかどうかについて、および取り壊した場合・取り壊さなかった場合の両者についての査定額について算出してもらうよう相談してみてください。
その4:固定資産税が上がるタイミングで取り壊しを計画していないか
土地の固定資産税は、その土地に建物があるかどうか、さらに建物をどのように利用しているかにより変動します。
そのため安易に建物の取り壊しを行ってしまうと、急に固定資産税が上昇し、家計が圧迫されかねません。
建物の取り壊しを考えるのであれば、固定資産税が上がってしまうタイミングでないかどうかに注意しましょう。
例えばその土地に住宅地が経っている状態であれば「固定資産税の軽減措置(住宅用地)
」という税制優遇措置が受けられます。
つまり、同状態であれば固定資産税が少ない状態でもあるのです。
固定資産税について優遇を受けた状態であるにもかかわらず、その住宅を取り壊してしまうとこの優遇措置は消え、固定資産税が増額する可能性があります。
つまり、建物についての固定資産税はなくなるものの、土地の固定資産税が上昇し、トータルの額が以前よりも高くなるという可能性です。
固定資産税の計算時に参照するのは、その年の1月1日時点での土地の状態です。
つまり1/1にまだ土地の上に住宅としての家屋が残っていたのであれば、当該年における固定資産税については「固定資産税の軽減措置(住宅用地)」を受けることが可能です。
この条件を応用すると、1/2に当該土地の住宅を取り壊し、同年の12/31までに同地を「更地」として売却することができれば、更地としての価値を保った額での売却益が期待できるほか、税制の優遇も保ったまま土地を手放すことができます。
その5:自治体の補助金制度を利用できるか
古民家を売却する場合、そのまま売ることもあるものの解体が必要になったり、リフォームを施すことがあります。
この時、無駄な出費をしなくて済むように「自治体の補助金制度」が存在するかどうかを事前に調べておきましょう。
解体やリフォーム(耐震工事)などについては、国による補助金はないものの自治体による補助金が受けられる場合があるのです。
さらに自治体の補助金も「都道府県」「市区町村」などケースごとに異なるため細かく探してみてください。
補助金については、適用を受けられる年度とそうではない時があったりします。
この落差は、自治体が当該年度の予算を充分に獲得できるかどうかにかかっています。
そのため、ある年度について補助金がなかったからといって諦めずに、別の年度に改めて確かめてみることを検討してみてください。
その6:家財は撤去されているか
古民家の売却や解体については、家財の残存状態が重要なポイントです。
家財が残った状態では、仲介業者などが売却活動を請け負わなかったり、解体業者も機材や人の怪我などを危惧して解体自体をしないことがあるためです。
また解体業者とは免許に基づいて活動します。
同免許においては、解体工事業者は産業廃棄物の処分が可能であり、家庭ごみなど「一般廃棄物」の処分が認められていません。
つまり古民家の売却や解体を行うのであれば、家財道具などは家主・所有者が撤去しておかなければなりません。
当該物件において、仮にすべての家財道具が必要ないのだとすると、費用がそれなりに掛かります。
家財をすべて撤去する際は、通常4トンのトラックで1~2台分の廃棄物が結果的に存在することになるといわれます。
そういった規模で人材や車などを手配する場合、トータルでの処分費用は15万円~25万円ともなってしまうため注意してください。
家財の撤去、解体、リフォームなどの手間をかけたくないなら専門の買取業者へ売却するのがおすすめ
古民家とは建物自体の解体、内容物の撤去やリフォームなどをしないと売れないイメージがあります。
しかしながら、古民家のような取り扱いの難しい物件でも売却可能な専門の買取業者が存在します。
古民家に関わる手間を惜しいと思うのであれば、古民家の処分に際しては専門の買取業者へ相談することがおすすめです。
古民家を売却する際にかかる費用
もし古民家を売却することになれば、諸手続きが必要になり、以下の費用がかかります。
古民家を売却する際にかかる費用
- 税金:印紙税・譲渡所得税
- 抵当権抹消費用
- その他費用:仲介手数料・解体費用・リフォーム費用
それぞれの費用について、以下からさらに詳しく解説します。
【1】税金
古民家を売却する際、「印紙税」と「譲渡所得税」が発生します。
それぞれの税金について、以下からさらに詳しく解説します。
印紙税
印紙税とは以下の意味をもつ税金です。
印紙税
日常における経済取引に伴い、作成する必要がある書類(契約書、領収書など)のような「特定の文書」に対して課税される税金
不動産について、金銭を伴う取引を行うと、売却が決まったのであればその際に「売買契約書」作成しなければなりません。
「売買契約書」の作成に際しては、その「売却金額」に応じて印紙税を収めることになります。
