再建築不可物件をセットバックするメリットは?具体的な手順や費用を紹介

狭い道路に面した再建築不可物件を所有していると、「セットバックした方がいいのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

再建築不可物件は、接道義務を満たしていないために建て替えができず、活用に困るケースが多いですが、敷地を後退させる「セットバック」を行うことで、こうした問題を解決できる可能性があります。

この記事では、再建築不可物件を保有しており、セットバックの利用を検討している方のために、セットバックのメリット・デメリット、具体的な手順、そして費用の目安について詳しく解説します。

セットバックとは?

セットバックとは、敷地の一部を道路として提供し、道路幅を建築基準法の要件に適合させるための措置です。

日本の建築基準法では、建築物を建てるために「接道義務」を満たす必要があります。

接道義務とは、原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していることが求められるものです。

しかし、古い住宅地では幅4メートル未満の狭い道路に面した土地が多く、これが原因で建物の建て直しができないことがあります。

そこで、セットバックを行い、道路幅を広げることで再建築可能な土地へと変更することができます。

セットバックの具体的な方法としては、敷地の一部を後退させて道路の一部とすることです。

再建築不可物件をセットバックするメリット

再建築不可物件をセットバックをすると次のようなメリットがあります。

再建築不可物件をセットバックするメリット

  • 再建築可能になり土地の価値が上がる
  • セットバック後の道路は非課税になる
  • 通行しやすくなり利便性や安全性が増す

それぞれ詳しく解説します。

再建築可能になり土地の価値が上がる

再建築不可物件は、建物を新しく建て替えられないことがデメリットですが、セットバックを行い建築基準法の接道義務をクリアすると、再建築が可能です。

再建築が可能になれば、その土地の市場価値は大幅に向上します。

再建築不可物件は一般的に市場価値が低く、売却が難しいですが、再建築可能になれば買い手がつきやすくなります。

再建築不可物件の売却価格は、通常の物件の5〜7割程度が相場です。

たとえば、再建築不可のままでは500万円でしか売れなかった物件が、セットバックを行い再建築可能になったことで1,000万円以上で売れるケースもあります。

なぜ高く売れるようになるかというと、再建築が可能になることで、住宅ローンの利用ができるようになるためです。

住宅ローンの利用ができるようになれば、より多くの買い手にアピールできるようになります。

セットバック後の道路は非課税になる

セットバックによって後退した部分の土地は、基本的に「道路」として扱われるため、固定資産税や都市計画税の課税対象外となります。

通常、土地には固定資産税や都市計画税がかかりますが、セットバック部分は自治体により道路として認識されるため、課税対象から外れます。

その結果、土地の所有者は長期的に税負担を軽減することが可能です。

ただし、自治体によっては非課税措置の適用条件が異なるため、セットバックを検討する際には事前に役所へ確認することが重要です。

通行しやすくなり利便性や安全性が増す

セットバックにより道路幅が広がると、通行の利便性や安全性が向上します。

特に以下のようなメリットがあります。

セットバックにより道路幅が広がるメリット

  • 車の通行がスムーズになる
  • 歩道の確保によって歩行者の安全性が向上する
  • 緊急車両の通行が容易になる

また、道路が整備されることで地域全体の景観や利便性が向上し、不動産の価値向上にもつながります。

再建築不可物件をセットバックするデメリット

再建築不可物件をセットバックをすると次のようなデメリットがあります。

再建築不可物件をセットバックするデメリット

  • 活用できる土地が狭くなる
  • 高額なセットバック費用が発生するケースがある
  • セットバック後の道路は私的利用できない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

