再建築不可物件を放置するリスクと売却の可能性
再建築不可物件を所有していると、さまざまな不安や課題に直面することがあります。
「このまま持っていても活用できるのか?」「売却できるのか?」「将来的に大きなリスクはないのか?」など、特に老朽化が進む物件や災害リスクが高い地域に位置している場合、放置しておくことが不安材料になることが多いでしょう。
この記事では、再建築不可物件を所有している方に向けて、物件を放置することのリスク、売却の可能性、そして具体的な対策や売却方法について詳しく解説していきます。
再建築不可物件とは?
まず、再建築不可物件がどういう物件かについて、改めて確認しておきましょう。
再建築不可物件とは、建物が建っている土地が、建築基準法で定められた接道義務を満たしていないために、新しく建物を建てたり、増築したりすることができない土地のことを指します。
接道義務とは?
日本の建築基準法では、建物を新しく建てるためには、その土地が「建築基準法で定められた道路」に2メートル以上接していることが条件となっています。
この法律により、火災や救急車両が通れるよう、建物は一定の幅員を持つ道路に接していることが義務付けられているのです。この規定が接道義務です。
再建築不可物件は、この接道義務を満たしていないため、建物の再建築ができないという制限を受けています。
再建築不可物件が生まれる背景
再建築不可物件が生まれる背景には、法改正の影響があります。
1950年に建築基準法が改正され、接道義務が新たに規定されましたが、それ以前に建てられた建物は当時の基準に従って建てられており、現行法に適合していない物件が再建築不可物件として残っています。
これらの物件は、古い住宅地や細い路地裏に位置していることが多く、現代の都市計画や防災の観点からは不適格とされています。
再建築不可物件を放置するリスク
再建築不可物件を所有していると、「今すぐ売らなくてもいいだろう」と考えがちですが、放置することで多くのリスクが生じます。
以下に、代表的なリスクを挙げていきます。
災害リスクと倒壊の可能性
再建築不可物件は、老朽化が進んでいることが多く、特に地震や台風などの自然災害に弱い傾向があります。
建物が倒壊した場合、新しく建て替えることができないため、その土地は更地として残ることになり、今後の活用が難しくなります。
具体例
2011年の東日本大震災で、ある再建築不可物件が地震によって半壊。しかし、接道義務を満たしていなかったため、建物の再建築は許可されず、所有者は高額な解体費用を負担することに。その後、活用できない土地を維持するため、毎年の固定資産税を払い続けることになった。
損害賠償リスク
地震や台風などで建物が倒壊し、隣家や周辺の物件に被害を与えると、損害賠償を請求されるリスクがあります。
特に老朽化した建物が崩れてしまうと、隣接する家屋に甚大な被害を与える可能性が高いです。
この場合、所有者はその賠償責任を負うことになります。
具体例
ある地域で台風の影響により、再建築不可物件の外壁が崩壊し、隣接する住宅の一部が損壊。被害を受けた隣家の住民は、所有者に損害賠償を請求し、最終的に数百万円の賠償金が発生。物件を放置していたために、所有者は大きな負担を強いられることになった。
固定資産税の増加
再建築不可物件を所有していると、建物が存在する間は「住宅用地の特例」により、固定資産税が軽減されます。
しかし、建物が老朽化して倒壊してしまうと、その土地は更地扱いとなり、固定資産税が6倍に跳ね上がる可能性があります。
具体例
築50年の再建築不可物件が地震で倒壊し、更地になった後、固定資産税が約6倍に増加。所有者は、家賃収入などもなく、ただ更地の税金を払い続けるしかなくなり、大きな経済的負担に苦しむことになった。
空き家としての管理責任
再建築不可物件を放置しておくと、空き家状態になることが多く、適切な管理が行われていない場合、行政から管理を指導されることがあります。
空き家が老朽化し、倒壊の恐れがある場合、行政から強制的に取り壊しを命じられることもあり、その費用は所有者が負担することになります。
再建築不可物件を売却する方法
再建築不可物件を売却する方法はいくつかありますが、一般の不動産市場での売却は難しいことが多いです。
しかし、適切な手段を取れば、売却の可能性を高めることができます。
専門の不動産買取業者に売却する
再建築不可物件を専門に扱う不動産買取業者に売却するのが、最も効率的な方法です。
これらの業者は、通常の不動産業者が扱わないような難しい物件でも積極的に買い取ってくれることが多いです。
再建築不可物件の特性を理解しており、その物件をリノベーションしたり、他の活用方法を見出すことができるため、一般市場よりもスピーディーに売却が進みます。
具体例
ある所有者は、再建築不可の古い家屋を相続したが、建物が老朽化し、売却できるか不安に思っていた。一般の不動産業者からは断られたが、再建築不可物件を専門に扱う買取業者に相談したところ、迅速に買い取りが進み、想像していたよりも高い価格で売却することができた。
隣地に売却する
隣地を所有する人に売却するという手もあります。
隣地の所有者にとっては、敷地を広げることで、再建築不可の制約を解消することができる場合があるため、購入に興味を持つ可能性があります。
特に、自分の土地に隣接している再建築不可物件を購入することで、資産価値を高められるケースもあります。
水路占用許可を取得して接道義務を解消
再建築不可物件の中には、水路などに面しているために接道義務を満たしていない場合もあります。
このような場合、行政から水路の占用許可を得て、橋を架けることで接道義務を解消し、再建築が可能な物件に変更することができます。
ただし、許可を得るためには手続きや費用がかかることが多いため、注意が必要です。
解体して更地として売却
再建築不可物件を解体して、更地として売却することも選択肢の一つです。
建物が存在する場合は、建物の老朽化や問題点が買い手にとって大きな負担となることがありますが、更地にすることでそのような問題を解消できます。
ただし、解体費用がかかるため、売却価格と費用のバランスを考慮する必要があります。
再建築不可物件の売却を成功させるために
再建築不可物件の売却を成功させるためには、専門家のサポートを受けることが非常に重要です。
一般的な不動産業者では取り扱いが難しいため、再建築不可物件を扱った実績のある業者に相談するのが最も効果的です。
また、売却に際しては、物件の問題点を正直に開示し、リスクを理解したうえで買い手に提案することが大切です。
再建築不可物件にはさまざまな制約がありますが、専門の業者に依頼することでスムーズに売却が進むことが多いです。
再建築不可物件の放置は多くのリスクを伴う!早急な売却を!
再建築不可物件を放置することは、多くのリスクを伴います。災害による倒壊や損害賠償、固定資産税の増加など、所有し続けることで大きな負担を強いられる可能性があります。
一方で、専門の買取業者に売却することで、迅速かつスムーズに物件を手放すことができ、リスクを回避することが可能です。
もし再建築不可物件を所有していて、その活用や売却に悩んでいる場合は、早めに専門業者に相談し、最適な解決策を見つけることをお勧めします。
有限会社アティック取締役の橘田浩志です。2000年にデザイン会社として創業。出版を中心に雑誌や書籍などのデザインを手がける。2013年より不動産賃貸業を始める。アパート、区分マンション、戸建てなど様々な物件を購入。他にシェアオフィス 「原宿テラス」や民泊の運営など不動産を活用する事業も並行して行う。2023年より不動産業として日本全国の戸建物件の買取再販、東急世田谷線沿線専門仲介などの事業をスタート。