印紙税率の額は契約金額に応じて決まり、詳細は以下の表のとおりです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(※平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成される不動産に関する契約書にのみ適用) |
---|---|---|
100万円より上、500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円より上、1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円より上、5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円より上、1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円より上、5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
譲渡所得税
譲渡所得税とは以下の性質をもつ税金です。
譲渡所得税
土地や建物の「譲渡所得」にかかる税金=建物や土地を売却して、利益が発生したのであれば、その利益にかかる税金(所得税・住民税)
次のような計算式で算出することができます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得=不動産の売却価格-取得費用(その不動産を購入した際にかかった費用)-譲渡費用(その不動産の売却をした際にかかった費用)
もし不動産の売買に関わり、その売却時に売却益つまり「譲渡所得」が発生しなければ、譲渡所得税も発生しないのです。
【2】抵当権抹消費用
抵当権とは、「債務者がローンの返済を履行できなくなった」ということが起きた場合のために、土地・建物を「担保」にする権利です。
抵当権を持つ金融機関は、債務者の住宅購入時に融資したローンの返済が行われない場合などに、対象の土地を売却したりできるようになります。
もし債務者にとってほかにも債権者がいた場合、この抵当権を持っていると彼らに対する優越権となります。
つまり抵当権を持つ者が優先的に、債務者の土地などを売却するといった形で返済が受けられるのです。
この抵当権とは、ローンの完済など各種条件を満たせば自動的になくなるというものではありません。
このため存在する意味がなくなった抵当権をなくすためには「抵当権抹消費用」を支払い、
手続きに及ばなければならないのです。
抵当権抹消登記手続きには、抵当権抹消登記申請書・金融機関からの受け渡し書類。登記済証または登記識別情報・登記原因証明情報・委任状といった書類が必要になります。
各種書類の作成や取得を司法書士などに代行してもらう場合、抵当権抹消費用にプラスしてその報酬(10000円~15000円前後)も費用としてかかります。
依頼報酬を差し引いた場合、抵当権抹消費用のためにかかる費用は以下の通りです。
抵当権抹消費用のためにかかる費用
- 登録免許税:不動産1筆につき1000円、土地+建物の場合は2000円
- 事前調査費用:不動産の登記内容を調査する費用であり、不動産1筆につき335円
- 事後謄本取得費:抵当権抹消登記手続き終了後に「登記簿謄本を取得する費用」。1筆600円、オンライン請求500円
【3】その他費用(売却方法によってはかからない)
税金などとは別に、仲介手数料や建物解体費用など、古民家を売却したい場合にかかる費用があります。
こちらは場合によっては発生しないこともあるため、自己のケースと照らし合わせて内容を確かめてください。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産の売却を不動産業者などを介して行う場合に支払う費用のことです。
仲介手数料の特徴として、当該商談が成立しなかったのであれば発生しないというものがあります。
さらに仲介手数料は「売却額」にその額が左右されるという特徴も持っています。
一般的に不動産会社は法律で定められた仲介手数料の上限を請求してくることが多いものです。
法律で定められた仲介手数料の上限とは、以下の通りです。
仲介手数料の上限
- 売却価格が400万円以下の場合(+当該建物の売り主である場合):18万円
- 売却価格が400万円を超える場合:売却価格の3%+6万円
※両ケースともに別途消費税が発生します。
解体費用
古民家の解体費用は、相場が一坪あたり3万~5万円です。
また、以下の条件により価格が変動します。
古民家の解体費用が変動する要因
- 解体と同時に古材の買取がある場合:家屋内の古材を、作業員が手作業で解体して運び出すため
- 解体対象物件の立地条件が悪い場合:解体によって周囲環境に迷惑をかけないように特殊な養生などを行う必要があるため/重機が入らないほど狭い通路などがある場合、人件費が増すため
- アスベスト除去作業がある場合:建物内にアスベストがあると解体できず、先に除去作業を行わねばならないため
- 家財が残っていたり家屋関係以外の解体が必要な場合:解体対象の家屋内に残っている家財は、残置物として別途撤去や処分作業が必要になり、費用も同様にかかるため