活用できる土地が狭くなる

セットバックを行うことで、敷地の一部を道路として提供するため、実際に活用できる土地の面積が減少します。

特に都市部の狭小地では、わずかな面積の変化が建築計画に大きな影響を与えることもあるでしょう。

たとえば、敷地面積が50平方メートルの土地で1メートルのセットバックを行うと、接道幅5メートルの場合は約5平方メートルの土地を失うことになります。

これにより、建物の間取りが制限されるほか、駐車スペースの確保が難しくなることも考えられます。

また、セットバック後の土地は建築基準法上の「道路」として扱われるため、建築やフェンスの設置が制限される点にも注意が必要です。

高額なセットバック費用が発生するケースがある

セットバックを実施する際には、測量費用や工事費用が発生します。

特に、隣地との境界があいまいな場合、正確な測量と境界確定が必要になり、費用がかさむことがあります。

また、セットバック時に撤去しなければならないものがあったり、土地の高低差があったりするケースだと、さらに費用が高額になる可能性があるので注意しましょう。

セットバック費用を抑えるための方法として、自治体の補助金制度の活用があります。

自治体によっては一部費用を補助してくれる場合があるので、保有する再建築不可物件のあるエリアを管轄する自治体のHPなどで補助金制度の有無を調べてみましょう。

「セットバック 自治体名 補助金」などで検索すれば出てくるはずです。

セットバック後の道路は私的利用できない

セットバックによって後退した部分の土地は「道路」として扱われるため、私的に利用することができなくなります。

たとえば、セットバック前には庭や駐車場として使用していた部分が、道路扱いになることでフェンスを設置できなくなったり、私道のように自由に利用することができなくなるのです。

また、固定資産としての価値も失われるため、売却価格に影響を与える可能性があります。

さらに、セットバック部分は不特定多数の通行が認められるため、防犯面でのリスクも増加することがあります。

特に、住宅地ではプライバシーの確保が難しくなる点に注意が必要です。

再建築不可物件をセットバックする流れ

実際に再建築不可物件をセットバックする場合、次のような手順で進めます。

①現地調査で公図を入手
②必要書類の提出
③測量・事前協議
④建築確認の申請

順を追って見ていきましょう。

①現地調査で公図を入手

セットバックを進めるには、まず現地調査を行い、公図を取得することが重要です。

公図とは、土地の境界や周辺の道路状況を示した地図のことで、法務局で所定の手数料を納付することで自由に取得することができます。

この段階では、以下のポイントを確認します。

公図で確認すべきポイント

  • 土地が接している道路の幅員
  • 接道状況と建築基準法の適合性
  • 隣接地との境界線の明確化

これらの情報をもとに、セットバックが必要かどうかを判断しましょう。

②必要書類の提出

調査によってセットバックが必要だと判断したら、自治体へ事前協議書の提出が必要です。

事前協議書を提出することで、自治体の職員による現地調査や図面チェックを依頼できます。

書類の作成については、各自治体の公式ホームページや役所の窓口で入手・確認しましょう。

③測量・事前協議

事前協議書が受理されると、まず自治体が現地で測量を行い、敷地の形状や境界線、道路の中心線を正確に確認します。

この際、「現況測量」と「境界確定測量」が求められる場合があり、特に古い物件では隣地との境界が不明瞭になっていることがあるため注意が必要です。

測量結果をもとに、セットバック後の後退用地の管理方法や工事の詳細を自治体と協議し、適切な進め方を決定します。

これらの作業が完了すると、セットバック工事の準備に進むことができます。

④建築確認の申請

最後に、自治体が建築基準法に適合しているかを審査する建築確認の申請を行います。

建築確認の申請の際には、事前協議での結果をまとめた協議書もあわせて提出が必要です。

申請が承認されると、実際のセットバック工事に進むことができます。

工事が完了後、自治体の検査を受けることで正式にセットバックが完了し、再建築が可能になります。

セットバックにかかる費用の目安と補助金

セットバックにかかる費用としては、主に「土地測量」と「道路整備」があります。

一般的な費用の目安は、以下のとおりです。

費用項目費用目安内容
土地測量20万〜30万円・セットバック工事を行う際に必須の工程
・境界が不明瞭な場合やセットバック後に道路を自治体へ寄付する際は、境界確定測量が必要となり、登記手続きも含め50万〜70万円ほどかかることがある
道路整備5,000円/1㎡・セットバック後の道路部分は、適切に利用できるよう舗装作業が必要
・舗装費用は1㎡あたり約5,000円が相場で、整備する面積によって総費用が変動する
・重機の搬入や撤去が必要な場合は追加で約5万円の費用が発生することもある