- 地中障害物がある場合:建物解体時に地中1~1.5m内に不要物がないかの確認作業があり、何か障害物が発見されると別途除去費用がかかるため
- 土壌汚染がある場合:汚染土処理費用が発生するため
- 産業廃棄物が多い場合:業者がまかないきれない量の産業廃棄物が発生した場合、依頼主に処理費用負担が求められることがあるため
リフォーム費用
古民家は部分的にリフォームを行うことで、買い手から好感され相場以上の価額で売却できる可能性があります。
以下の表では、家屋内の場所別リフォーム費用相場をピックアップしています。
リフォーム内容 | 費用の相場 |
---|---|
壁紙交換 | 800~1,500円/1平方メートル |
床材張り替え(フローリング) | 3~6万円/1畳 |
トイレ | 15~50万円 |
風呂 | ・ユニットバス交換:50~150万円 ・在来浴室からユニットバスへ変更:65〜150万円 |
キッチン | 50〜150万円 |
洗面所 | 10~50万円 |
外壁 | 60~300万円 ※平屋で外壁塗装する場合:40~70万円 ※外壁塗装は自己で処理するケースも |
屋根 | 15~260万円 |
耐震補強・改修 | 25~150万円 |
断熱リフォーム(壁への断熱材挿入施工によるもの) | 4千~3万円/平方メートル |
内窓(二重窓)の設置 | 8~15万円/1箇所 ※掃き出し窓の場合:10~30万円/1箇所 |
シロアリ対策 | ・駆除・予防リフォーム:1,150〜3,000円/平方メートル ・シロアリ被害に対する劣化箇所補修、基礎補強:25~300万円 ※一定の平米数・坪数まで一律料金の業者が多い |
雨漏り修理(屋根の場合) | 1~45万円/1箇所 |
古民家を売る際にかかる譲渡所得税とは?
譲渡所得税とは、以下の性質を持ちます。
譲渡所得税
土地や建物の「譲渡所得」にかかる税金=建物や土地を売却して、利益が発生したのであれば、その利益にかかる税金(所得税・住民税)
譲渡所得税を決定する「税率」は、以下の通り物件の所有期間に左右されます。
所得税 | 住民税 | 復興特別税 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
長期譲渡所得(譲渡or売却した年の1月1日の時点で5年超所有していた場合) | 15.32% | 5% | 0.63% | 20.32% |
短期譲渡所得(5年以内譲渡or売却した年の1月1日の時点で当該不動産の所有期間が5年以下の場合) | 30.63% | 9% | 0.32% | 39.63% |
不動産の売却額や税率を参考に算出される、譲渡所得税の計算式は以下の通りになります。
譲渡所得の計算式
譲渡所得=不動産の売却価格-取得費用(その不動産を購入した際にかかった費用)-譲渡費用(その不動産の売却をした際にかかった費用
売却代金から各種費用を引いた時に、マイナスになった場合は譲渡所得税が発生しない
もし不動産の売買に関わり、その売却時に売却益つまり「譲渡所得」が発生しなければ、譲渡所得税も発生しません。
その理由は、譲渡所得税を算出するための「譲渡所得」を決定する計算式が、当該不動産の売却額から取得費用や譲渡時にかかったコストを引くためです。
この時、古民家の売買により売却益が得られていない、つまり0円で贈与したのであれば、自ずと計算結果=譲渡所得はマイナスになります。
譲渡所得がマイナスである場合、譲渡所得税を算出するための税率を掛け算しても結果はマイナスになるため、譲渡所得税自体が発生しないのです。
古民家の取得費を求める方法
譲渡所得税を算出するには、売却や贈与したい古民家自体の「取得費」が判明しなければいけません。
以下からは、古民家の取得費つまり購入したときの価額がわかっているケースと、建物自体も土地の購入額もわからないケースそれぞれについて、取得費を算出する方法について解説します。
ケース1:建物の購入額がわかっている
当該不動産(古民家)を購入した際にかかった費用が判明している場合は、経過年数分を減価償却して取得費を求めてください。
「不動産の取得費」には、以下のような費用が含まれます。
不動産の取得費
- 設計変更費用
- 増改築リフォーム費用
- 仲介手数料
- 契約書などの印紙代
- 固定資産税・都市計画税の精算金
- 抵当権設定の免許登録税、登記手数料
- 建物に付属する設備費
- 建築費や工事にかかった諸費用
- 不動産購入時に納めた登録免許税・印紙税・不動産取得税など「税金」
- 借主立ち退きのために支払った「立ち退き料」
- 土地の整地費用
- 土地の測量費用
- 所有権確保のために司法手続きがあったのであれば、その費用
- 当初から「土地利用」が目的だった場合の、当該箇所における立て壊し、更地化にかかった費用
- 不動産購入のために資金借り入れを行った場合、引き渡し日までに支払ったその借入金に対する利子の総額
- ローン事務手数料
- ローン保証事務手数料
- ローン借入日~所有開始までにかかったローン金利
- ローン借入日~所有開始までにかかったローン保証料
- ローン借入日~所有開始までにかかった団体信用生命保険料)
- 当該物件取得時、複数の業者と契約していた場合は、他社との契約をなくしたことによる違約金
土地には「加齢による劣化」という考え方が適用されないため、減価償却は建物に対して行われます。
減価償却率は、その建物が事業用かそうではないか、建物の材質構造(鉄骨、木造など)が何であるかに左右されます。
詳しくは減価償却シミュレーションサイトや、専門業者への相談が便利かつ正確です。
ケース2:建物と土地の購入額がわからない
建物取得費とは複雑であり、資料を残していたとしても分かりづらいものです。
特に古民家は建築されてからの年数経過が長く、当事者が既にいなくなってしまう可能性もあります。
この場合「譲渡価格(売却価格)の5%」を取得費として計上してください。
取得費が判明したら、譲渡所得税の計算式に従って価額を算出することに役立ててください。
古民家の売却時に役立つ3つの税制優遇措置
古民家を売却すると、譲渡取得に応じて税金がかかります。
しかしながら古民家の場合、以下の税制優遇措置を受けられる可能性があるため、相続などで古民家を取得した場合などはぜひ参考にしてみてください。
【1】相続した不動産を3年以内に売却したときの特例
相続した古民家がマイホームではなく空き家だった場合は、3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
特別控除を受ける要件は、当該古民家が「昭和56年5月31日以前に建築された家」であったり、マンションではない、などです。
本特例に従って譲渡所得を計算する方法は以下です。
特例に従って譲渡所得を計算する方法
譲渡所得=譲渡価額ー取得費ー譲渡費用-3,000万円
本特例の大きな制限は、「相続が開始された日以後、『3年が経過する日が属す年の12月31日』までに売却しなければならない」ことです。
3,000万円という額を活用するには、耐震リフォームや取り壊しを行ってから売却する方法が適しています。
相続空き家売却特例の適用時注意点
本特例は非常に適用期間が短くなっているため、注意してください。
国税庁による解説によれば、本「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、以下の通り説明されています。
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
引用元:国税庁による解説
【2】住んでいる古民家(マイホーム)を売却したときの特例
売却したい古民家がマイホームでもあった場合、「3,000万円特別控除」という特例の適用が可能です。
本特例が適用された場合の譲渡所得を求める式は以下の通りです。
特例が適用された場合の譲渡所得を求める式
譲渡所得=譲渡価額ー取得費ー譲渡費用ー3,000万円
本特例は「売却の直前まで自分が住んでいれば」利用可能です。
現状住んでいなかったとしても、「転居後から3年経過した日が属す年の12月31日まで」の売却であれば本特例が適用できます。
またマイホームだった当該物件を取り壊したのであっても、転居してから3年が経過した日が属す12月31日まで、または「取り壊し後1年以内」のいずれか早い日までの同不動産の売却であれば利用可能です。
【3】空き地などを売却したときの特例
マイホーム特例などが利用できないものの空き地を所有している場合、以下の税制優遇特例が受けられます。
空き家を売却した時に受けられる税制優遇特例
- 所有期間10年超の軽減税率特例:所有期間10年超えの空き地について、譲渡所得が6,000万円以下の場合は住民税率10%、所得税率4%。譲渡所得が6,000万円を超える場合は住民税が(譲渡所得-6,000万円)×15%+600万円、所得税が(譲渡所得-6,000万円)×5%+240万円
- 平成21年及び22年購入の特例:2011年~2012年に購入した空き地売却について、譲渡所得税が1,000万円控除(東日本大震災の影響)
- 4種類の「特殊な空き地」売却時に適用できる特別控除:土地売却の理由が以下のような場合には次のような控除額が適用されます。
・公共事業のため:5,000万円の特別控除
・特定土地区画整理事業のため:2,000万円の特別控除
・特定住宅地造成事業のため:1,500万円の特別控除
・農地保有の合理化のため:800万円
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今回は、古民家を迅速に手放す方法、売却のためには何が必要か、またその場合にかかる費用とは、その内訳などについて解説しました。
古民家売却や贈与のためには様々な手続きが必要です。
関係書類などは個人で作成することもできるものの、専門家や仲介業者などの助けが必要となる場面も多くなります。
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有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。