一部の自治体では、補助金制度を設けている場合があります。

たとえば、埼玉県の狭山市では「工作物等の撤去に係る費用の補助金」という補助金制度を設けています。

道路後退部分の寄付に対し、門や塀などの工作物等の撤去費として、市が査定した金額の範囲内で、最大30万円まで交付される仕組みです。

自分の住んでいる地域でも、同様の補助制度が導入されている場合があるため、事前に自治体の窓口や公式サイトで確認すると良いでしょう。

参考:狭山市「道路後退部分の寄付に対し補助金を交付しています」

セットバック以外で再建築不可物件を活用する方法

セットバックによって再建築可能にすることができますが、高額な費用を負担しなければならないケースもあり、ためらわれることもあるでしょう。

セットバック以外の方法で、再建築不可物件を有効活用する方法として、以下の3つがあります。

セットバック以外の方法で、再建築不可物件を有効活用する方法

  • 隣地購入で再建築可能にする
  • リフォームで資産価値を高める
  • 買い取り業者に買い取ってもらう

それぞれ詳しく解説します。

隣地購入で再建築可能にする

再建築不可物件でも、隣接する土地を購入することで接道義務を満たし、再建築可能にすることが可能です。

この方法では、以下の点に注意する必要があります。

隣地購入で再建築可能にする際の注意点

  • 隣地所有者との交渉が必要
  • 境界確定や測量の費用がかかる
  • 隣地の購入費用が発生する

ただし、隣地購入により再建築が可能になれば、土地の価値が上がり、売却時に高い価格で取引できる可能性があります。

リフォームで資産価値を高める

セットバックが難しい場合、リフォームを行うことで資産価値を向上させることも有効な選択肢の一つです。

建物の建て直しはできませんが、内装をリフォームすれば住みやすくなり、耐震補強もすることで古い建物を震災に強くすることができます。

また、賃貸や売却時の価値を上げることにもつながります。

買い取り業者に買い取ってもらう

再建築不可物件の活用が難しい場合、不動産買取業者に売却するのも一つの方法です。

不動産買取業者に売却するメリットには、以下があります。

不動産買取業者に売却するメリット

  • 一般の不動産市場よりも迅速な取引が可能なため、短期間で現金化できる
  • そのままの状態で売却できる
  • 売れにくい物件でも買い取ってもらえる

買取業者によっては、査定価格に差があるため、複数の業者に見積もりを依頼するのがおすすめです。

再建築不可物件のセットバックに関するよくある質問

ここまで、再建築不可物件をセットバックするメリット・デメリットや具体的な手順などについて解説してきました。

以下では、再建築不可物件をセットバックする際に、よくある疑問や質問に回答します。

セットバックすれば確実に再建築できる?

セットバックを行ったからといって、必ずしも再建築が可能になるとは限りません。

再建築の可否は、以下のように接道義務を満たしているか、違法建築でないかどうかに左右されます。

再建築の可否の判断基準

  • 建築基準法の接道義務を満たしているか
  • 建ぺい率または容積率が法律の制限を超えていないか
  • 建物が都市計画法で定められた用途地域に適合しているか
  • 建築確認や工事後の検査を行っているか
  • 建物の材料・構造に問題がないか

事前に自治体に確認しておき、必要な手続きを把握しておくことが重要です。

セットバック部分は売却できる?

セットバックによって後退した土地は、基本的に「道路」として扱われるため、個人間の売買はできません。

自治体が買い取るケースもありますが、多くの場合で寄付扱いとなるため、事前に確認することが大切です。

詳しい条件は自治体によって異なるため、再建築不可物件を管轄する自治体で相談することをおすすめします。

再建築不可物件の売却ならスマイル空き家買取センターまで

再建築不可物件は、セットバックや隣地購入、リフォームなどの方法で活用することができます。

しかし、時間や費用がかかる場合も多いため、最適な選択を見極めることが重要です。

「できるだけ早く現金化したい」「手間をかけずに売却したい」という方には、再建築不可物件のような訳あり物件を専門に扱う買取業者への依頼がおすすめです。

再建築不可でも、スムーズに買い取ってもらえる可能性があります。

スマイル空き家買取センターは、再建築不可物件の豊富な買取実績を誇ります。

適正な価格で買取を行っていますので、ぜひ一度ご相談ください。

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